責任なしから3億2400万円へ――「おかしい」と気付いた司法書士に東京高裁が求めた対応
2026/08/12
第一審では、司法書士の損害賠償責任は0円。
ところが控訴審では、同じ司法書士に3億2400万円の損害賠償責任が認められました。
しかも、この事件は「司法書士が何も気付かず、偽造書類をそのまま通してしまった」という単純な事案ではありません。
司法書士は、決済前の確認の場で、同じ所有者について生年の異なる2通の印鑑登録証明書が存在することを知り、実際に「おかしい」と疑問を呈していました。
では、なぜ東京高裁は、それでも足りないと判断したのでしょうか。
東京高裁が問題にしたのは、
「司法書士が偽造を見抜けたか」ではなく、「不審な事情に気付いた後、どこまで行動すべきだったか」
という点でした。
今回は、前回の東京地裁判決に続き、判断を逆転させた東京高裁平成30年9月19日判決を取り上げます。
第1部はこちらです。
「6億4800万円の不動産詐欺――弁護士は責任あり、司法書士は責任なし。東京地裁は何を分けたのか」
https://nakano-lawoffice.com/blog/detail/20260813153425/
第1部を簡単に振り返る――3つの売買と2つの登記
この事件では、地面師グループが不動産の真の所有者になりすました人物と偽造書類を用意し、巨額の売買代金をだまし取っていました。
取引上は、
登記上の所有者
↓ 第1売買
中間会社
↓ 第2売買
原告X
↓ 第3売買
転売先会社
という3段階の売買契約が組まれていました。
一方、所有権移転登記はXを中間省略し、
前件登記:登記上の所有者 → 中間会社
後件登記:中間会社 → 転売先会社
という2件の登記を、連件申請として行うことになりました。
前件登記を担当したのは弁護士。
後件登記を担当したのが、本記事で問題となる司法書士です。
第一審の東京地裁は、前件担当弁護士には6億4800万円の損害賠償責任を認める一方、後件担当司法書士については責任を否定しました。
そこで原告Xが、司法書士についての敗訴部分を不服として控訴しました。
なお、前件担当弁護士に対する6億4800万円の賠償判決は控訴されず、確定しています。
東京高裁で争われたのは、後件を担当した司法書士の責任
第一審は、連件申請について、
前件書類の真正については前件代理人が第一義的に確認し、後件司法書士は原則として前件書類が形式的に整っているかを確認すれば足りる
という考え方を採りました。
司法書士自身も、生年の違う2通の印鑑登録証明書について疑問を呈していました。
その後は前件側が対応することになっていたため、東京地裁は、後件司法書士がさらに自ら前件の本人性や書類の真正まで調査する義務はなかったと判断したのです。
しかし東京高裁は、同じ出来事をかなり違った角度から見ました。
高裁が改めて認定した前件法律事務所の実態
東京高裁は、まず前件を担当していた法律事務所の実態を詳しく認定しています。
形式上、前件登記の代理人は弁護士でした。
しかし実際には、かつて弁護士資格を有していたものの、その後除名されて資格を失った事務員が、
- 事件の受任
- 処理方針の決定
- 報酬の請求・受領
- 法律事務所の会計
- 預り金口座
- 弁護士の職印
などを広く管理し、法律事務所を実質的に取り仕切っていました。
東京高裁は、本件の前件登記についても、名義上の弁護士は実質的には関与せず、資格のない事務員が弁護士の名前を使って処理していたと認定しました。
ここで重要なのは、前件側の人物を批判することではありません。
後件担当の司法書士から見たとき、
「前件は弁護士が担当しているから任せてよい」という前提自体を疑う事情があったのではないか
ということです。
司法書士は前件代理人の弁護士と一度も話していなかった
東京高裁が重視したのが、この点です。
後件担当の司法書士は、前件代理人として名前が記載されている弁護士本人と、
一度も会っていませんでした。
電話で話したこともありません。
一方、司法書士が実際に接していたのは、前件登記事務を取り仕切っている資格のない事務員でした。
東京高裁は、この状況であれば、少なくとも名義上の前件代理人である弁護士本人に連絡し、
本当にその弁護士自身が前件登記を受任し、責任をもって処理しているのか
を確認すべきだったと考えました。
本人確認情報には、実際と違う内容が書かれていた
さらに重大だったのが、前件側から示されていた「本人確認情報」です。
平成27年9月7日、所有者を名乗る人物と買主側関係者との事前面談が行われました。
そこには後件担当の司法書士も出席していました。
しかし、前件代理人である弁護士本人は出席していません。
実際に所有者を名乗る人物と接していたのは、前件側の事務員でした。
ところが、弁護士作成名義の本人確認情報には、その弁護士本人が同日午後2時30分から約1時間、所有者と面談し、本人確認や不動産の取得経緯、売却意思などを確認したという趣旨の記載がありました。
東京高裁は、司法書士について、
実際には弁護士本人が面談していないことを知りながら、本人確認情報には弁護士本人が確認したことになっているという問題を指摘しなかった
と評価しました。
なお、この本人確認情報は、最終的な前件登記申請には使用されていません。
しかし高裁は、前件代理人として名前が出ている資格者本人が、本当に自ら職務を行っているのかを疑わせる重要な事情として捉えました。
東京高裁が示した「後件司法書士の注意義務」
ここが、この判決の法律論の核心です。
東京高裁は、前件と後件が連件申請であることを重視しました。
前件登記が実現しなければ、後件登記も実現できません。
そこで高裁は、後件だけを担当する司法書士であっても、
前件申請に却下事由や登記義務者の本人性その他の問題がないかについて、相応の注意を払う義務がある
としました。
さらに、職務の過程で、
前件申請どおりの登記が実現しない相応の可能性を疑わせる事情
が明らかになった場合には、前件に関する事項も含めて必要な調査を行い、その結果に応じて、
- 問題点を説明する
- 必要な警告をする
- 取引・決済の中止や延期を勧告する
- 必要であれば代理人を辞任する可能性を知らせる
といった対応まで求められる場合があるとしました。
かなり強い注意義務です。
ただし、この東京高裁判決は後に最高裁で破棄されています。
したがって、現在の司法書士実務について、
「怪しい事情があれば必ず決済を止めなければならない」
という一般的なルールが確立したと理解することはできません。
あくまで、この東京高裁が本件について示した判断です。
「通常の案件より警戒のレベルを上げるべきだった」
東京高裁判決の中でも特に印象的なのが、
「通常の案件よりも警戒のレベルを上げて」
という考え方です。
高裁は、前件登記が実質的には無資格者によって処理されているという事情について、
前件申請に何らかの問題が潜んでいる重大な兆候
と評価しました。
したがって、普通の案件と同じように、
「形式的に書類がそろっているから大丈夫だろう」
と処理するのではなく、より慎重に前件・後件双方を確認する必要があったというのです。
もちろん、「少し変わった取引だからすべて追加調査が必要」という意味ではありません。
本件では、これから見るように、具体的な異常が一つではなく、複数重なっていました。
第1の問題――前件代理人本人に確認しなかった
高裁が最初の注意義務違反としたのが、前件代理人である弁護士本人への確認です。
司法書士は、
- 前件事務を実際には資格のない事務員が処理している
- 前件代理人弁護士本人とは一度も面談していない
- 電話でも話していない
- 弁護士本人が本人確認したとする書面と、実際の状況が食い違っている
という事情を把握できる立場にありました。
それでも、名義上の前件代理人である弁護士本人に直接確認しませんでした。
東京高裁は、この点を最初の注意義務違反としています。
そして、弁護士本人へ連絡していれば、その弁護士が実際には本件前件申請を受任していないことなどが判明し、本件取引を中止できたと推認しました。
高裁の考え方からすると、
「別の専門家が担当している」ということと、「その専門家が実際に責任をもって担当していることを確認できている」ということは別
ということになります。
第2の問題――生年の違う2通の印鑑登録証明書
次に問題となったのが、第1部でも取り上げた2通の印鑑登録証明書です。
平成27年9月7日の事前面談で、所有者を名乗る人物は、自分の生年月日を大正13年と答えました。
ところが、その場にあった印鑑登録証明書には大正15年と記載されていました。
そこで別の印鑑登録証明書が出されると、今度は大正13年と記載されています。
つまり、
同じ人物について、発行日が1日違う2通の印鑑登録証明書で生年が2年も違っていた
わけです。
しかも、両方をコピーしても、本来現れるはずの「複製」の文字が確認できませんでした。
なぜ2通の生年が違うのかについて、納得できる説明もありませんでした。
司法書士はこの一連の出来事をその場で見ています。
「行政のミスかな」は「全く根拠のない楽観論」と評価された
司法書士は、この生年の違いについて、本人尋問で、
「行政のミスかなというぐらいの感覚で理解」
していた旨を供述しました。
これに対して東京高裁は、
「全く根拠のない楽観論」
と非常に厳しい評価をしています。
高裁が問題にしたのは、単に「印鑑証明書の偽造を見破れなかった」ということではありません。
生年が違う2通の公的証明書が同時に存在し、コピー防止表示にも異常があり、その理由も説明されていない。
そこまで具体的な異常を認識していたのに、
行政側の単純なミスかもしれないと楽観的に処理してよかったのか
という問題です。
「新しい印鑑証明書を持ってくる」はずだった
9月7日の事前面談では、問題になった2通の印鑑登録証明書について、
決済までに新しい印鑑登録証明書を用意する
という話になりました。
ところが、3日後の9月10日の決済日。
新しい印鑑登録証明書は用意されませんでした。
結局、9月7日に既に問題となっていた印鑑登録証明書が、そのまま前件申請に使用されました。
それにもかかわらず司法書士は、
「なぜ新しい証明書が出てこないのか」
「前回問題になった証明書を、なぜ今度は問題なしと判断したのか」
といった確認を、前件側にしていませんでした。
高裁は、この点も重く見ました。
実務上、非常に重要な視点です。
一度問題を指摘したかどうかだけではなく、その問題が決済時までに本当に解消されたのか。
高裁はそこまで確認すべきだったと考えたのです。
「19番17号」と「19番17」――第一審より厳しく評価
住所表記にも違いがありました。
前件登記申請書に記載された所有者の住所は、
「19番17号」
でした。
一方、印鑑登録証明書や委任状には、
「19番17」
としか記載されておらず、「号」が抜けています。
第一審の東京地裁も、この違いに気付かなかった司法書士について「不注意」は認めていました。
しかし、それだけでは今回の損害について司法書士の責任を認めませんでした。
東京高裁は、もっと厳しく評価します。
登記事項証明書を照合すれば正式な住所は「19番17号」であることを容易に確認でき、その違いに気付けば、
問題となっている印鑑登録証明書への疑いはさらに強くなったはず
としました。
そして判決には、
「詐欺師としてはお粗末な仕事であるが、本件の事情の下では、これに気付かなかった司法書士も不注意であったといわざるを得ない。」
という、かなり印象的な記述があります。
ただし、これも「住所の『号』を一文字見落とせば巨額賠償」という意味ではありません。
高裁が問題にしているのは、既に複数の異常が発生していた本件で、さらに確認可能な不整合まで見過ごしたことです。
外国人なのに生年月日が「大正」表記だったことも指摘
東京高裁はさらに、登記名義人が外国籍であったことにも触れています。
日本に在留する外国人について市区町村が発行する証明書では、生年月日の年を西暦で表示することが比較的多いとして、本件の印鑑登録証明書が「大正」という元号表記になっていたことも、
本件のように既に複数の疑問が生じている状況では、発行官署へ真偽を問い合わせる契機になり得た
と指摘しました。
ただし、この点は一般化できません。
「外国人の印鑑登録証明書が元号表記なら偽造である」
という話ではありません。
本件では、生年そのものが2通で異なり、コピー防止表示にも問題があり、前件代理人の関与にも疑問があるという事情が先に存在していました。
その中の一事情として、高裁が取り上げたものです。
「印鑑証明書は必須添付書類ではない」という反論
司法書士側にも法律上の反論がありました。
本件前件申請では、公証人の認証が付された委任状を利用する方法が採られていました。
その場合、問題となった印鑑登録証明書は、前件申請に必ず添付しなければならない書類ではありません。
東京高裁も、この法律論自体は認めています。
しかし高裁は、
偽造された印鑑登録証明書が現実に添付されている登記申請であれば、申請権限のない者による申請である可能性を疑わせる
のであり、
印鑑登録証明書が法定の必須添付書類であるかどうかは本質的な問題ではない
としました。
これは実務上興味深いところです。
「この書類は法律上なくても申請できる書類だから、その内容に問題があっても自分の仕事とは関係ない」
とは必ずしもいえないということです。
目の前に存在する書類が、申請全体の真正性を疑わせる材料になることがあります。
「おかしい」と指摘しただけでは足りないとした東京高裁
司法書士側は、
生年の異なる2通の印鑑登録証明書について、自分も「おかしい」と指摘した。やるべきことはした。
と主張しました。
しかし東京高裁は、これを認めませんでした。
なぜなら、
「決済までに新しい印鑑登録証明書を用意する」
という話で一度は収まったものの、実際には新しい証明書が提出されていなかったからです。
それにもかかわらず、
- なぜ新しい証明書が提出されなかったのか
- なぜ以前の証明書で問題がないと判断したのか
- 前件代理人本人は本当に関与しているのか
といった確認をしていませんでした。
高裁にとっては、
「気付いた」
↓
「おかしいと言った」
だけでは終わりませんでした。
高裁が想定した「気付いた後」の対応
東京高裁判決を分かりやすく整理すると、不審事情に遭遇した後の対応には段階があります。
気付く
↓
問題点を具体的に注意喚起する
↓
必要な調査をする
↓
取引・決済の延期や中止を勧告する
↓
場合によっては登記申請代理人を辞任する
高裁は、本件の事情では、後件担当の司法書士にもこのような対応を検討すべき注意義務があったと考えました。
ただし、このすべての段階が、現在あらゆる不動産取引で司法書士に一律に要求されているわけではありません。
この判決は後に最高裁で破棄されます。
その点は、次回詳しく取り上げます。
原告Xは司法書士の依頼者ではなかった
ここにはもう一つ、大きな問題があります。
司法書士に損害賠償を求めた原告Xは、後件登記の登記権利者でも登記義務者でもありません。
司法書士とXとの間には、直接の委任契約もありませんでした。
つまりXは、司法書士から見れば直接の依頼者ではない第三者です。
それでも東京高裁は、Xが中間省略された中間買受人として、
後件登記の実現について「当事者に準ずる重大な利害関係」を持っていた
と評価しました。
そして、司法書士の注意義務は不法行為上、直接の依頼者ではないXとの関係でも及ぶと判断しました。
この考え方は、次の最高裁判決で極めて重要な争点になります。
しかし、原告X自身にも50%の過失がある
東京高裁は司法書士に厳しい判断をしました。
しかし、取引当事者であるXにも同じく厳しい判断をしています。
Xは不動産業者でした。
高裁は、
- 広く一般に広告して買主を募集していた物件ではない
- 限られた情報環境の中で持ち込まれた取引だった
- 交渉期間が短かった
- 巨額の不動産を即金で決済する取引だった
- Xの代表者自身も印鑑登録証明書の問題を認識していた
ことなどを重視しました。
そして、不動産業者であるX自身も、
所有者を名乗る人物が本当に本人なのかを見極め、取引に踏み切るかどうかを自己責任で判断する立場にあった
としました。
司法書士に全責任を転嫁するのは相当ではないとして、50%の過失相殺を行ったのです。
なぜ3億2400万円なのか
本件で東京高裁が認めた損害額は6億4800万円です。
しかし、原告Xにも50%の過失があると判断しました。
したがって、
6億4800万円 × 50% = 3億2400万円
となります。
その結果、司法書士に対し、
3億2400万円及び遅延損害金
の支払いが命じられました。
つまり、この判決は、
「司法書士が悪かったから3億2400万円」
というだけではありません。
司法書士にも責任がある。しかし、プロの不動産業者であるX自身にも、取引当事者としての自己責任があった
という判断です。
一審と高裁は、同じ出来事をどう違って見たのか
ここまでを整理すると、両判決の違いがよく分かります。
第一審・東京地裁
第一審は、
- 前件資料の真正確認は前件代理人が第一義的に担当する
- 後件司法書士は原則として形式的確認をすればよい
- 司法書士は印鑑登録証明書の問題を指摘している
- その後は前件側が対応することになった
- 前件代理人が全く職務を果たしていないことが明らかだったとまではいえない
として、司法書士の責任を否定しました。
控訴審・東京高裁
これに対し東京高裁は、
- 前件が通らなければ後件も通らない連件申請だった
- 実際には資格のない事務員が前件事務を処理していた
- 名義上の前件代理人弁護士とは一度も接触していない
- 本人確認情報の記載と実際の面談状況が食い違っていた
- 生年が違う2通の印鑑登録証明書が存在した
- コピー防止文字も確認できなかった
- 新しい印鑑証明書を用意すると言ったのに用意されなかった
- 住所表示にも食い違いがあった
という事情を重視しました。
つまり、
「前件のことは前件代理人に任せた」
で終わらせてよい状況ではなく、
通常より警戒レベルを上げ、さらに調査・警告等をすべき状況だった
と評価したのです。
異常は一つずつではなく「重なり」で見る
この東京高裁判決から読み取れる重要な視点があります。
一つ一つの事情だけを見ると、必ずしも詐欺の決定的な証拠とは限りません。
例えば、
- 住所表記が一文字違う
- 前件代理人本人がその場にいない
- 印鑑登録証明書の記載に問題がある
という事情が、それぞれ単独で存在しただけなら評価は違ったかもしれません。
しかし本件では、それらが同時に重なっていました。
高裁が問題にしたのは、その累積です。
不自然な事情が積み重なったとき、いつ通常案件と同じ確認では足りなくなるのか。
司法書士実務を考えるうえで、非常に重要な問題です。
「他の専門家がいるから大丈夫」とは限らない
前件には弁護士がいました。
第一審では、この専門家間の役割分担が司法書士の責任を否定する重要な理由になりました。
ところが高裁は、
その弁護士本人が本当に職務を行っているのか疑わせる具体的事情があるなら、単に「前件には弁護士がいる」というだけでは足りない
と考えました。
他の専門家への信頼も、何があっても無条件に許されるわけではない。
これも高裁判決の特徴です。
「司法書士は地面師を必ず見破る保証人」という判決ではない
この判決を読むうえで、ここは特に注意が必要です。
東京高裁は司法書士に3億2400万円という巨額の責任を認めました。
しかし、
司法書士は地面師詐欺を必ず見抜かなければならない
と判断したわけではありません。
本件では、司法書士自身が複数の具体的な不審事情を現実に認識していました。
高裁が問題にしたのは、
そこまで分かっていたのに、通常案件と同じような形式確認の段階にとどまってよかったのか
という点です。
そして、もう一つ重要なのは、この東京高裁判決が最終判断ではないことです。
ここまで怪しいのに、最高裁は3億2400万円判決を破棄した
東京高裁の判断をここまで読めば、
生年の違う印鑑証明書が2通あり、コピー防止表示にも問題があり、前件代理人本人とも一度も話していない。それなら司法書士がもっと慎重に動くべきだったのではないか。
と感じる方もいるでしょう。
ところが、この3億2400万円の損害賠償判決は、最高裁で破棄されます。
最高裁も、
- 印鑑登録証明書に問題があったこと
- 司法書士が相応の疑いを持っていたこと
自体を否定したわけではありません。
それでも、高裁が認めた責任をそのまま維持しませんでした。
なぜでしょうか。
次回は、司法書士が「怪しいと気付いたか」だけではなく、
「そもそも、この司法書士に何を期待することが正当だったのか」
という別の視点から本件を捉え直した、最高裁令和2年3月6日判決を取り上げます。
この最高裁判決によって、司法書士の専門家責任を考える問題は、さらに一段深いものになっていきます。
不動産売買と司法書士の判断
不動産売買の決済では、登記申請書類が形式的にそろっているかを確認するだけではなく、案件によっては本人確認、意思確認、関係書類の整合性、取引経緯などを踏まえた判断が必要になります。
特に、複数の売買や連件申請、複数の専門家が関与する取引では、
誰が何を担当するのか、不審な事情が生じた場合に誰が確認するのか
という役割分担も重要です。
中野司法書士事務所では、不動産売買の決済、所有権移転登記、本人確認・意思確認、連件申請などの不動産登記業務に対応しています。
東京都杉並区・高円寺駅徒歩1分。司法書士として25年以上の実務経験をもとに、個々の取引内容を確認しながら登記手続を進めています。
参考判例
東京高等裁判所平成30年9月19日判決
平成29年(ネ)第5340号 損害賠償請求控訴事件
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