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不動産登記の「◇」は何?所有者の死亡を示す符号表示制度を解説

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登記簿を見れば所有者の死亡が分かる?―令和8年4月開始の「符号(◇)」表示とは【相続登記義務化・付録】

登記簿を見れば所有者の死亡が分かる?―令和8年4月開始の「符号(◇)」表示とは【相続登記義務化・付録】

2026/09/25

不動産の登記簿を見れば、所有者が亡くなっていることまで分かるのでしょうか。

従来は、所有権の登記名義人が死亡しても、一般に相続登記などがされない限り、死亡したという事実自体は登記記録には公示されませんでした。

そのため、登記簿に何十年も前の所有者の名前が残っていても、その人が現在も生存しているのか、既に亡くなっているのかを、登記記録だけから確認することはできませんでした。

 

この点について、令和8年4月1日から新しい仕組みが始まりました。

不動産登記法76条の4に基づき、所有権の登記名義人について死亡等が確認された場合に、登記官が職権で、その事実を示す「符号」を登記記録に表示する制度です。

法務省も、この制度によって、登記記録から所有権の登記名義人の死亡の事実を確認することが可能になると説明しています。

 

実際の登記記録では、

 

  ◇

 

という符号が表示されます。

 

ただし、この「◇」は相続登記ではありません。

また、死亡した人すべてに必ず◇が付くわけでもありません。

今回は、この新しい「符号の表示」が何を意味するのかを整理します。

 

「符号の表示」は令和8年4月1日に始まった新制度

所有権の登記名義人についての符号表示制度は、令和8年4月1日施行です。

根拠となるのは、不動産登記法76条の4です。

同条では、登記官は、所有権の登記名義人が権利能力を有しないこととなったと認めるべき一定の場合に、法務省令の定めるところにより、

職権で、その旨を示す符号を表示することができる

とされています。

 

不動産登記規則では、この制度の対象となる所有権の登記名義人を自然人としています。

 

令和8年3月27日付法務省民二第525号通達も、所有権の登記名義人を自然人に限定して符号表示の実務取扱いを定めており、符号表示制度は令和8年4月1日施行です。

 

登記簿には「◇」が表示される

では、実際の登記簿にはどのように表示されるのでしょうか。

法務省の資料では、所有権の登記名義人について死亡の事実が認められる場合、

所有権の登記名義人の氏名に、死亡を示す符号「◇」を表示する

仕組みが示されています。

 

したがって、登記記録に◇が表示されていれば、その登記名義人について死亡等を示す符号表示がされているということです。

もっとも、後で説明するように、◇が付いていないからといって、その登記名義人が生存しているとは限りません。

 

「◇」が付いても相続登記をしたことにはならない

ここは、この制度で最も誤解しやすいところです。

登記簿に「◇」が表示されても、

相続登記がされたわけではありません。

 

◇の表示によって、

相続人を所有権の登記名義人とする登記がされるわけではありません。

誰が相続人なのかが公示されるわけでもありません。

相続人の持分や遺産分割の結果が表示されるわけでもありません。

不動産登記法76条の4が定めているのは、あくまで、

現在の所有権の登記名義人について、権利能力を有しないこととなった旨を示す符号を表示すること

です。

 

したがって、

◇=相続登記済み

ではありません。

相続によって不動産を取得した相続人には、符号の表示とは別に、相続登記の申請義務が問題になります。

 

「◇」は相続人が申請して付けてもらうものではない

相続登記は、原則として相続人などが申請する登記です。

 

これに対して、符号の表示は仕組みが違います。

 

不動産登記法76条の4は、

登記官が職権で表示する

制度としています。

 

つまり、

「親が亡くなったので、死亡届を法務局に提出して◇を付けてもらう」

という制度ではありません。

登記官が公的機関から得た情報や登記事務の過程で得た情報などから死亡等を確認し、所定の手続によって符号を表示します。

 

法務局はどうやって死亡を知るのか

では、法務局は所有権の登記名義人が亡くなったことを、どのように知るのでしょうか。

 

一つは、令和8年4月1日から始まった職権による住所等変更登記、いわゆるスマート変更登記の仕組みです。

個人について、法務局が住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットに照会して住所等を確認する過程で、その人が死亡し、又は失踪宣告を受けたことを把握する場合があります。

その場合には、戸籍等による所要の確認をした上で、符号表示につながる仕組みになっています。法務省も、スマート変更登記の手続の過程で死亡又は失踪宣告を把握した場合には、戸籍の確認等を行った上で符号を表示すると説明しています。

 

ただし、

死亡情報はすべて住基ネットから取得する

というわけではありません。

 

525号通達では、管轄登記所の事務の過程で得た情報に基づいて死亡等を把握する場合も定められています。

また、不動産登記法151条に基づき、関係地方公共団体の長その他の者から提供された情報により、所有権の登記名義人が死亡し、又は失踪宣告を受けたことを確認する場合もあります。

 

死亡だけでなく「失踪宣告」も対象になる

この記事では主に死亡の場合を取り上げていますが、符号表示制度の対象は死亡だけではありません。

 

525号通達では、所有権の登記名義人が、

死亡し、又は失踪の宣告を受けたこと

が確認された場合について、符号表示の取扱いを定めています。

 

したがって、「◇」を単純に死亡だけを意味する記号と理解するより、

所有権の登記名義人について、死亡又は失踪宣告により権利能力を有しないこととなったことを示す符号

と理解する方が正確です。

 

死亡した人には必ず「◇」が付くわけではない

では、登記名義人が亡くなれば、必ず◇が表示されるのでしょうか。

そうではありません。

そもそも不動産登記法76条の4は、登記官が符号を表示「することができる」という規定です。

 

また、525号通達では、死亡等を確認した場合であっても、符号の表示を要しない場合が定められています。

その一つが、

既に相続人申告登記がされている場合

です。

そのほか、

  • 既に符号が表示されている場合
  • 長期相続登記等未了土地である旨の付記登記がされている場合

などにも、別途符号の表示を要しない取扱いがあります。525号通達は、このほかにも複数の除外場面を列挙しています。

 

したがって、

死亡した人の登記には必ず◇が付く

という制度ではありません。

 

「◇がない=生存している」でもない

この点から、もう一つ重要なことが分かります。

登記簿に◇が付いていないからといって、

その登記名義人が現在も生存しているとは限りません。

法務局が死亡を把握する端緒には一定の仕組みがあり、また、死亡等が確認されても符号表示を要しない場合があります。

 

したがって、

◇が表示されていれば、その登記名義人について死亡等が確認され、符号表示がされたことが分かります。

 

一方、

◇がないことは、その人が生存していることの証明にはなりません。

この制度によって「登記名義人の生死を完全に判定できる登記簿」になったわけではありません。

 

「◇が付いた=相続登記の催告が始まる」でもない

このブログでは、相続登記義務化の第3回で、

法務局は、相続登記をしていないことをどのように把握するのか

を取り上げました。

 

令和5年9月12日付法務省民二第927号通達では、登記官が相続登記義務違反について申請の催告を行う「端緒」を定めています。

927号通達が定める催告の端緒は、遺言書又は遺産分割協議書を添付した登記申請から、別の不動産についても相続登記義務違反があることを登記官が知った場合という2つの場面です。

 

符号が表示されたこと自体は、927号通達が定める催告の端緒には含まれていません。

したがって、

76条の4による「符号の表示」と、927号通達による「申請の催告」は別の制度

です。

◇が付いたからといって、

自動的に相続登記の催告が始まるわけではありません。

 

また、

◇は「この人について相続登記義務違反を法務局が把握した」という印でもありません。

死亡情報を登記記録に反映する制度と、相続登記義務違反について催告する制度は、分けて考える必要があります。

 

「◇」を見ても相続人や遺産分割までは分からない

登記簿に◇が表示されている場合、そこから分かるのは、

その所有権の登記名義人について、死亡等を示す符号が表示されていること

です。

 

しかし、◇だけを見ても、

  • 誰が相続人なのか
  • 誰がその不動産を取得したのか
  • 遺産分割が成立しているのか
  • 相続登記の申請期限がいつなのか
  • 相続登記義務に違反しているのか
  • 過料の対象になっているのか

までは分かりません。

◇は、相続関係や権利承継の結果を公示するものではないからです。

 

登記簿に「◇」があったときは、何が分かったのかを正確に考える

令和8年4月1日から、所有権の登記名義人について死亡等が確認された場合、登記記録に「◇」を表示する制度が始まりました。

これによって、

登記記録から、所有権の登記名義人の死亡等を確認できる場合がある

ようになりました。

これは従来にはなかった大きな変化です。法務省も、所有権の登記名義人の相続に関する不動産登記情報を更新する方策の一つとして、この制度を位置付けています。

 

ただし、

◇=相続登記

ではありません。

 

◇=相続登記義務違反

でもありません。

 

そして、

◇がない=生存

でもありません。

 

この符号が示している範囲を正確に理解することが重要です。

 

相続登記義務化によって、相続人には一定期間内の相続登記が義務付けられました。

 

一方で今回の符号表示制度は、

死亡等が確認された所有権の登記名義人について、その事実を登記記録に反映するための別の仕組み

です。

 

相続登記義務化と関連する制度ではありますが、その役割は明確に異なります。

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