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所有不動産記録証明書は万能ではない|旧住所・旧氏名と検索漏れの注意点

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所有不動産記録証明書は万能ではない―「氏名+住所」で検索する仕組みと検索漏れ【相続登記義務化・8回】

所有不動産記録証明書は万能ではない―「氏名+住所」で検索する仕組みと検索漏れ【相続登記義務化・8回】

2026/09/24

前回は、令和8年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度について説明しました。

この制度を利用すると、相続人が亡くなった人について、全国を対象として所有不動産を検索することができます。

では、

「全国を検索できるなら、亡くなった人名義の不動産は全部見つかる」

と考えてよいのでしょうか。

 

そうではありません。

所有不動産記録証明制度には、検索条件や検索対象となる登記記録について一定の仕組みがあります。

特に重要なのが、

「氏名+住所」

です。

 

所有不動産が実際に存在していても、検索条件や登記記録の状態によっては、検索結果として抽出されない場合があります。

今回は、なぜそのような検索漏れが起こり得るのかを説明します。

 

所有不動産記録証明書は「氏名+住所」を基本に検索する

令和8年2月2日付法務省民二第81号通達では、所有不動産記録証明書を請求するときの検索情報として、

所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所

を提供することとされています。

 

個人の場合でいえば、基本となるのは、

氏名+住所

です。

つまり、氏名だけで全国の同姓同名者を横断的に探す制度ではありません。

生年月日だけで検索する制度でもありません。

所有不動産記録証明制度では、登記記録上の所有権の登記名義人について、

「誰の不動産か」を氏名と住所を手掛かりに検索する

仕組みになっています。

 

死亡時の住所だけでは足りない場合がある

ここが、相続の場面では特に重要です。

亡くなった人が生前に何度か引っ越していても、不動産登記上の住所がその都度変更されているとは限りません。

 

例えば、昔ある土地を取得した際にはA住所に住んでおり、その後B住所、C住所へと転居したものの、その土地の登記名義人住所がA住所のまま残っていることがあります。

この場合、死亡時のC住所だけを検索条件にしても、

A住所で登記されている不動産が検索結果に出ない可能性があります。

 

法務省の公式パンフレットも、過去の氏名や住所を検索条件とする場合を明示しています。

したがって、亡くなった人について複数の住所が分かっている場合には、

登記に残っている可能性のある旧住所も検索条件として検討する

ことが重要になります。

 

旧住所は別の検索条件として指定する

複数の住所を検索したい場合、それらを一つの検索条件にまとめて記載する仕組みではありません。

法務省の公式パンフレットでは、

1つの請求で複数の検索条件を指定することはできるものの、1つの検索条件欄に複数の氏名・名称・住所等をまとめて記載することはできない

とされています。

 

例えば、

  • 死亡時の住所
  • 1つ前の住所
  • さらにその前の住所

を検索したいのであれば、それぞれ別の検索条件として指定することになります。

 

第7回で説明したとおり、所有不動産記録証明書の手数料は検索条件ごとにかかります。

つまり、検索の範囲を広げるために旧住所を追加すれば、その分だけ検索条件も増えることになります。

 

旧住所を検索条件にするには、その住所を確認できる資料が必要

旧住所であれば、記憶している住所を自由に書けばよいというわけではありません。

 

81号通達では、検索条件として提供する氏名又は名称・住所が、請求人又は被承継人のものであることを証する情報を提供する仕組みになっており、変更前の氏名や住所もその対象とされています。

 

法務省の公式パンフレットでは、過去の氏名・住所を検索条件とする場合の資料として、

  • 住民票の写し
  • 戸籍の附票の写し
  • 戸籍謄本・除籍謄本
  • 除かれた戸籍の附票の写し

などが例示されています。

 

相続人が亡くなった人の旧住所を検索する場合にも、

その旧住所が亡くなった人の住所であったことを確認できる資料

が必要になります。

 

したがって、相続人が被相続人の不動産を調べる場合には、死亡時の住所だけでなく、

過去の住所の履歴をどこまで確認できるか

も重要になります。

 

旧姓や過去の氏名も検索条件になる

住所だけでなく、氏名についても同じ問題があります。

 

法務省の公式パンフレットは、

過去の氏名や住所を検索条件とする場合

を明示しています。

 

過去に氏名が変わっている場合、昔取得した不動産については、登記記録に以前の氏名が残っていることがあります。

そのため、

登記記録に残っている可能性のある過去の氏名

も確認する必要があります。

現在の氏名だけを検索すれば、必ずすべての不動産が見つかるという仕組みではありません。

 

表記が違っても、直ちに証明書から除外されるわけではない

ここは、検索の仕組みを理解するうえで注意が必要です。

 

81号通達では、登記記録上の所有権の登記名義人の氏名又は名称・住所と、請求人が検索条件として提供した氏名又は名称・住所との間に表記の違いがあっても、

検索の結果として抽出された不動産について、同一の所有権の登記名義人であることを容易に判断することができる場合

には、その不動産の不動産所在事項・不動産番号を所有不動産記録証明書に記載する取扱いが定められています。

 

したがって、

「登記記録と氏名・住所が1文字でも違えば、必ず証明書に載らない」

と理解するのは正確ではありません。

 

一方、この通達は、

あらゆる表記の違いをシステムが自動的に補正して検索する

と定めているわけでもありません。

81号通達が示しているのは、あくまで、検索の結果として抽出された不動産について、

同一の所有権の登記名義人であることを容易に判断できる場合

の取扱いです。

したがって、どの程度の表記の違いまで検索できるのかについて、原典にない一律の基準を設けて考えることはできません。

 

所有権の登記がされていない不動産は検索対象にならない

検索条件とは別に、制度そのものの検索対象にも限界があります。

 

法務省の公式パンフレットでは、

検索対象となる不動産は、所有権の登記がされている不動産に限られる

とされています。

 

したがって、土地や建物について表示に関する登記だけがされていて、

所有権の登記がされていない不動産

は、所有不動産記録証明制度の検索対象になりません。

この制度は、

世の中に存在するすべての不動産を、人の名前から探し出す制度

ではありません。

あくまで、

所有権の登記名義人として登記記録に記録されている不動産を検索する制度

です。

 

コンピュータ化されていない不動産も検索できない

もう一つ、制度上の検索対象から外れるものがあります。

 

法務省の公式パンフレットでは、

検索できる不動産は、システムに登録されている不動産のみ

であり、

コンピュータ化されていない不動産については検索できない

とされています。

 

したがって、

「全国を対象に検索できる」

という説明から、

全国に存在するあらゆる登記記録が例外なく検索される

と理解するのは正確ではありません。

所有不動産記録証明制度は、登記情報をシステムで検索する制度であるため、そのシステムに登録されていない登記記録までは検索できません。

 

「該当なし」は「全国に不動産がない」という意味ではない

検索の結果、該当する不動産が抽出されなかった場合には、

該当する記録がない旨

の所有不動産記録証明書が交付されます。

 

しかし、

「該当なし」=その人が全国に不動産を一切所有していない

という意味ではありません。

 

法務省の公式パンフレットも、

請求書に記載された検索条件のみで検索されるため、検索条件が正確でない場合には、所有不動産があっても検索結果として抽出されない場合がある

と明記しています。

 

さらに、

  • 所有権の登記がされていない不動産
  • コンピュータ化されていない不動産

は、そもそも検索対象になりません。

 

したがって、「該当なし」という結果は、

指定した検索条件と、この制度の検索対象の範囲では、該当する不動産が抽出されなかった

と理解するのが正確です。

 

不動産が一件も出なくても手数料は返還されない

検索結果として不動産が一件も抽出されなかった場合でも、手数料が無料になるわけではありません。

 

法務省の公式パンフレットでは、

不動産が抽出されない場合でも手数料は返還されず、該当不動産がない旨の証明がされる

と案内されています。

 

したがって、

「何も見つからなければ手数料もかからない」

という制度ではありません。

旧住所や旧氏名を複数の検索条件として指定する場合には、それぞれが検索条件となることも踏まえて請求する必要があります。

 

所有不動産記録証明書は「万能ではない」が、有用な制度

ここまで見ると、

「それなら所有不動産記録証明書は、あまり役に立たないのではないか」

と思うかもしれません。

しかし、この制度には検索上の限界がある一方で、相続人が被相続人名義の不動産を把握しやすくし、登記申請の負担軽減や登記漏れの防止に役立つものとして法務省が案内しています。

 

重要なのは、

「全国検索だから全部出る」

と考えるのではなく、

どの氏名・住所で登記されている可能性があるのかを考え、必要な検索条件を設定すること

です。

そして、検索結果が「該当なし」であっても、それだけで全国に不動産が存在しないと断定しないことです。

 

相続登記義務化では「期限」だけでなく「何を登記するか」の把握も重要

この連載では、相続登記義務化について、

  • いつまでに登記しなければならないのか
  • 期限を過ぎるとどうなるのか
  • 法務局はどのように義務違反を把握するのか
  • 「正当な理由」とは何か
  • 相続人申告登記とは何か
  • 遺産分割後に新たな3年の期限が生じる場合
  • 所有不動産記録証明制度

と順番に見てきました。

 

相続登記義務化というと、

「3年以内に登記しなければならない」

という期限に目が向きがちです。

 

しかし、登記をするためには、その前に、

亡くなった人がどの不動産を所有していたのか

を把握する必要があります。

 

所有不動産記録証明制度は、その調査を助ける制度です。

ただし、

証明書を1通取れば、自動的にすべての相続不動産が判明する制度ではありません。

被相続人の旧住所や旧氏名、登記記録の状態、制度上の検索対象なども考慮する必要があります。

 

相続登記義務化への対応では、

「いつまでに登記するか」だけではなく、「何を登記すべきなのかを正確に把握すること」

も重要です。

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