所有不動産記録証明制度とは?―亡くなった人名義の不動産を全国から探す【相続登記義務化・7回】
2026/09/22
相続登記が義務化されても、その前提として、
亡くなった人が、どこに不動産を持っていたのか分からない
という問題があります。
自宅やよく知られている土地であれば把握しやすいでしょう。
しかし、
- 遠方に土地を持っていた
- 昔取得した不動産の資料が残っていない
- 家族が存在を把握していない土地がある
といった場合には、相続登記をすべき不動産そのものを見落とす可能性があります。
そこで、令和8年2月2日から始まったのが、
「所有不動産記録証明制度」
です。
この制度を利用すると、特定の人を所有権の登記名義人として検索し、検索条件に該当する不動産について、不動産所在事項や不動産番号を証明書で確認することができます。
相続人は、亡くなった人についてこの証明書を請求することができます。
ただし、最初に注意しておきたいことがあります。
全国を対象として検索できる制度ではありますが、全国の所有不動産が必ずすべて漏れなく出てくる制度ではありません。
今回は、まず制度の仕組みと相続での使い方を説明します。
検索上の限界については、次回詳しく取り上げます。
所有不動産記録証明制度は令和8年2月2日に始まった
所有不動産記録証明制度は、令和8年2月2日施行です。
不動産登記法119条の2に基づく制度で、同日付の法務省民二第81号通達によって、実際の登記事務の取扱いが定められています。
法務省の公式パンフレットでは、この制度について、
特定の人や法人が所有する不動産について、登記情報をシステムで検索し、一覧的にリスト化して証明書として交付する制度
と説明しています。
相続人が不動産を把握しやすくなり、登記申請の負担軽減や登記漏れ防止に役立つ制度として位置付けられています。
相続人は、亡くなった人について請求できる
所有不動産記録証明書は、誰でも自由に他人の不動産を検索できる制度ではありません。
不動産登記法119条の2では、
自らが所有権の登記名義人として記録されている人
が、自分について所有不動産記録証明書を請求できるとされています。
さらに、同条2項では、
相続人その他の一般承継人
が、被承継人について所有不動産記録証明書を請求できるとされています。
したがって、相続の場面では、
相続人が、亡くなった人を検索対象として請求する
ことができます。
例えば、父親が亡くなった場合には、相続人である子が、父親名義の不動産について所有不動産記録証明書を請求することができます。
代理人による請求も可能です。
相続人として請求する場合には、相続関係の確認が必要
相続人だからといって、何の資料もなく亡くなった人名義の検索ができるわけではありません。
81号通達では、請求情報として、
所有権の登記名義人と請求人との関係
を明らかにすることとされており、請求人が登記名義人でない場合には、相続人その他の一般承継人であることを証する情報を提供することとされています。
法務省の公式パンフレットでも、相続人その他の一般承継人が請求する場合の資料として、
- 戸籍謄本
- 法定相続情報一覧図の写し
などが例示されています。
つまり、
「私はこの亡くなった人の相続人です」
という関係を確認したうえで請求する制度です。
所有不動産記録証明書では何が分かるのか
所有不動産記録証明書は、
亡くなった人の財産全体を証明する書類
ではありません。
預金、株式、保険などを調べる制度でもありません。
あくまで、不動産登記の制度です。
81号通達では、所有不動産記録証明書において証明する事項を、
不動産所在事項
と
不動産番号
としています。
つまり、
どこに、どの不動産があるのかを把握するための入口となる証明書
と考えると分かりやすいでしょう。
登記事項証明書のように、その不動産について所有権や抵当権などの登記内容をすべて表示する書類ではありません。
対象となる不動産を把握したうえで、必要に応じて個別の登記内容を確認することになります。
全国を対象として不動産を探すことができる
この制度の大きな特徴は、
不動産の所在地をあらかじめ一つずつ特定しなくても、全国を対象として登記記録を検索できること
です。
制度創設前は、登記記録が土地や建物ごとに作成されているため、全国の不動産から、特定の人が所有権の登記名義人となっているものを一覧的に抽出する仕組みはありませんでした。
所有不動産記録証明制度は、特定の人について登記情報をシステムで検索し、所有不動産を一覧的にリスト化して証明する仕組みとして設けられたものです。
また、請求自体は、全ての法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)で可能で、書面請求だけでなくオンライン請求にも対応しています。
相続人にとっては、
亡くなった人がどこに不動産を持っていたのか分からない場合に、広く確認する手段ができた
ことに大きな意味があります。
ただし、
「全国を対象として検索できる」
ことと、
「全国の所有不動産が必ず全部出てくる」
ことは同じではありません。
この違いは非常に重要です。
書面でもオンラインでも請求できる
所有不動産記録証明書は、
書面
又は
オンライン
で請求できます。
書面の場合には、法務局の窓口に提出するほか、郵送による請求も可能です。
証明書の受領についても、窓口又は郵送による方法があります。
したがって、必ず亡くなった人の不動産がありそうな地域の法務局まで出向かなければならないわけではありません。
手数料はいくらかかるのか
法務省の公式パンフレットでは、所有不動産記録証明書の手数料について、1つの検索条件につき、1通当たり次の金額が案内されています。
- 書面請求 1,600円
- オンライン請求・郵送交付 1,500円
- オンライン請求・窓口交付 1,470円
ここで注意したいのは、
「1人について1回1,600円」ではなく、検索条件ごとに手数料がかかる
という点です。
住所など複数の検索条件を指定する場合には、その条件数によって手数料も変わります。
検索条件については次回詳しく説明します。
「該当する記録がない」という証明もある
検索の結果、該当する登記記録が見つからない場合もあります。
81号通達では、
請求に係る記録がある場合
と
請求に係る記録がない場合
について、それぞれ証明書の様式が定められています。
つまり、検索条件に該当する不動産がなければ、
記録がない旨
が証明されます。
ただし、ここで、
「記録がない」と出たから、その人が全国に不動産を一切所有していない
とまで考えるのは正確ではありません。
所有不動産記録証明書は、あくまで指定した検索条件に基づく検索結果を証明するものだからです。
81号通達の認証文も、
「上記の検索条件に該当する」
所有権の登記名義人が記録されている不動産について証明するものとしています。
相続登記の「対象不動産を探す」ために役立つ制度
相続登記が義務化されたことによって、
相続した不動産について登記をする
ことが重要になりました。
しかし、その前提として、
何を相続したのか
を把握しなければなりません。
所有不動産記録証明制度は、亡くなった人名義の不動産を把握し、
相続登記の対象となる不動産を確認するための手段
として利用できます。
法務省のパンフレットでも、相続人が不動産を把握しやすくなり、登記漏れの防止に役立つ制度と説明されています。
もっとも、
所有不動産記録証明書を必ず取得しなければならない
という制度ではありません。
相続登記義務とは別の制度です。
必要に応じて、相続不動産を調査するために利用するものです。
所有不動産記録証明書は便利だが「万能」ではない
所有不動産記録証明制度によって、
亡くなった人がどこに不動産を所有しているのか分からない
という場合でも、全国を対象として登記記録を検索できる仕組みが設けられました。
しかし、
この証明書を取れば、亡くなった人の所有不動産が必ずすべて分かる
というわけではありません。
法務省の公式パンフレットでも、
- 検索条件が正確でない場合には、所有不動産があっても抽出されないことがある
- 所有権の登記がされていない不動産は検索対象にならない
- コンピュータ化されていない不動産は検索できない
などの注意点が示されています。
では、なぜ全国を検索できる制度なのに、不動産が検索から漏れることがあるのでしょうか。
ポイントになるのが、
「氏名+住所」
という検索条件です。
次回は、
「所有不動産記録証明書は万能ではない―『氏名+住所』で検索する仕組みと検索漏れ」
を取り上げます。
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