DESによる増資登記の手続とは?――株主総会・総数引受契約・利益相反取引と必要書類【第3回】
2026/11/05
社長が会社に貸したお金を資本金に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ)。
第1回ではDESの仕組み、第2回では現物出資に伴う検査役調査を省略できる条件について説明しました。
では、実際にDESで増資する場合、会社はどのような手続を行えばよいのでしょうか。
株式会社の増資では、募集株式の数や発行価額などを決め、引受けに関する手続を行い、出資の履行を受けたうえで変更登記を申請します。
DESの場合は、現金の代わりに会社への貸付債権を現物出資するため、債権の内容や出資方法についても正確に定める必要があります。
さらに、代表取締役自身が株式を引き受ける場合には、利益相反取引の承認が問題になることがあります。
特に注意したいのは、「募集事項の決定」「総数引受契約の承認」「利益相反取引の承認」は、それぞれ法律上の根拠が異なる手続であるという点です。
今回は、株式譲渡制限会社で、取締役会を設置していない株式会社を基本例として、DESによる増資登記の流れを整理します。
1.DESによる増資登記は、どのような順序で進めるのか
会社に対する貸付債権を現物出資して新株を発行する場合、基本的には次の手続を進めます。
1.定款、登記事項、株主構成、貸付債権の内容を確認する
2.募集株式の数、発行価額、現物出資財産などの募集事項を決定する
3.申込割当方式又は総数引受契約方式によって、募集株式の引受けに関する手続を行う
4.総数引受契約や利益相反取引について、必要な承認が適法に行われていることを確認する
5.引受人が貸付債権を現物出資する
6.新株発行の効力が生じた後、資本金及び発行済株式総数の変更登記を申請する
実際には、必要な承認を受けたうえで契約を締結するなど、承認決議と契約締結の前後関係を調整する必要があります。上記は手続の全体像を示したものです。
最初に確認するのは定款と株主構成
増資の内容を決める前に、会社の定款と登記事項証明書を確認します。
特に、次の事項が重要です。
・ 発行済株式総数と発行可能株式総数
・ 株式譲渡制限の有無
・ 取締役会の設置の有無
・ 募集株式発行に関する定款の定め
・ 現在の株主構成と議決権割合
例えば、新株を発行した結果、発行済株式総数が発行可能株式総数を超えてしまう場合には、そのまま増資することはできません。
また、既存株主が複数いる場合、新株の発行によって議決権割合や会社の支配関係が変わることがあります。
DESによって資本金をいくら増やすかだけでなく、誰が何株取得し、増資後の株主構成がどうなるのかを確認しておく必要があります。
2.募集事項は株主総会で決定する――会社法199条
株式会社が新株を発行する場合、会社法199条1項に基づき、募集事項を定めます。
主な募集事項は次のとおりです。
| 募集事項 | 内容 |
|---|---|
| 募集株式の数 | 新たに発行する株式数。種類株式発行会社では種類と数 |
| 払込金額 | 1株当たりの出資金額又はその算定方法 |
| 現物出資財産 | 金銭以外の財産を出資する場合、その内容と価額 |
| 払込期日・期間 | 現金の払込み又は現物出資財産の給付を行う期日・期間 |
| 資本金・資本準備金 | 新株発行によって増加する資本金及び資本準備金に関する事項 |
DESであれば、例えば、社長が会社に対して有する貸付債権のうち、どの債権を、いくらの価額で現物出資するのかを明確にしなければなりません。
単に「社長からの借入金を資本金にする」というだけでは、募集事項を具体的に定めたことにはなりません。
非公開会社では株主総会の特別決議が原則
会社法199条2項によれば、募集事項の決定は、原則として株主総会の決議によります。
この決議は、会社法309条2項5号に基づく特別決議です。
ただし、会社法200条では、株主総会の決議によって、一定の範囲で募集事項の決定を取締役などに委任できる制度も設けられています。
ここで注意したいのは、取締役会を設置しているという理由だけで、募集事項を取締役会決議で決定できるわけではないことです。
公開会社では、会社法201条によって取締役会が募集事項を決定できる場合がありますが、公開会社でない株式会社では、取締役会設置会社であっても株主総会の特別決議が原則です。
今回の基本例である、取締役会を設置していない株式譲渡制限会社でも、株主総会の特別決議によって募集事項を定める方法が基本となります。
なお、引受人に特に有利な払込金額で新株を発行する場合には、会社法199条3項に基づく理由の説明も問題になります。
募集事項は募集ごとに均等でなければならない
会社法199条5項は、募集事項を募集ごとに均等に定めなければならないと規定しています。
例えば、同じ種類の株式を発行する場合でも、ある引受人には1株1万円、別の引受人には1株5,000円という条件を、何の区別もなく一つの募集に混在させればよいわけではありません。
この均等性の規定は、現金出資と現物出資を組み合わせる場合にも検討する必要があります。
金銭出資と現物出資を併用すること自体は可能ですが、出資方法や条件が異なる場合には、募集事項を別個に定める方法も含め、会社法199条5項との整合性を確認する必要があります。
3.募集株式の引受方法――申込割当方式と総数引受契約方式
募集株式の引受方法には、主に申込割当方式と総数引受契約方式があります。
① 申込割当方式
会社法203条・204条による方法です。
会社が募集事項などを通知し、株式を引き受けたい人が申込みを行い、会社が申込者に割り当てる株式数を決定します。
譲渡制限株式の割当てについては、会社法204条2項により、原則として株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議が必要です。ただし、定款に別段の定めがある場合を除きます。
取締役会非設置会社の株主総会では、会社法309条2項5号に基づく特別決議となります。
② 総数引受契約方式
会社法205条1項は、募集株式の総数を引き受ける契約を締結する場合について、203条・204条の申込み及び割当てに関する規定を適用しないと定めています。
例えば、社長が新たに発行する株式の全部を引き受けることが決まっている場合、会社と社長との間で総数引受契約を締結する方法が考えられます。
総数引受契約という名称ですが、引受人が必ず1人でなければならないわけではありません。
複数の引受人によって募集株式の総数を引き受けることも可能です。その場合には、各引受人が何株を引き受けるのか、出資内容がどのようになっているのかを明確にする必要があります。
総数引受契約にも承認が必要な場合がある
ここで重要なのが、会社法205条2項です。
募集株式が譲渡制限株式である場合、総数引受契約について、原則として株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議による承認が必要です。
取締役会非設置会社の株主総会では、会社法309条2項5号に基づく特別決議となります。
ただし、定款に別段の定めがある場合には、その定めに従います。
募集事項の決定と、総数引受契約の承認は別の手続です。
例えば、株主総会で「普通株式100株を1株1万円で発行する」と決めたことと、「その100株を特定の引受人との総数引受契約によって発行することを承認する」ことは、法律上の意味が異なります。
同じ株主総会で両方を決議することは考えられますが、それぞれの承認事項が明確になるようにする必要があります。
なお、この205条2項の承認制度は、平成27年5月1日施行の会社法改正によって設けられたものです。
4.既存株主が引き受けても、必ず「株主割当て」になるわけではない
既存株主に新株を発行する場合、会社法202条の「株主割当て」と混同しないよう注意する必要があります。
会社法202条の株主割当ては、株主に対し、その持株数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を与える制度です。
一方、既存株主だけを引受人として、通常の募集株式発行手続を行うこともあります。
例えば、株主が2人いる会社で、そのうち1人だけが新株を引き受ける場合や、2人とも引き受けるものの、それぞれの引受株式数を個別に定める場合です。
既存株主が新株を引き受けることと、会社法202条の株主割当ては同じ意味ではありません。
株主割当てによるのか、通常の募集株式発行によるのかによって、適用される手続が異なります。
DESで既存株主が貸付債権を現物出資する場合にも、この区別が必要です。
5.社長自身が新株を引き受ける場合の利益相反取引
DESによる増資で注意したいのが、代表取締役自身が会社に対する貸付債権を現物出資する場合です。
この場合、会社と代表取締役本人との間で、株式の引受けに関する契約を締結することになります。
会社法356条の利益相反取引
会社法356条1項2号は、取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとする場合、株主総会において、その取引について重要な事実を開示し、承認を受けなければならないと定めています。
代表取締役が会社に対する貸付債権を現物出資し、その対価として新株を取得する契約についても、利益相反取引の規制との関係を検討する必要があります。
もっとも、代表取締役が自社の新株を引き受ける場合に、募集事項の決定とは別に、常に利益相反取引の承認決議が必要になると一律に断定することはできません。
株主総会で現物出資者、出資財産、価額、引受株式数などの具体的条件について承認を受けている場合に、利益相反取引としての承認を別途必要とするかについては、従来の裁判例や実務上の議論があります。
一方、総数引受契約の締結について、利益相反取引の承認を欠くことが契約の効力に影響すると判断した裁判例もあります。
したがって、株主総会等で何を決議したのか、取締役本人との間でどのような契約を締結するのか、その内容に即して検討することが重要です。
会社法356条による承認が必要な場合、取締役会非設置会社では株主総会で承認します。
取締役会設置会社については、会社法365条1項により取締役会の承認が必要です。
取締役会で承認する場合には、特別利害関係を有する取締役の議決権に関する会社法369条2項にも注意が必要です。
3つの決議・承認を混同しない
DESによる増資で総数引受契約を利用し、代表取締役本人が引受人になる場合には、次の3つを区別する必要があります。
| 決議・承認事項 | 主な根拠条文 | 何を決めるのか |
|---|---|---|
| 募集事項の決定 | 会社法199条 | 発行する株式数、払込金額、現物出資財産など |
| 総数引受契約の承認 | 会社法205条2項 | 譲渡制限株式について、総数引受契約を承認する |
| 利益相反取引の承認 | 会社法356条・365条 | 必要な場合に、取締役と会社との利益相反取引を承認する |
これらは目的も根拠条文も異なります。
ただし、すべてのDESについて必ず3つの独立した承認決議が必要になるという意味ではありません。
募集事項の決定、総数引受契約の承認、利益相反取引の承認について、それぞれ適用の要否と決議内容を確認することが重要です。
なお、会社法356条による利益相反取引の承認が株主総会で必要となる場合、その決議は会社法309条1項の普通決議が原則です。募集事項の決定や205条2項の総数引受契約の承認に必要な特別決議とは区別する必要があります。
承認を欠いた場合には新株発行の効力が問題になることもある
総数引受契約と利益相反取引の承認をめぐっては、大阪高裁令和3年11月11日判決があります。
同裁判例では、利益相反取引について適法な取締役会の承認を欠く総数引受契約の効力が問題となり、新株発行の不存在が認められました。
ただし、これは当該事案の事実関係を踏まえた下級審の判断です。
また、この事案の総数引受契約が締結されたのは平成27年2月であり、現在の会社法205条2項が施行される前の出来事です。
利益相反取引の承認を欠けば、すべての新株発行が当然に不存在になると判断した最高裁判例があるわけではありません。
重要なのは、必要な承認を欠いた場合、契約や新株発行の効力に重大な問題が生じ得るという点です。
この裁判例の詳しい内容と判断の射程については、別の記事で検討する予定です。
6.DESと現金出資を組み合わせて増資する場合
DESによる増資では、すべての株主が貸付債権を現物出資するとは限りません。
例えば、ある株主は会社への貸付債権を現物出資し、別の株主は現金を払い込む場合があります。
現物出資と現金出資の併用
会社法上、金銭出資と現物出資を組み合わせて増資することは可能です。
ただし、募集事項の均等性、引受人ごとの出資内容、現物出資財産の特定などを踏まえて手続を構成する必要があります。
特に、異なる引受人がそれぞれ金銭と現物出資財産を給付する場合、その条件を区別せず一つの募集事項にまとめればよいわけではありません。
例えば、金銭出資による募集と、現物出資による募集について、それぞれ募集事項を定める方法が考えられます。
その場合には、募集ごとに株式数、払込金額、出資内容、払込期日・給付期日などを明確にし、それぞれ必要な決議と引受手続を行います。
一つの株主総会で関連する決議を行う場合でも、法的にどの募集について何を決定したのかを明確にする必要があります。
持株比率を変えずに増資する場合
例えば、次のような会社を考えます。
現在の株主はAとBの2人で、普通株式100株を発行しています。
・ A:70株(70%)
・ B:30株(30%)
今回、現物出資と現金出資を組み合わせ、合計1,000万円を出資して普通株式100株を新たに発行すると仮定します。
新株の発行価額を1株10万円とし、金銭出資と現物出資について、それぞれ適法に募集事項を定めて手続を行った場合、次のような設計が考えられます。
| 株主 | 出資方法 | 出資額 | 取得する新株 |
|---|---|---|---|
| A | 貸付債権の現物出資 | 700万円 | 70株 |
| B | 現金出資 | 300万円 | 30株 |
| 合計 | 1,000万円 | 100株 |
増資後は、Aが140株、Bが60株を保有することになります。
発行済株式総数は200株ですから、持株比率はAが70%、Bが30%のままです。
これは、同じ種類・内容の普通株式を、同じ1株当たりの価額で発行し、各人が予定どおり出資を履行することを前提とした単純な例です。
また、1株当たりの発行価額は、既存の資本金を発行済株式総数で割れば自動的に決まるものではありません。
新株の発行価額や出資財産の価額は、会社の状況や募集条件を踏まえて適切に定める必要があります。
なお、現物出資する貸付債権については、前回説明した会社法207条9項5号の要件を満たすか、別途確認する必要があります。
7.出資の履行と新株発行の効力
募集株式の引受けに関する手続が完了した後は、会社法208条に基づく出資の履行が必要です。
現金出資の場合
金銭を出資する引受人は、定められた期日又は期間内に、会社が定めた銀行等の払込取扱場所で、払込金額の全額を払い込みます。
増資登記では、商業登記法56条2号に基づき、払込みがあったことを証する書面が必要です。
貸付債権を現物出資する場合
現物出資をする引受人は、定められた期日又は期間内に、現物出資財産を給付します。
会社に対する貸付債権を現物出資する場合には、その債権を出資することによって、通常、債権者と債務者が同一となり、民法520条の混同によって債権が消滅します。
ただし、会社法208条2項に基づく現物出資の履行は、単に会社の会計帳簿上で借入金を減らすこととは異なります。
出資の対象となる債権と、いつ、どのような契約関係に基づいて出資したかを明確にしておく必要があります。
また、会社法208条3項は、引受人が出資の履行債務と会社に対する債権を相殺することを禁止しています。
DESは、貸付債権そのものを現物出資する方法であり、金銭出資債務との単純な相殺とは区別されます。
株主になるのは登記完了日ではない
会社法209条1項は、募集株式の引受人が株主となる時期について、次のように定めています。
・ 払込期日を定めた場合:その期日
・ 払込期間を定めた場合:出資の履行をした日
いずれも、必要な出資の履行が行われていることが前提です。
したがって、増資登記が完了した日にはじめて株主になるわけではありません。
また、出資の履行をしない引受人は、会社法208条5項により、(その出資の履行をすることにより株主となる)権利を失います。
8.増加する資本金と資本準備金の決定
募集株式の発行では、出資された財産の全額を必ず資本金に計上しなければならないわけではありません。
会社法445条2項・3項及び会社計算規則14条に基づき、資本金等増加限度額の範囲内で、一定額を資本準備金とすることができます。
例えば、現金出資と現物出資の合計額が1,000万円で、資本金等増加限度額も1,000万円となる場合には、次のような配分が考えられます。
| 全額資本金に計上 | 半額を資本準備金に計上 | |
|---|---|---|
| 増加する資本金 | 1,000万円 | 500万円 |
| 増加する資本準備金 | 0円 | 500万円 |
どちらの場合でも、資本金等増加限度額は1,000万円です。
しかし、登記される資本金の額は異なります。
また、発行する株式数と、増加する資本金の額も別の事項です。
増資の目的に応じて、募集事項の段階で適切に定める必要があります。
9.DESによる増資登記の添付書面
新株発行によって資本金の額や発行済株式総数が変更された場合には、変更登記が必要です。
会社法915条1項により、原則として本店所在地において変更が生じた日から2週間以内に登記を申請します。
主な登記添付書面
取締役会を設置していない株式譲渡制限会社で、総数引受契約を利用し、会社法207条9項5号によって検査役調査を省略する場合を例として整理します。
| 書面 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 株主総会議事録 |
募集事項の決定、必要な総数引受契約の承認 などを記録 |
| 総数引受契約を証する書面 |
商業登記法56条1号。 申込割当方式の場合は申込みを証する書面 |
| 金銭債権について記載された会計帳簿 |
207条9項5号を利用する場合。 商業登記法56条3号ニ |
| 払込みがあったことを証する書面 |
現金出資を併用する場合。 商業登記法56条2号 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | 商業登記規則61条9項 |
| 株主リスト |
株主総会決議を要する登記について、 商業登記規則61条3項などに基づき添付 |
| 委任状 | 司法書士等が代理申請する場合 |
| 定款その他の書面 |
定款の特則など、個別の登記事項・決議内容 に応じて必要となる場合 |
なお、株主総会議事録については、募集事項の決定に関する決議だけでなく、会社法205条2項に基づく総数引受契約の承認も確認できるようにする必要があります。
また、取締役の利益相反取引に該当し、その承認を要する場合には、会社法356条又は365条に基づく適法な承認が必要です。
ただし、利益相反取引の承認を受けるという実体法上の要件と、その承認書面が登記申請の法定添付書面になるかどうかは、別に検討すべき問題です。
金銭出資がある場合の払込証明
法務局の公表資料によれば、払込みがあったことを証する書面として、会社代表者が作成した払込みの事実を証明する書面に、預金通帳の写し等を組み合わせる方法が認められています。
現物出資と金銭出資を併用する場合には、金銭出資部分について、この払込証明が必要になります。
一方、会社法207条9項5号によって検査役調査を省略する現物出資部分については、金銭債権について記載された会計帳簿が必要です。
同じ増資計画であっても、金銭出資部分と現物出資部分では、登記の添付書面が異なります。
株主リストは増資決議時点の株主構成に注意する
株主総会の決議を要する登記では、原則として株主リストを添付します。
商業登記規則61条3項では、議決権割合の高い順に、
・ 上位10名の株主
・ 議決権割合の合計が3分の2に達するまでの株主
のいずれか少ない人数について、氏名・住所・株式数・議決権数・議決権割合などを記載することとされています。
なお、同順位の株主が複数いる場合などには、記載すべき人数が10名を超えることもあります。
ここで注意したいのは、株主リストは、対象となる株主総会決議時点の議決権を基準として作成するという点です。
募集株式発行によって株主構成が変わる場合でも、増資決議時の株主リストに増資後の株式数を記載するわけではありません。
登記添付書面と、司法書士が確認する資料は異なる
例えば、社長の貸付債権を現物出資する場合、司法書士としては、貸付契約書、送金記録、会社の会計帳簿などを確認することが考えられます。
これは、現物出資する金銭債権が実際に存在し、その内容や弁済期、帳簿価額が適切に整理されているかを確認するためです。
しかし、それらの資料がすべて、登記申請に法律上必ず添付する書面であるわけではありません。
登記申請の添付書面として必要なものと、司法書士が手続の適法性を確認するために取得する資料は区別する必要があります。
DESでは、会社の財務状況や貸付金の内容によって、確認事項が異なることもあります。
登録免許税はいくらかかるのか
募集株式の発行によって資本金を増加する登記の登録免許税は、原則として増加する資本金の額の1,000分の7です。
ただし、計算した税額が3万円に満たない場合には、最低税額の3万円となります。
なお、現物出資財産の価額や払込金額の全額ではなく、実際に増加する資本金の額が課税標準となります。
10.DESによる増資登記では、契約と承認の整合性が重要
DESは、貸付債権を現物出資して新株を発行する制度ですが、増資登記の手続そのものは会社法の募集株式発行の規定に従います。
特に重要なのは、募集事項、引受契約、必要な承認、出資履行の内容が整合していることです。
例えば、募集事項では3,000万円の貸付債権を現物出資すると決めているのに、引受契約では対象債権が明確でない場合、手続の内容を確認する必要があります。
また、代表取締役自身が引受人になる場合には、総数引受契約の承認とは別に、利益相反取引の承認を要するかどうかも検討する必要があります。
現金出資と現物出資を併用する場合には、出資方法ごとの募集条件、引受株式数、払込み・給付の履行を、それぞれ整理する必要があります。
登記に必要な書類を揃えるだけでなく、その書類が前提としている法律上の手続が適切に行われているかを確認することが重要です。
次回は、DESを行う場合の税務上の問題を取り上げます。
特に、会社法上は検査役調査を省略できる場合でも、貸付債権の税務上の評価によって債務消滅益が問題になることがあります。
司法書士が確認すべき事項と、税理士による判断が必要となる事項を区別し、DESを実施する前に確認しておきたい注意点を整理します。
参考法令・資料
・ 会社法199条~205条、207条~209条
・ 会社法309条、356条、365条、369条、445条、915条
・ 商業登記法46条、56条
・ 商業登記規則61条
・ 会社計算規則14条
・ 民法520条
・ 登録免許税法別表第一第24号
・ 平成27年2月6日法務省民商第13号通達「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」
・ 法務省・法務局「株式会社変更登記申請書(募集株式発行)」記載例
・ 法務省「『株主リスト』が登記の添付書面となりました」
・ 法務省「商業・法人登記 Q&A」
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