中野司法書士事務所

2億2443万円の勝訴判決でも保険金は出なかった――司法書士賠償責任保険の「故意免責」と地面師事件

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2億2443万円の勝訴判決でも保険金は出なかった――司法書士賠償責任保険の「故意免責」と地面師事件

2億2443万円の勝訴判決でも保険金は出なかった――司法書士賠償責任保険の「故意免責」と地面師事件

2026/08/04

前回の記事では、いわゆる地面師による土地取引をめぐり、司法書士の本人確認について、一審では責任が否定されたものの、東京高裁では判断が逆転し、司法書士に2億2443万0863円という巨額の損害賠償責任が認められた事件を紹介しました。

 

では、司法書士にこれだけの損害賠償を命じる判決が確定した後、被害を受けた買主会社は実際にそのお金を回収できたのでしょうか。

 

この事件には、さらに続きがあります。

司法書士には賠償責任保険がありました。

しかも買主会社は、司法書士が保険会社に対して持つと考えた保険金請求権を差し押さえ、その権利を自らに移す「転付命令」まで取得しています。

 

対象となった保険金請求権は、

  • 2億円
  • 1000万円

の合計2億1000万円でした。

 

ところが、その後に起こされた保険金請求訴訟で、東京地方裁判所は買主会社の請求をすべて棄却しました。

 

司法書士に対する2億2443万円余りの損害賠償判決は確定している。

保険契約も存在する。

保険金請求権を差し押さえ、転付命令まで確定している。

それでも保険会社には支払義務がない。

 

なぜ、このような結果になったのでしょうか。

 

今回は地面師事件3部作の第2回として、東京地裁令和2年7月1日判決を中心に、司法書士賠償責任保険の「故意免責」と、裁判所が司法書士の故意をどのように認定したのかを見ていきます。

 

まず、司法書士賠償責任保険とは

司法書士が業務を行う中でミスをし、依頼者などに大きな損害を与える可能性はゼロではありません。

 

今回の事件で問題となった保険契約では、概要として、

司法書士が職業上相当な注意を用いなかったことによって依頼者に財産的損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合には保険金を支払う

という内容になっていました。

 

一方、重要な例外もありました。

被保険者である司法書士の「故意」によって生じた損害については、保険金を支払わない

という「故意免責条項」です。

 

ここで、「過失」と「故意」の違いが問題になります。

 

例えば、

「本来なら確認すべき事情に気付かなかった」
「注意していれば偽造を発見できたのに見落とした」

という場合には、基本的には過失の問題になります。

 

これに対して、

「売主役が本物ではなく、成りすましだと知っていた。それでも登記手続を進めた」

ということであれば、問題は単なる確認ミスではなく、「故意」になります。

今回の保険金請求訴訟では、まさにこの点が最大の争点となりました。

 

買主会社は保険金請求権を差し押さえ、転付命令まで得ていた

前回紹介した東京高裁判決は、平成29年12月13日に言い渡されました。

 

司法書士に対して、

2億2443万0863円と遅延損害金を支払え

という判決です。

この判決は同年12月28日に確定しました。

 

買主会社はその後すぐに、司法書士が保険会社に対して持つと考えた保険金請求権について、債権差押えと転付命令を申し立てました。

平成30年1月5日に命令が出され、転付命令は同月30日に確定しています。

 

「転付命令」という言葉は一般にはあまりなじみがないと思います。

簡単にいえば、

債務者が第三者に対して持っている債権を差し押さえ、その債権を債権者に移して回収する方法

です。

 

今回でいえば、

 

司法書士

保険会社に対する保険金請求権

 

を、

買主会社が差し押さえ、自分に移してもらったということです。

 

一見すると、これで2億1000万円を保険会社から回収できそうにも思えます。

しかし、ここに大きな問題がありました。

 

保険会社の反論――「これは過失ではなく故意だ」

保険会社は、司法書士には保険金を請求できる権利そのものがないと主張しました。

 

理由は、

司法書士が売主役を成りすましだと認識していながら登記手続を進めた

というものでした。

 

それが事実であれば、司法書士の損害賠償責任は「故意」によって生じたことになります。

 

そして、本件保険契約には故意免責条項があります。

 

つまり、

「司法書士には2億円を超える損害賠償責任がある。しかし、その責任が故意によるものである以上、保険会社は支払わない」

という主張です。

ここで、前回の裁判とは立場が大きく変わりました。

 

前の裁判では「過失がある」、今度は「故意ではない」

前回紹介した損害賠償訴訟では、買主会社は司法書士に対して、

「これだけ不自然な事情があったのだから、もっと確認すべきだった」

と主張しました。

 

つまり、

司法書士には注意義務違反、すなわち過失がある

という主張です。

 

東京高裁はこれを認め、司法書士に損害賠償を命じました。

ところが、その後の保険金請求訴訟では、買主会社は、

司法書士には過失はあった。しかし、成りすましであることまで知っていたわけではない

と主張することになります。

 

なぜなら、司法書士が「知っていた」と認定されれば故意免責となり、保険会社から回収できなくなるからです。

 

反対に保険会社は、

司法書士は成りすましだと知っていた

と主張しました。

 

前の裁判では、買主会社が司法書士の責任を追及する。

次の裁判では、その買主会社が司法書士について「故意ではなかった」と主張し、保険会社が「故意だった」と主張する。

一見すると、不思議な構図です。

 

しかし、これは買主会社が矛盾したことを言っているという単純な話ではありません。

二つの裁判では、争われている法律問題が違うからです。

 

「前は過失、今度は故意」は矛盾しないのか

ここは、この事件を理解するうえで重要です。

東京高裁平成29年12月13日判決は、司法書士に本人確認義務違反があったとして不法行為責任を認めました。

 

しかし、高裁が、

「司法書士には故意がなかった」

と判断したわけではありません。

 

損害賠償責任を認めるためには、少なくとも司法書士に過失があると判断すれば足りました。

その裁判では、「成りすましだと知っていたか」という故意の有無を正面から判断する必要がなかったのです。

 

これに対して、保険金請求訴訟では、故意免責条項が直接問題になっています。

そのため、

司法書士は本当に成りすましを知らなかったのか

が改めて審理されました。

 

しかも、この保険金請求訴訟では、前の損害賠償訴訟とは異なり、

 

  • 別件の地面師事件
  • その共犯者とされた人物の証言
  • 司法書士の過去の懲戒処分や注意勧告歴

 

なども証拠として検討されています。

 

したがって、

「一つの裁判では過失、別の裁判では故意とされたから、判決同士が矛盾している」

という関係ではありません。

 

前回の「不審事情」が、今度は故意を推認する材料になった

保険金請求訴訟でも、前回の記事で紹介した本件取引の不自然な事情が改めて問題となりました。

 

裁判所が特に取り上げたのは、次の3点です。

 

1 収益のある駐車場を所有しているのに「休眠会社」

売主会社は、東京都文京区の土地を抵当権のない状態で所有し、駐車場として利用して収益を得ていました。

それにもかかわらず、売主役は会社を「休眠会社」であると説明していました。

裁判所は、この説明を不自然と評価しました。

 

2 法人の売買代金を代表者個人名義の口座へ送金

土地は会社所有です。

ところが売主役は、売買代金の振込先として法人名義ではなく、代表者個人名義の銀行口座を指定しました。

会社の土地を売却した代金を代表者個人の口座へ振り込ませることは、通常の会社取引として見れば強い違和感があります。

裁判所は、代表者個人が会社財産を横領する可能性まで想起させる事情であると評価しています。

 

3 残代金5000万円の入金確認前に登記書類を渡した

残代金1億円のうち5000万円は送金できましたが、残る5000万円については銀行窓口から振り込むことになりました。

ところが売主役は銀行へ同行せず、残り5000万円の入金を確認する前に、所有権移転登記に必要な書類を司法書士へ渡しました。

真の所有者であれば、残代金を受け取れないまま登記名義だけを失う危険があります。

これも裁判所は不自然な行動だと評価しました。

 

同じ事情が「過失」と「故意」の両方の判断材料になった

ここが非常に興味深いところです。

前の東京高裁判決では、これらの不自然な事情は、

司法書士がもっと慎重に本人確認をすべきだった

という「過失」の判断材料になりました。

 

ところが保険金請求訴訟では、裁判所は一歩進んで、

これほど不自然な事情を司法書士が認識しながら、全く疑問を抱かず登記手続を進めたということ自体が、本当は成りすましだと知っていたことを推認させる方向の事情にもなる

と評価しました。

 

もちろん、この3点だけで司法書士の故意が認定されたわけではありません。

故意認定には、さらに重要な事情がありました。

 

裁判所が考えた「地面師事件で司法書士が果たす役割」

保険金請求判決には、司法書士という仕事を考えるうえで非常に印象的な判断があります。

裁判所は、本件が複数の人物によって組織的に行われた地面師詐欺であることを前提に、司法書士の役割について検討しました。

 

事情を何も知らない通常の司法書士を取引に参加させれば、

 

  • 取引の不自然さに気付かれる
  • 追加確認を求められる
  • 本人確認情報の作成を拒否される
  • 登記手続が止まる

 

可能性があります。

 

それでは詐欺が失敗する危険が高くなります。

一方で、事情を知る司法書士が関与すれば、そのような危険が減ります。

 

さらに、

「司法書士が本人確認をしている」

という事実そのものが、取引相手である買主会社の信用を高めることになります。

 

裁判所は、このような地面師事件における司法書士の役割の重要性も考慮し、本件司法書士が成りすましを知っていたことを推認する一つの理由としました。

 

これは、すべての地面師事件に司法書士の共犯者がいるという意味ではありません。

あくまで本件で、裁判所が故意を認定する過程で示した判断です。

 

しかし、通常の不動産取引において司法書士が果たしている役割を逆の方向から見ると、非常に示唆的です。

 

前回の記事では、

司法書士が提供しているものは、登記申請書だけではなく、専門家としての判断と信用である

と書きました。

今回の判決は、その「信用」が悪用されることの危険性を示しています。

 

別件の地面師事件と共犯者証言

さらに保険金請求訴訟では、この司法書士が過去に別の地面師事件へ関与していたのかが問題になりました。

司法書士とは別に、複数の地面師事件について既に実刑判決が確定していた人物が証人として出廷しました。

 

その人物は、司法書士について、

 

  • 司法書士から地面師の話を持ち掛けられた
  • 詐欺の仕組みを考えていた
  • 司法書士役として関与していた
  • 報酬も受け取っていた

 

という趣旨の証言をしました。

 

ただし、裁判所は、その証言を無条件に信用したわけではありません。

 

証人には、過去の別の民事訴訟について事実と異なる供述をしている部分もありました。

 

買主会社側は、

「そのような証人の話は信用できない」

と主張しました。

 

裁判所はその問題点も検討しています。

 

そのうえで、

 

  • 証人自身も既に実刑判決を受けている
  • 自分が重要な役割を果たしたことや高額な利益を得たことなど、自分に不利な事情も率直に述べている
  • あえて司法書士を虚偽に巻き込む合理的な理由が見当たらない
  • 証言内容の核心部分が別件事件の経過と矛盾しない

 

などとして、司法書士の地面師事件への関与についての証言の核心部分を信用できると判断しました。

 

つまり、

「共犯者が司法書士も仲間だったと言ったから、故意だと認定した」

という単純な判断ではありません。

 

裁判所は、証言の問題点も含めて信用性を検討しています。

 

過去の懲戒処分や注意勧告も検討された

判決では、この司法書士が過去に、

 

  • 千葉地方法務局から3回の業務停止処分
  • 千葉司法書士会から3回の注意勧告処分

 

を受けていたことも認定されています。

 

その中には、本件との関係で特に気になるものがあります。

 

一つは、

実際には本人確認や登記申請意思の確認をしていないのに、本人確認をしたとして内容の虚偽の本人確認情報を作成した

というものです。

 

また別の事件では、

売買代金全額の支払が終わったことを確認しないまま、買主側の司法書士へ登記申請書類を引き渡した

ことが問題になっています。

 

ただし、これらの処分歴があるから、今回も故意だったと直ちに判断されたわけではありません。

 

裁判所は、共犯者証言の信用性などを判断する際の事情の一つとして、過去に非違行為を繰り返していたことも考慮しました。

故意認定は、これら一つ一つの事情ではなく、複数の証拠を総合して行われています。

 

同じ司法書士は、別の地面師事件で懲役12年の判決を受けている

この保険金請求判決とは別に、同じ司法書士について、東京地裁令和2年6月16日の刑事判決があります。

 

この刑事裁判では、今回取り上げている文京区の土地事件とは別の複数の地面師事件について、

 

  • 詐欺
  • 有印私文書偽造・同行使
  • 偽造有印公文書行使
  • 電磁的公正証書原本不実記録・同供用など

 

が認定され、司法書士に懲役12年が言い渡されました。

求刑は懲役14年でした。

 

刑事裁判所は量刑理由の中で、この司法書士について、共犯者らと不動産を利用した詐欺の仕組みを考え、司法書士という地位を利用するなどして各犯行で主体的かつ重要な役割を果たしたと評価しています。

 

ここは区別が重要です。

懲役12年となった刑事事件は、今回の文京区の土地事件そのものではありません。

今回の保険金請求訴訟と関係するのは、司法書士がそれ以前から別件の地面師事件に関与していたのか、という点です。

また、刑事判決は保険金請求判決の15日前に言い渡されていますが、保険金請求判決本文では司法書士本人の刑事事件を公判中のものとして記載しています。

 

したがって、

「刑事事件で有罪になったから、保険金請求訴訟でも故意とされた」

という単純な関係として説明することはできません。

 

民事裁判所と刑事裁判所は、それぞれの裁判で提出された証拠を基に判断しています。

 

東京地裁は「成りすましだと知っていた」と認定

東京地裁は最終的に、

 

  • 本件取引そのものに多数の不自然な事情があったこと
  • 司法書士がそれらの事情を認識していたこと
  • 別件地面師事件への関与
  • 共犯者証言
  • 過去の非違行為

 

などを総合しました。

 

そして、

司法書士は、売主役が真の会社代表者ではなく成りすましであることを認識していた

と認定しました。

 

つまり、今回の司法書士の責任は、

「本人確認を誤った」

という単なる過失によって生じたものではなく、

成りすましだと知りながら登記手続を進めたという故意によって生じた

と判断されたのです。

 

その結果、保険契約の故意免責条項が適用され、保険会社には保険金を支払う義務がないとされました。

買主会社の請求はすべて棄却されました。

 

転付命令まで取ったのに、なぜ回収できなかったのか

ここで、

「でも、買主会社は既に保険金請求権を差し押さえて、転付命令まで取っていたのではないか」

という疑問が残ります。

 

しかし、転付命令によって取得できるのは、

司法書士が実際に保険会社に対して持っている権利

です。

 

司法書士の故意によって保険会社が免責されるのであれば、司法書士自身に保険金を請求できる権利がありません。

存在しない保険金請求権を、差押えや転付命令によって新しく作り出すことはできません。

そのため、転付命令が確定していても、保険会社から2億1000万円を回収することはできなかったのです。

 

「本人確認を間違えたら保険が出ない」という判決ではない

ここは誤解してはいけないところです。

 

今回の判決は、

司法書士が本人確認を一度でも間違えれば、賠償責任保険は支払われない

という判決ではありません。

 

通常、司法書士が故意なく判断を誤ったり、確認すべき事項を見落としたりした場合には、過失の問題となります。

今回の事案はそれとは大きく異なります。

 

裁判所は、

 

  • 本件取引の多数の不自然な事情
  • 別件地面師事件への関与
  • 共犯者の証言
  • 過去の非違行為

 

などを総合し、最終的に司法書士が成りすましを知っていたという「故意」まで認定しました。

極めて特殊で重大な事案です。

通常の司法書士業務上のミスと、本件を同一視することはできません。

 

賠償責任保険があれば、何があっても安心というわけではない

司法書士に限らず、専門職の賠償責任保険には補償される事故と、補償されない事故があります。

保険契約には、補償範囲や免責事由があります。

そのため、

「司法書士が保険に加入しているから、事故があれば必ず保険会社から全額回収できる」

というわけではありません。

 

また、被害者側から見ても、

 

  • 勝訴判決を取れるか
  • 相手方に支払能力があるか
  • 賠償責任保険が使えるか
  • 保険金請求権が実際に存在するか

 

は、それぞれ別の問題です。

 

今回の事件は、

裁判に勝つことと、実際に損害を回収することは同じではない

ということも示しています。

 

司法書士の「信用」は、不動産取引を支えるものでもある

今回の判決だけを見ると、司法書士制度に対して不安を感じる方もいるかもしれません。

しかし、この事件は通常の司法書士業務とは大きく異なる特殊な事案です。

 

むしろ注目したいのは、地面師側にとっても、

「司法書士が本人確認をした」

という事実が重要だったと裁判所が考えている点です。

 

なぜ、その信用が必要なのでしょうか。

 

それは通常の不動産取引において、

  • 本人であること
  • 売却意思があること
  • 必要書類がそろっていること
  • 登記手続を進めることができること

について、司法書士の確認と判断が取引関係者から信頼されているからです。

 

前回の記事でも触れましたが、司法書士が不動産取引の現場で提供しているものは、登記申請書だけではありません。

専門家としての確認、判断、そして信用です。

 

今回の事件では、その信用が逆方向に利用されたと裁判所が認定しました。

そのことは裏を返せば、通常の不動産売買において、司法書士の本人確認や意思確認がどれほど重要な意味を持つかを示しているともいえます。

 

まとめ――「過失」と「故意」で保険の結論は大きく変わる

今回の事件では、買主会社は司法書士に対する2億2443万0863円の損害賠償判決を取得しました。

さらに司法書士の保険金請求権を差し押さえ、合計2億1000万円について転付命令まで確定させました。

しかし、保険金請求訴訟では一円も認められませんでした。

 

理由は、

司法書士の責任が単なる過失ではなく、故意によって生じたものだと裁判所が認定したからです。

 

前の損害賠償訴訟で「過失」が認定され、後の保険金請求訴訟で「故意」が認定されたことも矛盾しません。

二つの裁判では争点が異なり、後の裁判では別件地面師事件や共犯者証言など、新たな証拠関係も含めて故意の有無が正面から検討されたからです。

そして、転付命令を得たとしても、元々司法書士に保険金請求権が存在しなければ、保険会社から回収することはできません。

この事件は、司法書士賠償責任保険の限界だけでなく、

専門家の責任、信用、そして裁判で勝つことと実際に回収することの違い

まで考えさせられる裁判例です。

 

第3回――2億円を払い、登記まで受けたのに、なぜ土地を取得できなかったのか

このシリーズには、もう一つ重要な問題が残っています。

買主会社は、不動産売買代金を支払い、司法書士が所有権移転登記を申請し、法務局でも実際に登記が完了しました。

それでも、買主会社は最終的に土地を取得することができませんでした。

なぜ、一度所有権移転登記まで受けた買主が、真の所有者に土地を返さなければならなかったのでしょうか。

第3回では、

  • 成りすましによる売買と所有権移転
  • 登記が完了しても所有権を取得できない場合
  • 不動産登記に「公信力」がないことの意味
  • 地面師被害を受けた買主がその後どのように損害回復を図ったのか

を、東京地裁平成27年10月1日判決などを基に見ていきます。

 

参考裁判例

東京地方裁判所令和2年7月1日判決
平成30年(ワ)第7987号・保険金請求事件
判例時報2464号39頁、金融・商事判例1599号8頁

東京高等裁判所平成29年12月13日判決
平成28年(ネ)第4593号・損害賠償請求控訴事件

東京地方裁判所令和2年6月16日判決
平成29年(合わ)第294号・平成29年(刑わ)第669号・平成30年(合わ)第66号

 

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