中野司法書士事務所

成年後見・保佐は改正後どうなる?令和8年改正の経過措置と新制度への移行

お問い合わせはこちら

今の成年後見・保佐はどうなる?令和8年改正の経過措置と新制度への移行【成年後見制度改正・7回】

今の成年後見・保佐はどうなる?令和8年改正の経過措置と新制度への移行【成年後見制度改正・7回】

2026/10/03

これまでの連載では、令和8年改正によって、成年後見制度がどのように変わるのかを見てきました。

後見・保佐の制度は廃止され、法定後見制度は「補助」を基本とする仕組みに再編されます。

 

では、改正法が施行されたとき、すでに成年後見や保佐を利用している人はどうなるのでしょうか。

「後見が廃止されるなら、今の成年後見も施行日に終わるのか」

「現在の成年被後見人は、自動的に新しい補助や特定補助になるのか」

「今の補助も、そのまま旧制度として残るのか」

 

こうした疑問に答えるため、改正法には詳しい経過措置が置かれています。

最初に結論を整理すると、扱いは一律ではありません。

 

施行時の状態 施行後の基本的な扱い
成年後見を利用中  原則として現在の制度を継続
保佐を利用中 原則として現在の制度を継続
補助を利用中 新制度の補助として引き継ぐ

任意後見契約を

締結済み

原則として新しい任意後見契約法を適用。 

ただし旧法ですでに生じた効力は維持

 

特に重要なのは、現在の後見・保佐と、現在の補助では経過措置の仕組みが違うという点です。

現在の後見・保佐には原則として旧制度が残る一方、現在の補助は新制度の補助へ法的に引き継がれます。

 

なお、成年後見制度に関する今回の改正は、公布の日(令和8年6月24日)から起算して2年6月を超えない範囲内で政令で定める日に施行されることとされています。

以下の「施行日」は、この成年後見制度に関する改正規定の施行日を意味します。

 

後見・保佐が廃止されても、現在の制度が施行日に消えるわけではない

第2回では、改正後の法定後見制度について、

後見・保佐を廃止し、補助を基本とする制度に一元化する

と説明しました。

 

ただし、これは改正後に新たに利用する制度の基本構造です。

 

すでに後見開始や保佐開始の審判を受けている人まで、施行日に一律に新制度へ切り替える仕組みにはなっていません。

 

改正法附則2条・3条は、施行日前に開始している後見・保佐について、附則に特別の定めがある場合を除き、

「なお従前の例による」

としています。

 

つまり、現在の成年後見や保佐は、施行日が来ただけで自動的に消滅するわけではありません。

現在の成年被後見人が自動的に新制度の補助や特定補助になるわけでもありません。

 

現在の成年後見・保佐は、基本的にはそのまま続けられる

施行日前に後見開始の審判を受けている場合、成年被後見人、成年後見人、成年後見監督人については、附則に特別の定めがある場合を除き、従来の制度が引き続き適用されます。

 

保佐についても同様です。

施行日前に保佐開始の審判を受けている被保佐人、保佐人、保佐監督人については、原則として従来の制度が継続します。

 

法務省も、経過措置について、

「基本的には現行法の内容で利用継続可能」

と整理しています。

 

したがって、

「改正法が施行されたら、現在の後見・保佐をすぐ新しい補助へ変更しなければならない」

という制度ではありません。

 

一方で、旧制度の利用をそのまま続けることだけが選択肢でもありません。

後で説明するように、新しい補助制度へ移る仕組みや、現在の後見・保佐を取り消すための経過措置も用意されています。

 

旧制度を続けても「何も変わらない」わけではない

現在の後見・保佐は原則として旧制度を継続します。

しかし、すべてについて旧法だけが適用され続けるわけではありません。

 

今回の改正で新たに設けられた一部の規定は、現在の制度にも適用されます。

その一つが、第5回で取り上げた解任に関する見直しです。

 

改正後は、

本人の利益のため特に必要があるとき

にも補助人を解任できる仕組みが設けられます。

経過措置により、この新しい解任規定は、現在の成年後見人・成年後見監督人、保佐人・保佐監督人の解任についても適用されます。

 

もう一つが、本人の意向を把握し、尊重する義務です。

改正後の補助人については、

  • 本人にその事務に関する情報を提供する
  • 本人から話を聴くなどして意向を把握する
  • 把握した意向を尊重する
  • 本人の心身の状態や生活状況にも配慮する

という仕組みが置かれます。

この規定も、現在の成年後見人・保佐人について適用されます。

 

つまり、

現在の後見・保佐は基本的には旧制度を継続しながら、一部については改正後の本人中心の新しい規律が適用される

という構造です。

 

一方、新制度の補助人について定められた規定のすべてが、現在の成年後見人・保佐人にそのまま適用されるわけではありません。

 

例えば、第4回で説明した新民法876条の21の毎年1回の報告義務について、現在の成年後見人・保佐人にも当然に同じ規定が適用される仕組みにはなっていません。

経過措置については、どの新しい規定が適用されるのかを分けて考える必要があります。

 

現在の後見・保佐から、新しい補助制度へ移ることもできる

現在の後見・保佐をそのまま利用し続けるだけでなく、改正後の新しい補助制度へ移るための仕組みも設けられています。

現在の成年後見人や成年後見監督人は、成年被後見人について、新民法による補助開始の審判などを請求することができます。

保佐人・保佐監督人についても同様です。

もちろん、新民法7条に定める本人、配偶者、四親等内の親族などの申立権者が請求することもできます。

 

したがって、

現在後見や保佐を利用しているから、新しい補助制度を利用できない

ということではありません。

 

新しい補助へ移るときは、現在の後見・保佐を取り消す

現在の成年被後見人について、新しい補助開始の審判をする場合、家庭裁判所は、施行日前にされた後見開始の審判を取り消さなければならないとされています。

保佐についても同様の仕組みが置かれています。

 

つまり、

現在の後見を残したまま、その上に新しい補助を重ねる

という移行ではありません。

新制度の補助を開始するのであれば、それまでの後見・保佐を終了させて、新しい制度へ移ります。

 

現在「後見」だから、新制度でも当然に特定補助になるわけではない

ここは、今回の改正の考え方を理解するうえで重要です。

現在の成年被後見人について、新しい補助開始の審判を判断するとき、家庭裁判所は、

その人が施行日前に後見開始の審判を受けていたことを考慮しない

とされています。

 

保佐についても同じ仕組みです。

 

したがって、

「今は成年後見だから、新制度へ移れば当然に特定補助になる」

ということではありません。

新制度では、従前の「後見」「保佐」という類型にそのまま対応させるのではなく、新民法の各要件に基づいて、その本人に必要な法的支援が判断されます。

 

必要に応じて、

  • 補助人の同意を必要とする行為
  • 特定補助
  • 補助人に与える代理権

などを組み合わせることになります。

現在利用している類型を、そのまま新制度の別の類型へ機械的に置き換える制度ではありません。

 

新しい補助へ移らず、現在の後見・保佐だけを終了する仕組みもある

現在の後見・保佐については、

新制度へ移る場合

とは別に、

現在の制度そのものを取り消す

ための経過措置もあります。

 

現在の成年後見について、家庭裁判所は、

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 成年後見人
  • 成年後見監督人

の請求により、施行日前にされた後見開始の審判を取り消すことができます。

 

保佐についても同様です。

 

これは、第4回で説明した改正後の補助制度における終了の仕組みとは別の、既存の後見・保佐について設けられた経過措置です。

注意したいのは、

「請求すれば必ず取り消される」

という規定ではないことです。

条文は、家庭裁判所が

「取り消すことができる」

としています。

したがって、本人や家族が終了を希望しただけで、現在の後見・保佐が自動的に終了するわけではありません。

家庭裁判所による取消しの審判が必要です。

 

現在の「補助」は、後見・保佐とは扱いが違う

ここまで見てきた現在の後見・保佐と、現在の補助では、経過措置の考え方が大きく違います。

現在の後見・保佐は、原則として旧制度を継続します。

これに対して、施行日前に補助開始の審判を受けている人については、施行日以後、

新民法7条1項による補助開始の審判を受けたものとみなされます。

現在の補助人・補助監督人についても、それぞれ新制度上の補助人・補助監督人とみなされます。

 

したがって、現在補助を利用している人が、施行日にいったん制度を終了し、改めて新制度の補助を申し立て直す必要はありません。

現在の補助は、そのまま新制度へ法的に引き継がれます。

 

現在の同意権・代理権も引き継がれる

新制度へ引き継がれるのは、補助開始の審判だけではありません。

 

施行日前に、

補助人の同意を要する旨の審判

を受けている場合、その審判は、施行日以後、

新民法9条1項による補助人の同意を要する旨の審判

とみなされます。

 

また、

補助人に代理権を付与する旨の審判

を受けている場合には、

新民法11条1項による代理権付与の審判

とみなされます。

 

つまり、

補助という地位だけが引き継がれ、現在設定されている具体的な権限は消えてしまう

という仕組みではありません。

現在利用している具体的な支援についても、新制度上の対応する審判として引き継がれます。

 

現在の補助には、新しい「見直し・終了」の仕組みが適用される

現在の補助が新法による補助とみなされることにより、施行後は、第4回で説明した新民法12条による見直し・終了の仕組みが適用されます。

 

例えば、補助人の同意を必要としていた行為について、家庭裁判所がその必要がなくなったと認めるときは、所定の者からの請求により、その審判の全部または一部を取り消すことができます。

代理権についても、必要がなくなったと認めるときは、その全部または一部を取り消すことができます。

 

そして、新民法9条1項の要同意事項、新民法10条1項の特定補助、新民法11条1項の代理権に関する審判がすべて取り消される場合には、家庭裁判所は補助開始の審判を取り消さなければなりません。

 

ここでも、

旧法のまま残る後見・保佐

と、

新制度へ引き継がれる現在の補助

を分けて考える必要があります。

 

施行日前に申立てをしていても、審判が確定していなければ扱いが変わる

経過措置が必要なのは、すでに後見・保佐・補助を利用している人だけではありません。

施行日前に申立てをしたものの、施行時点でまだ審判が確定していない事件についても規定があります。

施行日前にされた後見開始の審判の請求について、施行日前にその請求に係る審判が確定していない場合には、施行日以後、

新民法7条1項による補助開始の審判の請求

とみなされます。

 

保佐開始の審判の請求についても同様です。

 

現在の補助についても、施行日前に、

  • 補助開始
  • 補助人の同意を要する旨の審判
  • 補助人への代理権付与

を請求し、施行日前にその審判が確定していない場合には、それぞれ新法上の対応する請求とみなされます。

 

したがって、

「施行日前に後見開始を申し立てれば、必ず旧制度の成年後見になる」

ということではありません。

経過措置を考えるうえでは、単に申立てをした日だけではなく、

施行日前にその審判が確定しているか

という違いも重要になります。

 

すでに締結した任意後見契約も、新制度へつながる

第6回では、任意後見制度について、

任意後見監督人の選任によって契約が発効する現在の制度

から、

任意後見開始の審判によって契約が発効する制度

へ変わることを説明しました。

 

では、施行日前にすでに任意後見契約を締結している場合はどうなるのでしょうか。

改正法附則6条は、

施行日前に締結された任意後見契約についても、原則として改正後の任意後見契約法を適用する

としています。

そのため、改正前に作った任意後見契約が、施行日に無効になったり、すべて作り直しになったりするわけではありません。

施行日前に締結された任意後見契約については、新しい制度へつなぐため、

任意後見開始の審判がされた時から効力を生ずる旨の定めがあるものとみなす

という経過措置が置かれています。

 

すでに効力が生じている任意後見を、改めて開始し直すわけではない

任意後見契約については、もう一つ重要な規定があります。

附則6条は、新しい任意後見契約法を既存契約にも適用するとしながら、

旧法によってすでに生じた効力を妨げない

としています。

 

したがって、施行日前にすでに任意後見監督人が選任され、任意後見契約の効力が生じている場合に、

施行日にその効力がいったん失われ、改めて任意後見開始の審判を受け直さなければならない

ということではありません。

旧法の下ですでに生じた効力は維持されます。

施行前の任意後見契約については、「改正後の任意後見契約法が適用されること」と「旧法ですでに生じた効力が維持されること」の両方を理解する必要があります。

 

任意後見監督人の選任を申し立てている途中ならどうなる?

施行日前に、現在の制度による任意後見監督人の選任を申し立てていても、施行日前にその請求に係る審判が確定していない場合があります。

この場合、その請求は、施行日以後、

新しい任意後見開始の審判の請求

とみなされます。

 

第6回で説明した「任意後見の開始方法が変わる」という制度改正と、施行時に進行中の事件が途切れないよう、経過措置が設けられています。

 

民法だけでなく、関連する法律や審判手続にも経過措置がある

今回の成年後見制度改正では、民法だけでなく、多数の関連法律も改正されます。

そのため、現在の後見・保佐について、

民法では旧制度が続くのに、関連する法律だけすべて新制度に置き換わる

という単純な仕組みにはなっていません。

 

関係法律の整備法でも、経過措置により旧後見・旧保佐が継続する成年被後見人、成年後見人、被保佐人、保佐人などについては、改正後の関係法律の規定にかかわらず、原則として従前の例によることとされています。

 

また、現在の後見・保佐を旧制度で継続する場合の家事審判手続についても、原則として従前の例によることとされています。

 

個々の関連法律にはそれぞれの規定がありますが、第7回で重要なのは、

旧後見・旧保佐を残すための経過措置は、民法だけを見れば終わる話ではない

という点です。

 

続ける・新制度へ移る・終了する――三つを混同しない

現在の後見・保佐については、改正後、大きく分けると次のような関係になります。

 

現在の制度を続ける
→ 原則として旧制度をそのまま利用する。

 

新しい制度へ移る
→ 新法による補助開始等の審判を受け、現在の後見・保佐開始の審判を取り消す。

 

現在の制度を終了する
→ 経過措置による後見・保佐開始審判の取消しを求める。

 

これらは別の仕組みです。

したがって、

「新しい補助へ移らなければ、今の成年後見を終了することはできない」

ということではありません。

 

反対に、

「施行後は全員、新しい制度へ早く移らなければならない」

という制度でもありません。

 

法律は、現在の制度を継続する道、新制度へ移る道、旧制度を終了する道をそれぞれ用意しています。

どの仕組みを利用するかは、その人に現在どのような法的支援が必要なのかという問題と切り離せません。

 

経過措置にも表れている「必要な支援を、必要な範囲・必要な期間で」

全7回を通じて、令和8年改正の成年後見制度を見てきました。

第1回から繰り返し中心に置いてきたのが、

本人に必要な支援を、必要な範囲・必要な期間で行う

という考え方です。

 

今回の経過措置を見ると、制度そのものは大きく変える一方で、現在利用している人の法的地位を施行日に一律に切り替える制度にはしていないことが分かります。

現在の後見・保佐は、原則として旧制度を継続できる。

必要であれば、新しい補助制度へ移ることもできる。

現在の制度を取り消すための仕組みもある。

現在の補助は、新しい補助として引き継がれる。

すでに締結している任意後見契約についても、新制度へつながるよう経過措置が置かれている。

改正後の制度は、単に「後見・保佐を廃止して補助に置き換える」というだけのものではありません。

判断能力の程度によって利用する制度を画一的に決めるのではなく、その本人に、現在どのような法的支援が必要なのかを考える。

その考え方は、新たに制度を利用する場面だけでなく、すでに制度を利用している人を新しい制度へどうつないでいくのかという経過措置にも表れています。

 


参考にした主な資料

  • 「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)
  • 同法附則第1条から第4条、第6条から第8条
  • 法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の概要」
  • 法務省民事局「成年後見制度の見直し 経過措置」
  • 「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(令和8年法律第46号)
  • 「民法等の一部を改正する法律案 新旧対照条文」

----------------------------------------------------------------------
中野司法書士事務所
東京都杉並区高円寺南4-28-10
高円寺リリエンハイム407
電話番号 : 03-6272-4260


杉並区で丁寧な成年後見・任意後見の相談サービス

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。