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成年後見制度は必要がなくなれば終了できる?令和8年改正の見直し・終了の仕組み

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判断能力が回復しなくても終了できる?成年後見制度改正と「必要性」の見直し【成年後見制度改正・4回】

判断能力が回復しなくても終了できる?成年後見制度改正と「必要性」の見直し【成年後見制度改正・4回】

2026/09/30

「成年後見制度は、一度始めたらやめられない」

そのように聞いたことがある人もいると思います。

 

例えば、本人の判断能力が低下しているため、遺産分割を進めるために成年後見制度を利用したとします。

遺産分割は無事に終わった。

しかし、本人の判断能力そのものは回復していない。

現在の後見・保佐では、このように制度を利用するきっかけとなった問題が解決しても、判断能力に関する要件が残っているため、具体的な保護の必要性がなくなったことだけでは制度を終了しにくいという問題が指摘されてきました。

 

令和8年改正では、この点が大きく変わります。

改正後は、

本人の判断能力が回復したか

だけではなく、

その人に、現在もその法的支援が必要なのか

を見て、要同意事項、特定補助、代理権を見直す仕組みになります。

 

そして、具体的な支援がすべて不要になり、それぞれの審判が取り消される場合には、補助開始の審判そのものも取り消さなければならない仕組みになっています。

 

ただし、

「本人や家族がやめたいと思えば、いつでも自由に終了できる」

という意味ではありません。

 

ここを正確に理解するには、改正後の民法12条の仕組みを見る必要があります。

なお、成年後見制度に関する今回の改正は、公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日に施行されることとされています。以下は、改正法施行後の新しい制度についての説明です。

 

「判断能力が回復した場合」と「支援が不要になった場合」は別に考える

改正後の民法12条では、大きく二つの場合を分けています。

 

一つは、補助制度を利用する前提となる判断能力の要件自体がなくなった場合です。

 

もう一つは、判断能力の低下は続いているものの、具体的な支援・保護の必要性がなくなった場合です。

 

この二つは、法律上の扱いが違います。

 

判断能力が回復すれば、補助開始そのものを取り消す

改正後の民法7条では、補助開始の対象を、

「精神上の理由により事理を弁識する能力が不十分である者」

としています。

民法12条1項は、この補助開始の原因が消滅したとき、家庭裁判所は、法律で定められた者などからの請求により、補助開始の審判を取り消さなければならないと定めています。

 

つまり、本人が補助開始の能力要件に該当しなくなり、そもそも補助制度の対象となる前提がなくなった場合です。

 

ここでは、

「家庭裁判所が必要だと思えば取り消せる」

という規定ではありません。

 

原因が消滅し、所定の請求があれば、

「取り消さなければならない」

という規定になっています。

 

一方、今回の改正で特に重要なのは、判断能力がそこまで回復していない場合です。

 

判断能力が回復していなくても、不要になった支援は外せる

本人が引き続き「事理を弁識する能力が不十分」であったとしても、だからといって、一度設定した支援をすべてそのまま残し続ける必要はありません。

改正後は、その支援が現在も必要なのかを見て、不要になったものを取り消すことができます。

 

要同意事項が不要になった場合

補助人の同意を必要とする行為について、その保護が不要になったと家庭裁判所が認めるときは、

要同意事項についての審判の全部または一部

を取り消すことができます。

 

したがって、複数の行為について補助人の同意が必要とされていても、すべてを一度に外す必要はありません。

必要がなくなった範囲だけを縮小することができます。

 

特定補助が不要になった場合

特定補助では、二つの場合を区別する必要があります。

 

一つは、本人がもはや「事理を弁識する能力を欠く常況」ではなくなった場合です。

この場合、法律で定められた者などからの請求があれば、家庭裁判所は特定補助人を付する旨の審判を取り消さなければなりません。

 

もう一つは、「欠く常況」という能力要件との関係とは別に、特定補助という広い取消しによる保護までは必要なくなった場合です。

この場合には、家庭裁判所は必要性を判断し、

特定補助人を付する旨の審判や、追加された取消しの対象についての審判の全部または一部

を取り消すことができます。

 

第3回で説明したように、本人の状況などが変わり、取消しによる保護が必要な行為と、そこまでの保護を必要としない行為を明確に区分できるようになれば、特定補助を取り消して、より限定された要同意事項による保護へ移ることも立法過程では想定されています。

 

部会資料33-2でも、毎年の報告などを通じて本人の状況・環境・利用可能な支援を確認し、そのような区分が可能になった場合には、特定補助から要同意事項へ移行することも可能であるとの考え方が示されています。【 部会資料33-2 民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案…】

一定期間が経過すれば自動的に移行するという意味ではなく、その時点での必要性に応じて制度を組み直すという考え方です。

 

代理権が不要になった場合

補助人に与えられた代理権も同じです。

 

例えば、ある特定の法律行為について代理権を付与していたものの、その必要がなくなれば、家庭裁判所はその代理権付与の審判の全部または一部を取り消すことができます。

一度与えた代理権が、その後ずっと残り続ける制度ではありません。

 

すべての支援が不要になれば「補助」そのものも終了する

ここは、第2回で説明した制度の入口とつながっています。

第2回では、改正後の制度について、

「補助開始の審判だけを受けて、具体的な支援は何もない」という状態は予定されていない

と説明しました。

 

補助開始の審判をするときには、

  • 要同意事項
  • 特定補助
  • 代理権

の少なくともいずれか、具体的に必要な支援の審判が伴います。

 

そして、制度の出口も同じ考え方です。

民法12条6項では、要同意事項、特定補助、代理権に関する審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は補助開始の審判も取り消さなければならないとしています。【 法律(民法等改正法)(1)】

 

つまり、

具体的に必要な法的支援が何もなくなったのに、「補助開始の審判だけ」を残す制度ではありません。

開始するときにも「何の支援が必要なのか」を考える。

制度を続けるときにも「その支援が今も必要なのか」を考える。

この二つがつながっています。

 

「判断能力が回復しなくても終了できる」の意味

ここまでを踏まえると、

「改正後は、判断能力が回復しなくても成年後見制度を終了できる」

という説明の意味も正確に見えてきます。

 

これは、本人が事理弁識能力不十分の状態にあっても、

要同意事項、特定補助、代理権という具体的な法的支援がすべて不要になり、それらの審判がすべて取り消されれば、補助開始の審判も取り消される

という意味です。

 

したがって、

「判断能力が回復していなくても、本人や家族が希望すれば自由にやめられる」

という制度ではありません。

必要性がなくなったかどうかについて、家庭裁判所による判断と審判が必要です。

それでも、本人の判断能力の状態だけを理由として制度を続けるのではなく、現在その法的支援が本当に必要なのかを問う仕組みになったことは、今回の改正の重要な点です。

 

毎年1回、補助人から家庭裁判所へ報告する

では、一度始まった制度について、必要性をどのように見直していくのでしょうか。

 

そのために重要なのが、改正後の民法876条の21です。

補助人は、家庭裁判所の定めるところにより、

毎年1回一定の時期に、本人の状況その他家庭裁判所が命ずる事項を家庭裁判所に報告しなければならない

とされています。 【法律(民法等改正法)(1)】

 

現行制度にも家庭裁判所による後見等の監督があります。

今回初めて家庭裁判所が本人の状況を確認するようになる、という話ではありません。

改正後の制度で重要なのは、毎年1回の報告を法律上明記し、その報告を支援の必要性の見直しと結び付けたことです。

 

ただし、

「毎年すべての権限を一から審査し直す」

とまで法律が定めているわけではありません。

条文上明確なのは、補助人が毎年報告し、その報告を受けた家庭裁判所が、民法12条の取消しの要件に該当する場合には、職権で取消しの審判をすることができるという仕組みが置かれたことです。【 法律(民法等改正法)(1)】

 

家庭裁判所は、報告を受けて職権で取り消すこともできる

さらに重要なのが、民法876条の21第2項です。

民法12条1項から5項までの取消しは、基本的には法律で定められた者などからの請求を前提にしています。

 

しかし、毎年の報告を受けた家庭裁判所が、民法12条1項から5項までに定める取消しの要件に該当すると判断した場合には、

職権で取消しの審判をすることができます。 【法律(民法等改正法)(1)】

 

つまり、本人や法律で定められた請求権者がその都度申立てをしなければ、不要になった支援を見直すことができない、という仕組みにはなっていません。

 

ただし、ここも表現には注意が必要です。

法律は、

「職権で取り消さなければならない」

とはしていません。

「職権で……審判をすることができる」

としています。

したがって、毎年の報告をすれば自動的に不要な権限が外れるわけでも、家庭裁判所が毎年必ず取消しをするわけでもありません。

 

「必要な期間だけ」といっても、1年ごとの更新制ではない

第1回から、この連載では今回の改正を、

「本人に必要な支援を、必要な範囲・必要な期間で行う制度への転換」

と説明してきました。

 

ここでいう「必要な期間」は、あらかじめ、

「この補助は3年間」

などと有効期限を決める意味ではありません。

 

また、

毎年1回更新しなければ終了する制度

でもありません。

 

法制審議会の中間試案では、一定の期間を定め、その期間の更新を求める仕組みや、一定期間経過後に法定後見の要件の存在について報告させる仕組みなど、複数の案が検討されていました。【 民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案の補足説明】

 

しかし、最終的に成立した法律は、期間満了による自動終了・更新制を採用していません。

成立法では、毎年の報告を受け、必要性がなくなった場合に各審判の取消しにつなげることができる仕組みが採用されています。

 

したがって、

「必要な期間だけ利用する」=「期間満了で自動的に終了する」

ではありません。

 

必要性が続いていれば制度も続く。

必要性が一部なくなれば、その部分を縮小する。

具体的な法的支援がすべて不要になり、それらの審判がすべて取り消されれば、補助開始そのものも終了する。

そのような仕組みです。

 

改正後は「終了」だけでなく「縮小」できることも重要

今回の改正を「成年後見をやめられるようになる」とだけ説明すると、制度の重要な部分を見落とします。

 

改正後は、

全部続けるか、全部やめるか

の二択ではありません。

 

要同意事項の一部だけを外すこともできます。

代理権の一部だけを取り消すこともできます。

特定補助による広い保護が不要になれば、立法過程では、より限定された要同意事項による保護へ移ることも想定されています。 【部会資料33-2 民法等(成年後見等関係)の改正に関する要綱案…】

 

そして、すべての具体的な支援が不要になれば、補助開始そのものを終了する。

 

つまり、本人の現在の状況に応じて、支援の範囲を縮小したり、形を変えたり、最終的には制度自体を終了したりできる構造になっています。

「必要な範囲」と「必要な期間」は、別々の話ではありません。

必要な支援だけを残し、その必要が続く間だけ利用する。

今回の改正では、この二つが一体となっています。

 

現在すでに後見・保佐を利用している人は別に考える必要がある

ここで、一つ注意が必要です。

ここまで説明してきたのは、改正後の新しい補助制度の基本的な仕組みです。

 

現在すでに成年後見や保佐を利用している人については、改正法の施行と同時に、この新しい補助制度へ自動的に切り替わるわけではありません。

既存の後見・保佐については、別途、経過措置が設けられています。

したがって、

「現在、遺産分割が終わったから、改正後の民法12条によって現在の成年後見をそのまま終了できる」

ということではありません。

現在利用中の後見・保佐が改正後にどう扱われるのかは、第7回で詳しく取り上げます。

 

「必要な支援を、必要な範囲・必要な期間で」が具体的な制度になった

第1回では、今回の成年後見制度改正の大きな方向として、

本人に必要な支援を、必要な範囲・必要な期間で行う

という考え方を紹介しました。

 

第2回では、その「必要な範囲」が、要同意事項、特定補助、代理権という形で具体化されていることを見ました。

 

第3回では、強い保護が必要な場合でも、現在の成年後見のような包括的代理権を当然には与えず、必要な権限を分けて考える特定補助の仕組みを取り上げました。

 

そして今回の「終了・見直し」の仕組みを見ると、「必要な期間」も単なる理念ではなく、制度として具体化されていることが分かります。

 

本人の判断能力だけを見るのではなく、

今もこの要同意事項が必要なのか。

今も特定補助による広い保護が必要なのか。

今もこの代理権が必要なのか。

を継続的に確認する。

必要でなければ縮小し、すべて不要になれば補助そのものを終了する。

改正後の法定後見制度は、そのような考え方で組み立てられています。

 

では、制度の範囲と期間を本人の必要性に合わせるだけでなく、実際に本人を支援する補助人については、本人の意思がどのように反映されるのでしょうか。

誰を補助人に選ぶのか。

本人の状況が変わったとき、補助人を交代させることはできるのか。

補助人は、本人の意向をどのように把握し、尊重しなければならないのか。

次回は、本人の意思、補助人の選任・交代・職務・報酬について取り上げます。

 


参考にした主な資料

  • 法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の概要」
  • 「民法等の一部を改正する法律案 新旧対照条文」
  • 「民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案」
  • 法制審議会民法(成年後見等関係)部会資料33-2
  • 法制審議会民法(成年後見等関係)部会資料34-2
  • 「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」
  • 法務省民事局参事官室「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」

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