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その監査役、本当に就任できますか?従業員・子会社取締役との兼任に注意

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その監査役、本当に就任できますか?従業員・子会社取締役との兼任に注意

その監査役、本当に就任できますか?従業員・子会社取締役との兼任に注意

2026/07/20

会社の監査役を変更するとき、まず確認するのは、新しい監査役の住所、氏名、就任日ではないでしょうか。

しかし、それだけでは確認が足りません。

たとえば、次のような人を監査役にしようと考えることがあります。

 

  • 会社の店舗や事務所で働いている親族
  • 会社の従業員
  • 子会社の取締役
  • 子会社で働いている家族
  • グループ会社の役員を務めている人

 

監査役になるために、税理士や公認会計士などの資格は必要ありません。

一方で、会社法は、監査役と兼任できない立場を明確に定めています。

 

会社側も候補者本人も、その制限に気付かないまま手続きを進めてしまう可能性があります。監査役変更登記における、意外に見落としやすい問題です。

この記事では、監査役になれる人と兼任できない人の違い、監査役変更登記の流れ、適任者が見つからない場合の対応について説明します。

 

目次

  1. 監査役に特別な資格は必要ない
  2. 取締役や従業員は監査役を兼任できない
  3. 親族だから監査役になれないわけではない
  4. なぜ監査役との兼任が禁止されているのか
  5. 監査役変更登記を進める流れ
  6. すでに兼任していることが分かった場合
  7. 監査役になってくれる人が見つからない場合
  8. 自分で手続きをするときに見落としやすい点

 

監査役に特別な資格は必要ありません

監査役になるために、税理士、公認会計士、司法書士などの国家資格は必要ありません。

会社法上の欠格事由に該当せず、兼任禁止にも抵触しなければ、原則として個人が監査役に就任できます。

そのため、次のような人も監査役になることができます。

 

  • 社長の配偶者
  • 親や兄弟姉妹などの親族
  • 会社の株主
  • 会社で働いていない知人
  • 外部の税理士など

 

ただし、法人は監査役にはなれません。また、一定の刑罰を受けた人など、会社法上の欠格事由に該当する人も就任できません。

重要なのは、専門資格を持っているかどうかよりも、会社から独立した立場で監査できるかという点です。

 

取締役や従業員は監査役を兼任できません

会社法第335条第2項は、監査役について、次の立場との兼任を禁止しています。

 

勤務先・所属先 監査役と兼任できない主な立場
監査役に就任する会社    取締役、支配人その他の使用人
その会社の子会社 取締役、支配人その他の使用人、会計参与、執行役   

 

ここでいう「使用人」とは、一般にいう従業員です。

正社員だけに限りません。会社との雇用関係があり、会社の指揮命令を受けて働いているのであれば、次のような人も該当します。

 

  • 店長
  • 販売員
  • 事務員
  • 工場や作業現場の責任者
  • パート
  • アルバイト

 

肩書や雇用形態だけではなく、会社との実際の関係を確認する必要があります。

したがって、会社の従業員として働き続けながら、同じ会社の監査役を兼任することはできません。

従業員を退職した後に監査役へ就任することは可能です。大切なのは、監査役への就任後も、兼任できない立場を続けていないかという点です。

 

会計監査に限定された監査役でも同じです

非公開会社では、定款によって、監査役の権限を会計に関するものに限定していることがあります。

この場合でも、兼任禁止の規定は変わりません。

「会計だけを見る監査役だから、会社で働いている親族でもよい」ということにはなりません。

会計限定監査役であっても、自社や子会社の取締役・従業員等を兼任することはできません。

 

子会社は100%出資の会社だけではありません

「子会社」というと、親会社が株式を100%保有する完全子会社を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、会社法上の子会社は、完全子会社だけではありません。

議決権の過半数を保有している会社は、原則として子会社に該当します。また、議決権の保有割合が50%以下でも、役員構成や契約関係などを通じて、会社が財務や事業の方針を実質的に支配している場合には、子会社に該当することがあります。

監査役候補者を確認するときは、100%出資の会社だけでなく、自社が経営を支配している関係会社での役職や勤務状況にも注意が必要です。

 

「子会社の役員」なら全員禁止とは限りません

子会社の役員であれば、すべて一律に兼任できないわけではありません。

会社法第335条第2項が禁止しているのは、子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人です。

子会社の監査役は、同項の禁止対象として挙げられていません。

そのため、単に「子会社の役員です」と聞くだけではなく、子会社で具体的にどの役職に就いているのかを確認する必要があります。

 

親族だから監査役になれないわけではありません

同族会社では、社長の家族や親族を監査役候補にすることがあります。

親族であること自体は、監査役になれない理由ではありません。

問題となるのは、その親族が会社又は子会社で、どのような立場にあるかです。

 

監査役との兼任に問題が生じる例

  • 会社の取締役をしている
  • 会社の店舗で販売員として働いている
  • 会社から給与を受けて事務をしている
  • 子会社の取締役をしている
  • 子会社の従業員として勤務している

 

親族でも直ちに問題にならない例

  • 会社で働いていない配偶者
  • 取締役や従業員ではない親や兄弟姉妹
  • 単に会社の株主である人
  • 以前は従業員だったが、監査役就任前に退職した人

 

ただし、「家族なので、ときどき店を手伝っている」という場合は判断が曖昧になります。

給与の有無だけで決まるわけではありません。勤務日、担当業務、会社からの指示、雇用契約の有無などを確認し、実際に従業員として勤務しているのかを判断する必要があります。

 

親族だから問題なのではありません。会社又は子会社の取締役や従業員等を兼ねていることが問題です。

 

なぜ監査役との兼任が禁止されているのでしょうか

監査役は、取締役等の職務執行や会社の会計を監査する立場です。

その監査役自身が取締役であれば、自分が行った業務を自分で監査することになります。

また、会社の従業員であれば、日常的に取締役や上司の指揮命令を受ける立場です。その人に、経営陣から独立した立場で監査することを求めるのは困難です。

監査役は、単に名前を登記簿へ載せるための役職ではありません。

会社法が兼任を禁止しているのは、監査する側と監査される側を分け、監査役の独立性を確保するためです。

 

監査役変更登記を進める流れ

監査役を変更するときは、候補者の住所、氏名、就任日だけではなく、会社との関係や現在の機関設計も確認します。

 

1.現在の登記と定款を確認する

まず、次の事項を確認します。

 

  • 取締役会設置会社か
  • 監査役設置会社か
  • 現在の監査役の任期
  • 監査役の監査範囲が会計に限定されているか
  • 定款で監査役の員数を定めているか
  • 現在の株主構成
  • 株式譲渡の承認機関がどこになっているか

 

定款が古い場合や見つからない場合には、過去の株主総会議事録や役員変更登記の内容も確認します。

 

2.新しい監査役候補者の兼職関係を確認する

候補者について、少なくとも次の点を確認します。

 

  • 自社の取締役又は従業員等ではないか
  • 子会社の取締役又は従業員等ではないか
  • 他の会社でどのような役職に就いているか
  • 自社の店舗や事務所で実際に働いていないか
  • 就任日までに兼任できない立場を退く予定があるか

 

登記簿や本人確認書類だけでは、候補者の勤務実態までは通常分かりません。

会社と候補者本人への聞き取りが重要です。

 

3.現在の監査役の退任理由と退任日を確認する

現在の監査役が退任する理由には、主に次のものがあります。

 

  • 辞任
  • 任期満了
  • 解任
  • 死亡
  • 会社の機関設計変更による退任

 

退任理由によって、必要書類や登記原因の日付が変わります。

「監査役を交代する」というだけでなく、現在の監査役がなぜ、いつ退任するのかを正確に整理しなければなりません。

 

4.監査役選任議案について同意を得る

取締役が監査役の選任議案を株主総会へ提出する場合、原則として、現在の監査役の同意が必要です。

監査役が2名以上いる場合には、その過半数の同意を得ます。監査役会設置会社では、監査役会の同意が必要です。

単に株主総会で選任すればよいわけではなく、選任議案を提出するまでの手続にも注意が必要です。

 

5.株主総会で新しい監査役を選任する

監査役は、原則として株主総会で選任します。

一般的な監査役変更では、次のような書類を作成又は準備します。

 

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 現監査役の辞任届
  • 新監査役の就任承諾書
  • 新監査役の本人確認証明書
  • 監査役選任議案についての同意書
  • 登記申請の委任状

 

必要書類は、現在の監査役の退任理由、会社の機関設計、議事録の記載内容などによって異なります。法務局も、監査役の辞任・就任に関する登記申請書や添付書面の記載例を公開しています。

 

6.役員変更登記を申請する

株式会社の役員変更登記は、原則として、変更が生じた日から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ申請します。

期限を過ぎても登記申請自体が直ちにできなくなるわけではありませんが、代表者が過料に処せられる可能性があります。

 

すでに兼任していることが分かった場合

現在登記されている監査役が、実際には会社や子会社の取締役・従業員等を兼ねていることが分かった場合でも、現在の日付で辞任届を作ればよいとは限りません。

 

まず、次の事項を確認する必要があります。

 

  • 監査役に選任された当時の役職
  • 監査役への就任承諾日
  • 取締役又は従業員になった時期
  • 従業員や取締役を退いた事実があるか
  • 過去の株主総会議事録
  • これまでの役員変更登記の内容
  • 会社と本人が兼任関係をどのように認識していたか

 

兼任禁止に抵触する状態がいつから生じていたのかによって、検討すべき登記原因や日付が変わることがあります。

「現在は問題があるから、今日付けで交代すればよい」と単純に処理せず、過去の経緯を確認してから対応を決めることが重要です。

 

監査役になってくれる人が見つからない場合

「監査役になってくれる人がいないので、会社で働いている親族に名前だけ借りよう」

このような対応は避けるべきです。

適格な監査役候補者が見つからない場合には、主に二つの方向があります。

 

適格な別の人を監査役に選任する

会社又は子会社の取締役・従業員等ではない人を探し、監査役に選任します。

外部の税理士などが候補になることもありますが、監査役に専門資格が必須というわけではありません。

会社から独立した立場で、決算書や会社の状況を確認し、必要な質問ができる人かどうかが重要です。

 

取締役会と監査役を廃止する

非公開の中小会社で、実際には取締役会を開催しておらず、監査役を維持する必要性も低い場合には、会社の機関設計そのものを見直す方法があります。

一般的な取締役会設置会社では、原則として監査役を置かなければなりません。

非公開会社が会計参与を置く場合などには例外がありますが、監査役だけを廃止して取締役会をそのまま残せるとは限りません。

実務上は、次の変更をまとめて検討します。

 

  • 取締役会設置会社の定めの廃止
  • 監査役設置会社の定めの廃止
  • 監査役の退任
  • 会計限定監査役に関する登記の整理
  • 株式譲渡の承認機関の変更
  • 代表取締役の選定方法の見直し
  • 定款の変更

 

法務局も、取締役会と監査役を廃止し、株式譲渡制限の承認機関等を変更する場合の登記申請例を公開しています。

取締役会非設置会社へ移行することは、会社を「格下げ」することではありません。

実際の会社運営に合わない機関を無理に維持するのではなく、会社を軽くして、無理なく運営できる形に整えるという選択です。

 

ただし、公開会社や大会社などでは機関設計に法律上の制約があります。すべての会社が自由に監査役を廃止できるわけではないため、会社の種類と現在の登記内容を確認する必要があります。

 

辞任届だけでは監査役を外せないことがあります

監査役が1名しかいない会社で、その監査役が辞任すると、法律又は定款で定める監査役の員数を欠くことがあります。

この場合、辞任した監査役は、後任者が就任するまで、監査役としての権利義務を引き続き有することがあります。いわゆる「権利義務監査役」です。

監査役そのものを置かない会社にするのであれば、単に辞任届を受け取るだけではなく、株主総会で定款を変更し、監査役設置会社の定めを廃止する必要があります。

 

自分で手続きをするときに見落としやすい点

監査役変更登記を自社で進める場合には、次の点に注意してください。

 

  • 候補者の住所、氏名、就任日だけを確認してしまう
  • 親族であれば監査役にできると思い込む
  • パートやアルバイトは「使用人」ではないと思ってしまう
  • 子会社を100%出資会社だけだと思っている
  • 子会社での具体的な役職を確認していない
  • 現在の監査役の任期を確認していない
  • 退任原因が辞任か任期満了かを確認していない
  • 監査役選任議案について必要な同意を得ていない
  • 監査役が辞任すれば登記から外せると思っている
  • 取締役会廃止に伴う株式譲渡承認機関の変更を見落とす
  • 役員変更登記の2週間の期限を過ぎてしまう

 

役員変更登記は、株主総会議事録と就任承諾書を作れば終わる手続きではありません。

登記申請の前に、候補者が法律上その立場を兼任できるのか、会社の定款や機関設計と矛盾しないかを確認することが重要です。

 

FAQ

Q1.社長の妻や兄弟姉妹は監査役になれますか?

親族であることだけを理由に、監査役になれないわけではありません。

ただし、その人が会社又は子会社の取締役や従業員等を兼ねている場合には問題になります。

親族関係ではなく、会社での役職や勤務実態を確認してください。

 

Q2.パートやアルバイトでも監査役との兼任は禁止されますか?

雇用形態の名称だけで判断するものではありません。

パートやアルバイトであっても、会社と雇用関係があり、会社の指揮命令を受けて働いていれば、会社法上の「使用人」に該当すると考える必要があります。

監査役就任後もその勤務を続けることはできません。

 

Q3.子会社の監査役は、親会社の監査役を兼任できますか?

会社法第335条第2項は、子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人との兼任を禁止しています。

子会社の監査役は、同項の禁止対象として挙げられていません。

そのため、子会社の監査役であるという理由だけで、親会社の監査役との兼任が一律に禁止されるわけではありません。

ただし、子会社でほかの役職や従業員としての地位も兼ねていないかを確認する必要があります。

 

Q4.監査役になってくれる人がいない場合、現在の監査役に辞任してもらえば終わりますか?

監査役の員数を欠く場合、辞任した監査役が後任者の就任まで権利義務監査役として残ることがあります。

監査役そのものを置かない会社にするのであれば、取締役会や監査役の設置に関する定款の定めを見直し、必要な変更登記を行います。

 

Q5.監査役は何人必要ですか?

一般的な監査役設置会社では、監査役は1名以上です。ただし、定款でそれ以上の員数を定めている場合は、その定めに従います。

監査役会設置会社では、監査役は3名以上必要で、その半数以上を社外監査役としなければなりません。

 

7.まとめ

監査役には、税理士や公認会計士などの特別な資格は必要ありません。

しかし、誰でも無条件に就任できるわけではありません。

自社や子会社の取締役、支配人、従業員等は、監査役との兼任が禁止されています。

親族であっても、その会社で従業員として働いている場合や、子会社の取締役を務めている場合には注意が必要です。

監査役変更を進める際は、次の点を確認しましょう。

 

  • 候補者が自社又は子会社の取締役・従業員等ではないか
  • 現在の監査役の任期と退任理由
  • 監査役選任議案について必要な同意を得ているか
  • 会社の定款と登記内容が一致しているか
  • 適任者がいない場合、機関設計を見直すべきか

 

適格な監査役が見つからない場合には、無理に名義を借りる必要はありません。

会社の実態に応じて、取締役会と監査役を廃止し、無理なく運営できる会社へ整える方法もあります。

 

監査役変更登記では、新しい監査役の住所、氏名、就任日だけでなく、会社や子会社との関係、現在の定款、役員の任期、株主構成まで確認する必要があります。

すでに監査役と取締役・従業員等を兼任している場合には、過去の選任時期や勤務関係を確認しなければ、適切な登記原因や日付を判断できないこともあります。

中野司法書士事務所では、登記簿、定款、過去の株主総会議事録などを確認し、監査役変更で進めるべきか、会社の機関設計から見直すべきかを整理したうえで手続きを進めます。

東京都杉並区、高円寺駅徒歩1分の司法書士事務所です。

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