登記簿の住所が古いままでも検索用情報を申し出られる?―単独申出には「現在の住所」を書く
2026/09/03
前回は、検索用情報の「同時申出」と「単独申出」の違いを確認しました。
では、昔から所有している不動産について検索用情報の単独申出をしようとしたところ、登記簿には10年前の住所が載ったままだった場合はどうなるのでしょうか。
「先に住所変更登記をして、登記簿を現在の住所に直さないと検索用情報を申し出られないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そうではありません。
登記簿上の住所が古いままでも、それだけを理由に検索用情報単独申出ができなくなるわけではありません。
そして、検索用情報として申し出るのは、登記簿に記録されている昔の住所ではなく、申出日現在の住所です。
ただし、登記簿に記録された古い住所と現在の住所が異なる以上、「本当に同じ人なのか」を法務局で確認する必要があります。
その確認に大きな役割を果たすのが、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)です。
今回は、登記簿上の住所や氏名が古い場合の検索用情報単独申出と、戸籍の附票等が必要になる場合について、令和7年3月3日付法務省民二第373号通達や「検索用情報の申出に関する質疑事項集」を基に整理します。
※本記事は令和8年9月現在の制度を中心に説明しています。令和8年10月5日から、「国籍等」の追加や海外居住者への検索用情報制度の拡大を含む改正が施行されます。詳細は別記事で取り上げます。
登記簿の住所が古くても検索用情報の単独申出はできる
例えば、20年前に自宅を購入したときの登記簿上の住所が、
A市B町
となっているものの、その後引っ越して、現在の住民票上の住所が、
X市Y町
となっているとします。
この場合でも、登記簿上の住所を先にX市Y町へ変更しなければ、検索用情報単独申出ができないというわけではありません。
法務省の「検索用情報の申出に関するQ&A」でも、
登記簿上の住所が古いままの場合、単独申出の申出書には現在の住所(住民票上の住所)を記載する
と案内されています。
つまり、
登記簿上の住所 A市B町
現在の住所 X市Y町
という状態のままでも、X市Y町を検索用情報として申し出ることができます。
単独申出には「申出日現在」の氏名・住所を書く
この点は、「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問25でも、さらに明確にされています。
質疑事項集では、次のような例が示されています。
所有権の登記を受けた時点では、
氏名 法務太郎
住所 A市B町
であった人が、その後、氏名・住所を変更し、検索用情報を申し出る時点では、
氏名 民事太郎
住所 X市Y町
となっていたケースです。
この場合、検索用情報申出情報の内容とするのは、昔の「法務太郎・A市B町」ではありません。
検索用情報の申出日現在の「民事太郎・X市Y町」です。
したがって、検索用情報単独申出では、
「登記簿に何と記録されているか」
ではなく、
「申出日現在の氏名・住所は何か」
を基準に検索用情報を申し出ます。
氏名・住所等については、原則として住民票に記載又は記録された表記によります。
氏名についても住所と同じ考え方です。
結婚・離婚などにより登記後に氏名が変わっていたとしても、登記簿上の旧氏名を検索用情報として申し出るのではなく、申出日現在の氏名を申し出ます。
検索用情報の単独申出と住所等変更登記は別の手続
ここは重要です。
検索用情報単独申出に現在の住所を書いたからといって、それだけで登記簿上の住所が現在の住所へ変更されるわけではありません。
検索用情報単独申出は、検索用情報を検索用情報管理ファイルに記録し、将来の職権による住所等変更登記につなげるための前提となる手続です。
住所等変更登記そのものとは別の手続です。
そのため、
「単独申出にX市Y町と書いたので、登記簿もA市B町からX市Y町に変わった」
ということにはなりません。
スマート変更登記では、検索用情報を基に法務局が住基ネットを照会し、氏名・住所の変更を確認した場合、本人の了解を得た上で職権による住所等変更登記が行われます。
法務省の現在の案内でも、自然人については、
検索用情報の申出
→ 定期的な住基ネット照会
→ 住所・氏名の変更を確認
→ 本人の了解
→ 職権による変更登記
という流れが示されています。
単独申出と同時に、職権変更登記について申し出る方法もある
ここには、令和8年4月1日以降の制度について一つ補足があります。
現在は、所有権の登記名義人の氏名または住所に既に変更がある場合、検索用情報単独申出と同時に、その変更について不動産登記法第76条の6ただし書の申出をすることができます。
令和8年3月27日付法務省民二第525号通達でも、この仕組みが明記されています。
したがって、
「検索用情報単独申出をすれば必ずその場で住所等変更登記まで行われる」
わけではありませんが、
検索用情報単独申出と同時に、既に生じている住所・氏名の変更について、職権による住所等変更登記のための申出をする方法もある
ということです。
この「検索用情報単独申出と併せてする職権による住所等変更登記」の具体的な手続は、後の回でスマート変更登記の実行手続を取り上げる際に詳しく確認します。
売却や抵当権抹消をすぐ行う場合は別途住所等変更登記が必要
検索用情報を既に申し出ているからといって、登記簿上の住所がまだ古いままでも、そのまま不動産を売却できるというわけではありません。
法務省の「スマート変更登記」のQ&Aでは、検索用情報を申し出た後も登記簿上の住所等が現在の住所等へ変更されていない状態で、
- 不動産の売却による所有権移転登記
- 抵当権の抹消登記
などを今すぐ行う必要がある場合について説明しています。
これらの手続では、所有者の現在の住所等と登記簿上の住所等が一致している必要があります。
そのため、職権による住所等変更登記がまだ行われていないのであれば、別途、自分で住所等変更登記を申請する必要があります。
検索用情報を申し出ていることと、登記簿上の住所が既に現在住所へ変更されていることは、分けて考える必要があります。
登記簿の古い住所と現在の住所が違う場合、どうやって同じ人だと確認する?
登記簿上の住所がA市B町なのに、検索用情報としてX市Y町を申し出ることができるとしても、法務局には確認すべき問題があります。
それは、
「A市B町の登記名義人」と「X市Y町の申出人」が本当に同じ人なのか
ということです。
令和7年3月3日付法務省民二第373号通達では、検索用情報単独申出について、現在の検索用情報を証する情報を提供する仕組みを定めています。
さらに、申出日現在の氏名・住所が登記簿上の氏名・住所と異なる場合には、その氏名・住所の変更があったことを証する戸籍の附票の写し等が問題になります。
ただし、登記簿と現在住所が違えば必ず戸籍の附票を取得しなければならないわけではありません。
ここで住基ネットが重要になります。
住基ネットで「現在の情報」と「変更のつながり」を確認できれば附票等は不要
373号通達では、登記簿上の氏名・住所と、検索用情報として申し出る現在の氏名・住所が異なる場合について、住基ネットによる確認の仕組みを設けています。
登記官が住基ネットによって、
①申出日現在の検索用情報と合致する本人の情報
と、
②登記簿上の氏名・住所から現在の氏名・住所へ変更されたこと
の双方を確認できるのであれば、それらを証する住民票の写しや戸籍の附票の写し等を別途提供する必要はありません。373号通達は、この2つの住基ネット情報を確認できる場合には添付情報の提供を要しないと明記しています。
例えば、
登記簿 A市B町
↓
転居
↓
現在 X市Y町
という住所変更の流れを法務局が住基ネットで確認できるのであれば、本人が戸籍の附票等を取得して、その住所変更の経緯を証明する必要はないということです。
この仕組みは、検索用情報単独申出の実務上かなり重要です。
住基ネットで確認できなければ戸籍の附票等が必要
では、住基ネットで登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを確認できない場合はどうなるのでしょうか。
この場合には、そのつながりを確認することのできる書類を提供する必要があります。
「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問32では、例として、
- 戸籍の附票の写し
- 戸除籍謄抄本
- 本籍の記載のある住民票の写し
などが挙げられています。
したがって、
登記簿上の住所と現在住所が違う
→ 必ず戸籍の附票が必要
なのではありません。
正確には、
登記簿上の氏名・住所と現在の氏名・住所が違う
→ 住基ネットでその変更のつながりを確認できるか
→ 確認できれば、変更のつながりを証する書類を別途提供する必要はない
→ 確認できなければ、戸籍の附票等が必要
という順序で考えることになります。
本人確認書類の住所が登記簿と違っていても直ちに申出できないわけではない
検索用情報単独申出では、申出人本人であることを確認するため、身分証明書の写し等を提供する仕組みがあります。
では、運転免許証などの本人確認書類に記載された住所が、登記簿上の住所と違っていたらどうなるのでしょうか。
これについて、質疑事項集の問30では、本人確認書類に記載された氏名・住所が、登記簿上の氏名・住所や検索用情報として申し出る氏名・住所と合致していない場合であっても、戸籍の附票の写し等や住基ネット情報によって氏名・住所のつながりを確認できるのであれば認められるとされています。
したがって、
「運転免許証の住所と登記簿の住所が違うから単独申出はできない」
と単純に考える必要はありません。
本人確認書類の具体的な種類や、郵送・オンライン申出の場合の提供方法については、後の回で詳しく取り上げます。
行政区画の変更だけなら証明書が不要な場合がある
さらに、少し特殊な取扱いもあります。
例えば、本人が引っ越したわけではないものの、市町村合併などによって住所の行政区画が変更された場合です。
質疑事項集の問33では、住基ネットで確認できない住所変更であっても、その変更が地番の変更を伴わない行政区画の変更によるものである場合には、登記申請の場合と同様、その変更を証する情報を提供する必要はないとされています。
したがって、「登記簿上の住所と現在の住所の表記が違う」というだけで、常に変更経緯を証する書類が必要になるわけではありません。
古すぎて戸籍の附票が廃棄されていたら?
さらに難しいのが、非常に古い住所変更です。
住基ネットでは住所のつながりを確認できず、しかも、その住所変更を証明する戸籍の附票等も既に廃棄されていたらどうなるのでしょうか。
質疑事項集の問34では、この場合について、
申出人と所有権の登記名義人が同一人であることを確認できる他の書面、例えば登記済証等によることも「認められ得る」
とされています。
ここは注意が必要です。
「戸籍の附票がなければ登記済証で必ず代用できる」
という意味ではありません。
質疑事項集が示しているのは、あくまで、他の書面によることも「認められ得る」という取扱いです。
具体的な案件では、登記簿上の住所から現在住所までの経緯や、残っている資料を踏まえて判断する必要があります。
では、住基ネットで過去の住所をどこまで確認できる?
ここまで見てくると、次の疑問が出てきます。
「そもそも住基ネットでは、何年前の住所変更まで確認できるのか?」
という問題です。
質疑事項集の問32では、この点について非常に具体的な説明がされています。
一つの重要な目安になるのが、
平成22年10月5日
です。
質疑事項集では、変更の日が平成22年10月5日以降であれば、通常、戸籍の附票等の提出は不要とされています。
しかし、これは、
「平成22年10月5日より前なら必ず書類が必要」
「平成22年10月5日以降なら絶対に不要」
という単純な線引きではありません。
同一市町村内での転居や氏名変更では、それより前の変更であっても住基ネットで確認できる場合があります。
また、住所地の市町村の住基ネット接続日等によっても異なり得ます。
質疑事項集自身も、具体例を示した上で「例外もあり得る」としています。
質疑事項集には、
- 市町村をまたいで何度も転居したケース
- 同一市町村内の転居を含むケース
- 氏名変更を含むケース
という3つの具体例まで示されています。
なぜ「平成22年10月5日」が一つの重要な目安になるのでしょうか。
まとめ―古い登記簿でも、検索用情報には「今の自分」を申し出る
検索用情報単独申出では、登記簿上の氏名・住所が古いままでも、それだけを理由に申出ができなくなるわけではありません。
申し出るのは、所有権の登記を受けた当時の氏名・住所ではなく、申出日現在の氏名・住所です。
そして、登記簿上の氏名・住所と現在の氏名・住所が違う場合には、その両者が同じ人であることと、変更のつながりを確認する必要があります。
この確認を住基ネットで行うことができれば、住民票の写しや戸籍の附票の写し等を別途提供しなくてもよい場合があります。
一方、住基ネットでつながりを確認できない場合には、戸籍の附票の写し、戸除籍謄抄本、本籍の記載のある住民票の写し等によって変更のつながりを確認する必要があります。
また、検索用情報単独申出は、それ自体が住所等変更登記ではありません。
検索用情報を申し出ただけで、当然にその場で登記簿上の住所が書き換えられるわけではないという点にも注意が必要です。
もっとも、令和8年4月1日以降は、既に氏名・住所に変更がある場合に、検索用情報単独申出と同時に、その変更について不動産登記法第76条の6ただし書の申出をすることもできます。令和8年3月27日付525号通達は、この併用を明記しています。
そして、住基ネットで住所や氏名の変更をどこまでさかのぼって確認できるかについては、変更がいつ行われたのかが重要になります。
特に一つの目安となるのが、平成22年10月5日です。
では、なぜこの日なのでしょうか。
次回は、「なぜ平成22年10月5日が重要なのか?―住基ネットと戸籍の附票が必要になる境界」をテーマに、平成27年10月5日の住基ネット情報の保存期間150年化、平成14年8月5日の住基ネット稼働日との関係まで含め、質疑事項集に示された3つの具体例から詳しく確認します。
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