中野司法書士事務所

検索用情報とは?なぜ生年月日・メールアドレスを法務局に知らせる?―スマート変更登記の仕組み

お問い合わせはこちら

検索用情報とは?なぜ生年月日・メールアドレスを法務局に知らせる?―スマート変更登記の仕組み

検索用情報とは?なぜ生年月日・メールアドレスを法務局に知らせる?―スマート変更登記の仕組み

2026/09/01

令和8年4月1日から、不動産の所有権登記名義人は、住所や氏名等が変わった場合、原則として変更から2年以内に住所変更登記・氏名変更登記を申請することが義務付けられています。

この義務化による所有者の負担を軽減するための仕組みとして整備されたのが、法務局が一定の条件の下で住所や氏名の変更を把握し、職権で変更登記を行う「スマート変更登記」です。

その前提となるのが、今回取り上げる「検索用情報の申出」です。

検索用情報として法務局に知らせるものの中には、住所や氏名だけでなく、生年月日やメールアドレスも含まれます。

そこで、

「住所変更登記のためなのに、なぜ生年月日まで知らせるのか」

「メールアドレスまで法務局に知らせるのはなぜか」

「生年月日やメールアドレスが登記簿に載って、他人から見られることはないのか」

と疑問に思う方もいるでしょう。

 

実は、生年月日とメールアドレスは、同じ目的で集められているわけではありません。

令和7年3月3日付法務省民二第373号通達では、氏名・振り仮名等・住所・生年月日は住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の情報を検索するため、メールアドレスはその後、職権で変更登記をすることについて所有者本人の了解を得るための連絡に使用するためと、それぞれの役割が分けられています。

 

今回は、「検索用情報とは何か」という制度の入口を、法令、法務省通達、「検索用情報の申出に関する質疑事項集」まで確認しながら整理します。

※本記事は令和8年9月現在の制度を中心に説明しています。令和8年10月5日から検索用情報制度が改正され、「国籍等」が追加されるなどの変更があります。この改正については、本連載の別記事で詳しく取り上げます。

 

検索用情報とは何か

個人の所有権登記名義人について行われるスマート変更登記の基本的な流れは、大きく見ると、

 

検索用情報の申出
→ 法務局が住基ネットを照会
→ 住所・氏名の変更を確認
→ 所有者本人の了解を確認
→ 法務局が職権で住所等変更登記

 

というものです。

この最初の段階で必要になるのが「検索用情報」です。

令和7年3月3日付法務省民二第373号通達によれば、個人の所有権登記名義人について、あらかじめ住基ネット情報を検索するために必要な情報の申出を受け、その情報を用いて定期的に住基ネットから情報提供を受けます。

その結果、登記簿上の氏名や住所に変更があったことが確認されれば、本人の了解を得たうえで、職権による住所等変更登記につなげる仕組みです。

つまり、検索用情報は単なる「法務局への連絡先登録」ではありません。

所有権登記名義人の住基ネット情報を検索し、住所や氏名の変更を確認して、職権による変更登記につなげるための基礎となる情報です。

検索用情報の申出制度は、住所等変更登記の義務化が始まった令和8年4月1日より前の、令和7年4月21日から開始されています。

なお、令和8年9月現在、検索用情報の同時申出・単独申出には、国内に住所を有することを前提とする規定があります。この国内住所要件については、令和8年10月5日の改正で変更されます。

また、法人が所有する不動産については、個人とは異なり会社法人等番号を利用する仕組みがあります。

法人については、既に公開している「法人所有不動産のスマート変更登記」の記事で詳しく説明しています。

 

法務局へ申し出る検索用情報は何?

令和8年9月現在の制度では、国内に住所を有する個人について申し出る検索用情報は、次の5項目です。

 

検索用情報 主な用途
氏名 住基ネット情報の検索

氏名の振り仮名

(外国人はローマ字氏名)  

住基ネット情報の検索
住所 住基ネット情報の検索
出生の年月日 住基ネット情報の検索
電子メールアドレス

職権による住所等変更登記について 

本人の了解を得るための連絡

 

ここで重要なのは、生年月日とメールアドレスでは用途が違うことです。

氏名、氏名の振り仮名またはローマ字氏名、住所、生年月日は、住基ネット情報を検索するために使用されます。

これに対し、メールアドレスは住基ネット検索には使われません。

住基ネットから住所や氏名の変更が確認された後、法務局が職権で変更登記をすることについて、所有者本人の了解を得るための連絡に使用されます。

 

「申し出る情報」と「検索用情報管理ファイルに記録される情報」は同じではない

ここは少し専門的ですが、検索用情報制度を正確に理解するうえで重要です。

本人が申し出る検索用情報は、先ほどの5項目です。

しかし、法務大臣が備える「検索用情報管理ファイル」には、この5項目だけが記録されるわけではありません。

令和7年3月3日付法務省民二第373号通達と不動産登記規則では、令和8年10月5日の改正前について、検索用情報管理ファイルに次の6種類の事項を記録するとされています。

 

検索用情報管理ファイルに記録される事項 主な用途
氏名 住基ネット情報の検索
氏名の振り仮名・ローマ字氏名 住基ネット情報の検索
住所 住基ネット情報の検索
出生の年月日 住基ネット情報の検索
電子メールアドレス

職権変更登記について本人の了解 

を得るための連絡

所有権登記名義人として記録されている

登記記録を特定するために必要な事項

登記簿上の氏名・住所の確認

や職権による住所等変更登記

 

最後の「登記記録を特定するために必要な事項」は、本人が申し出る5項目とは性質が異なります。

373号通達では、その具体例として、所有権登記名義人として記録されている不動産の不動産所在事項等が挙げられています。

つまり、検索用情報管理ファイルでは、氏名や生年月日などの人物に関する情報だけでなく、その所有者について、どの登記記録を確認する必要があるのかを特定するための情報も併せて管理されます。

 

したがって、

「本人が申し出る検索用情報」

と、

「検索用情報管理ファイルに記録される情報全体」

は、厳密には同じではありません。

 

氏名・住所・生年月日等は住民票の表記どおり正確に申し出る

検索用情報は住基ネットを検索するために使用されるため、その表記も重要です。

「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問2では、申出をする氏名、住所等について、住民票に記載または記録された表記のとおり検索用情報管理ファイルに記録する必要があることが確認されています。

373号通達でも、氏名、氏名の振り仮名またはローマ字氏名、住所、生年月日について、住基ネット検索に使用する情報であることが示されています。

したがって、本人が日常的に使っている表記を自由に申し出るのではなく、住民票上の情報と正確に対応させることが重要です。

なお、メールアドレスは住民票に記載される情報ではなく、これとは別の取扱いです。

 

外国人の氏名には実務上の取扱いもある

外国人については、日本人の「氏名の振り仮名」に対応して、原則としてローマ字氏名を申し出る仕組みがあります。

さらに、質疑事項集の問3では、住民票に本国漢字氏名と通称名の両方が記載されている人が、通称名によって所有権登記をしている場合についても取扱いが示されています。

この場合には、通称名とその振り仮名を申し出ることになり、本国漢字氏名や、それに対応するローマ字氏名を申し出る必要はないとされています。

これは、登記上の氏名が通称名である場合について示された具体的な実務上の取扱いです。

 

なぜ生年月日まで法務局に知らせるのか

検索用情報の中で、特に気になるのが生年月日ではないでしょうか。

所有者の住所を変更する登記なのに、なぜ法務局が生年月日まで取得する必要があるのでしょうか。

373号通達は、この点について明確にしています。

氏名、氏名の振り仮名またはローマ字氏名、住所、出生の年月日は、登記官が所有権登記名義人の住基ネット情報を検索するための情報です。

したがって、生年月日は、所有者の生年月日を新たに登記簿へ記載するために取得するものではありません。

スマート変更登記の前提となる住基ネット検索に使用する情報です。

なお、「なぜ生年月日なのか」という理由について、373号通達が明示しているのは、あくまで「住基ネット情報を検索するため」という用途です。

そのため、本記事でも、通達に記載されていない理由を推測して説明するのではなく、まずこの制度上の用途を正確に押さえておきます。

 

メールアドレスは住基ネット検索には使わない

一方、メールアドレスの役割は、生年月日とは異なります。

法務局が住基ネットを検索する際に使用するのは、氏名、振り仮名等、住所、生年月日であり、メールアドレスは住基ネットの検索キーではありません。

住基ネットから住所や氏名の変更情報を取得した後、法務局が職権で住所等変更登記をすることについて、本人の了解を得るための連絡に使用されます。

 

つまり、

生年月日等は「住基ネットで変更の有無を確認するため」

メールアドレスは「変更が確認された後、本人へ連絡するため」

という役割の違いがあります。

 

登録するメールアドレスは「本人のみが現に利用するもの」

検索用情報として申し出るメールアドレスなら、家族のメールアドレスでもよいのでしょうか。

373号通達では、メールアドレスについて、「所有権の登記名義人となる者のみが現に利用するもの」とされています。

したがって、原則として、家族のメールアドレスを本人の代わりに申し出ることはできません。

 

質疑事項集の問7では、複数の共有者が検索用情報を同時に申し出た際、それぞれが同じメールアドレスを申し出た場合には、「本人のみが現に利用するもの」ではないことが明らかであるとして、申請人または代理人に修正を求めるのが相当とされています。

373号通達では、このメールアドレスを、職権による住所等変更登記について本人の了解を得るための連絡に使用するとしています。

メールアドレスの変更・削除や認証キーなどについては、後の回で改めて詳しく取り上げます。

 

メールアドレスを持っていても、ほとんど使わない場合は?

ここには少し意外な取扱いがあります。

質疑事項集の問5では、電子メールアドレスを持っていても、ほとんど利用しておらず、法務局から職権変更登記について了解を求めるメールが届いても気付かない可能性があるような事情がある人については、「電子メールアドレスを有しない者と同視できる」とされています。

その場合には、「電子メールアドレスを有しない」旨を申請情報・申出情報の内容とするよう案内して差し支えないとされています。

 

したがって、

「メールアドレスを持っている人は、必ずそのアドレスを申し出なければならない」

と一律に考えるのは正確ではありません。

もっとも、単に登録したくないから自由に省略してよいという意味でもありません。

質疑事項集が示しているのは、メールをほとんど利用しておらず、法務局からの意思確認のメールに気付かない可能性があるような事情がある場合です。

 

メールアドレスを書かなければ登記できない?

これも少し注意が必要です。

質疑事項集の問6では、メールアドレスも、「電子メールアドレスを有しない」旨も申請情報等に記載されていない場合、まず申請人・申出人または代理人に対して、メールアドレスを申し出るよう促す取扱いが示されています。

一方、その促しに応じない場合や、電子メールアドレスを有しない旨の回答があった場合には、申請書等の余白にその旨を記載したうえで、メールアドレス以外の検索用情報を検索用情報管理ファイルに記録する取扱いが示されています。

 

したがって、検索用情報同時申出を伴う登記申請について、

「メールアドレスを書かなければ、それだけで所有権移転登記そのものができない」

という制度ではありません。

では、メールアドレスだけでなく、検索用情報そのものを申し出なかった場合、所有権移転登記等はどうなるのでしょうか。

これは「同時申出」と「単独申出」の違いとともに、次回詳しく説明します。

 

検索用情報管理ファイルの保存期間は「永久」

検索用情報について、もう一つ注目したいのが保存期間です。

不動産登記規則第158条の38第3項では、検索用情報管理ファイルに記録された情報の保存期間は「永久」とされています。

373号通達にも、同じことが明記されています。

ただし、「保存期間が永久」ということと、一度登録したメールアドレスを変更・削除できないということは別問題です。

 

メールアドレスについては、

  • 変更
  • 削除
  • 新規登録

のための手続が別に設けられています。

 

この手続や認証キーの仕組みについては、後の回で詳しく確認します。

 

生年月日やメールアドレスは他人に見られる?

生年月日やメールアドレスまで法務局に申し出ると聞けば、

「登記事項証明書を取れば、誰でも私の生年月日やメールアドレスを見ることができるのではないか」

と心配になる方もいるでしょう。

ここは、「公開される」「非公開」と単純に二つに分けるより、登記記録そのものと、登記申請に関する書類とを分けて考える必要があります。

 

登記事項証明書に生年月日やメールアドレスが載るわけではない

まず、生年月日やメールアドレスは、所有権登記名義人について新たに登記簿へ公示するための事項ではありません。

法務省が公表している「スマート変更登記の手続イメージ(自然人の場合)」でも、検索用情報をシステム内部に記録することを示したうえで、「氏名・ローマ字氏名・住所以外は公示されない」とされています。

したがって、生年月日やメールアドレスが登記事項証明書に表示され、一般の第三者が通常の登記情報として確認できるようになるわけではありません。

また、質疑事項集の問21では、電子メールアドレスなど、登記記録に記録されない検索用情報については、登記申請に係る登記完了証にも記載されないことが確認されています。

 

ただし「同時申出」では登記の申請情報には含まれる

もっとも、

「登記事項ではない」

ということと、

「登記申請に関する情報のどこにも記載されない」

ということは同じではありません。

所有権移転登記などと一緒に検索用情報を申し出る「検索用情報同時申出」では、検索用情報を登記の申請情報に含めて申し出ます。

そのため、生年月日やメールアドレスについては、登記簿に公示されるかという問題とは別に、登記申請書等の閲覧との関係を考える必要があります。

この点について、「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問46が具体的な取扱いを示しています。

 

第三者が附属書類を閲覧するときは生年月日・メールアドレスをマスキング

不動産登記法では、一定の場合に登記簿の附属書類を閲覧する制度があります。

申請人以外の第三者が不動産登記法第121条第3項に基づいて附属書類の閲覧を求める場合、閲覧できるのは「正当な理由があると認められる部分」に限られます。

質疑事項集の問46では、検索用情報のうち、出生の年月日と電子メールアドレスについては、一般に「正当な理由がある」とは認められないとされています。

そのため、申請書の他の部分について閲覧を認める場合であっても、生年月日やメールアドレスを閲覧できないよう、マスキング用テープの貼付等の措置を講ずるのが相当とされています。

 

整理すると、

登記事項証明書には載らない。
ただし、同時申出では登記の申請情報には含まれる。
そこで、第三者による附属書類閲覧の際には、生年月日・メールアドレスを見せないための取扱いが定められている。

という構造です。

 

単に「検索用情報は非公開です」と説明するより、このように分けて考えた方が正確です。

なお、自己を申請人とする登記記録について、自分で附属書類を閲覧する場合には、「正当な理由」の要件がないため、出生年月日やメールアドレスをマスキングする必要はないとされています。

 

「単独申出」の申出書は附属書類閲覧の対象ではない

さらに、既に所有権登記名義人となっている人が、登記申請とは別に行う「検索用情報単独申出」については扱いが異なります。

質疑事項集の問46では、検索用情報単独申出は登記申請から独立した申出であり、検索用情報申出書及び検索用情報申出添付書面は登記簿の附属書類に該当しないとされています。

そのため、不動産登記法に基づく附属書類の閲覧請求によって閲覧することはできません。

「同時申出」と「単独申出」という二つの手続の違いは、次回改めて詳しく説明します。

 

令和8年10月5日から検索用情報制度が変わります

ここまで説明してきたのは、令和8年9月現在の制度です。

しかし、令和8年3月31日に公布された令和8年法務省令第23号により、令和8年10月5日から検索用情報制度が改正されます。

大きな変更の一つが、検索用情報等への「国籍等」の追加です。

 

また、現在は検索用情報の同時申出・単独申出について国内に住所を有する自然人を前提とする規定がありますが、10月5日の改正後は、国内に居住しているかどうかを問わず検索用情報の申出をする仕組みへと改められます。

したがって、海外に住所を有する所有権登記名義人についても、検索用情報の申出制度そのものの対象は拡大されます。

 

ただし、このことから直ちに、

「海外居住者についても、国内居住者と全く同じように住基ネットを利用したスマート変更登記が行われる」

と結論付けることはできません。

住基ネットを利用した職権変更登記の仕組みと、検索用情報を申し出ることができる範囲とは分けて考える必要があります。

「国籍等」とは何を意味するのか、どのような資料で国籍等を証明するのか、海外居住者についてその後どのような運用になるのかについては、令和8年10月5日の施行前後に公表・更新される通達やQ&A等も確認したうえで、本連載の別記事で詳しく取り上げます。

 

まとめ―検索用情報はスマート変更登記を動かすための基礎情報

検索用情報は、単に法務局へ住所や連絡先を登録する制度ではありません。

個人の所有権登記名義人について、法務局が住基ネットを利用して住所・氏名の変更を確認し、本人の了解を得て職権による変更登記につなげる「スマート変更登記」の基礎となる情報です。

 

令和8年9月現在、国内に住所を有する個人について申し出る検索用情報は、

 

  • 氏名
  • 氏名の振り仮名またはローマ字氏名
  • 住所
  • 生年月日
  • メールアドレス

 

の5項目です。

このうち、氏名・振り仮名等・住所・生年月日は住基ネット情報の検索に使用され、メールアドレスは、その後の本人への意思確認の連絡に使用されます。

さらに、検索用情報管理ファイルには、この5項目だけでなく、所有権登記名義人として記録されている登記記録を特定するための情報も記録され、その保存期間は「永久」とされています。

 

一方、生年月日やメールアドレスを申し出たからといって、これらが登記事項証明書に掲載されて一般公開されるわけではありません。

同時申出の場合には登記の申請情報には含まれますが、第三者による附属書類閲覧では、生年月日やメールアドレスを閲覧できないようマスキングする取扱いまで示されています。

 

そして令和8年10月5日からは、「国籍等」が追加され、海外居住者についても検索用情報の申出制度の対象が広がります。

 

では、検索用情報はいつ、どのように申し出るのでしょうか。

所有権移転登記などと一緒に行う「同時申出」と、既に所有者となっている人が登記申請とは別に行う「単独申出」では、手続の仕組みが異なります。

次回は、「検索用情報の同時申出と単独申出は何が違う?」をテーマに、どの登記で申出が必要になるのか、申出をしなかった場合に所有権登記そのものがどう扱われるのかまで、通達と質疑事項集を基に詳しく確認します。

----------------------------------------------------------------------
中野司法書士事務所
東京都杉並区高円寺南4-28-10
高円寺リリエンハイム407
電話番号 : 03-6272-4260


杉並区で選ばれる不動産登記・名義変更業務

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。