中野司法書士事務所

検索用情報の「同時申出」と「単独申出」は何が違う?―申出をしないと所有権移転登記は却下される?

お問い合わせはこちら

検索用情報の「同時申出」と「単独申出」は何が違う?―申出をしないと所有権移転登記は却下される?

検索用情報の「同時申出」と「単独申出」は何が違う?―申出をしないと所有権移転登記は却下される?

2026/09/02

前回は、住所・氏名変更登記の「スマート変更登記」の前提となる検索用情報とは何かを取り上げました。

では、その検索用情報は、いつ法務局へ申し出るのでしょうか。

 

検索用情報の申出には、大きく分けて、

「検索用情報同時申出」

と、

「検索用情報単独申出」

の2つがあります。

 

簡単に分ければ、所有権移転登記などを申請するときに、その登記申請と一緒に検索用情報を申し出るのが「同時申出」、既に所有権の登記名義人となっている人が、登記申請とは別に検索用情報だけを申し出るのが「単独申出」です。

 

ただし、

「不動産を取得するときは必ず同時申出」

「既に不動産を持っている人は単独申出」

とだけ理解すると、正確ではありません。

同時申出の対象となる登記は決められていますし、新たに所有者になる人であっても、その人自身が登記の申請人でなければ、その人について同時申出をすることはできません。

 

さらに、検索用情報は制度上「申し出るもの」とされているにもかかわらず、申出をしなかった場合でも、それだけを理由に所有権移転登記等そのものが却下される取扱いにはなっていません。

 

今回は、令和7年3月3日付法務省民二第373号通達と「検索用情報の申出に関する質疑事項集」を基に、この少し分かりにくい仕組みを整理します。

※本記事は令和8年9月現在の制度を中心に説明しています。令和8年10月5日から、海外居住者への検索用情報制度の拡大や「国籍等」の追加を含む改正が施行されます。詳細は別記事で取り上げます。

 

検索用情報には「同時申出」と「単独申出」がある

まず、2つの違いを大まかに整理してみます。

 

  同時申出 単独申出
基本的な場面 一定の所有権の登記の申請と同時 既に所有権の登記名義人である人が別に申出 
手続 登記の申請情報に検索用情報を含める 登記申請とは独立して申出
対象者

対象登記によって所有権の登記名義人となる申請人 

(現行制度では国内に住所を有する者)

現在の所有権の登記名義人

(現行制度では国内に住所を有する者)

登録免許税 申出自体にはかからない 申出自体にはかからない

 

同時申出と単独申出は、単に「登記と一緒にするか、後からするか」というだけの違いではありません。

それぞれ対象となる人や手続が異なります。

 

どの登記で「同時申出」をするのか

令和7年3月3日付法務省民二第373号通達では、検索用情報同時申出の対象となる登記を限定しています。

令和8年9月現在、所有権の登記名義人となる者がその登記の申請人であり、国内に住所を有する場合に、次の登記が対象となります。

 

  1. 所有権保存登記
  2. 所有権移転登記
  3. 一定の合体による登記等
  4. 所有権更正登記のうち、その登記によって所有権の登記名義人となる者がある場合

 

一般の方に身近なのは、所有権保存登記と所有権移転登記でしょう。

例えば、新築した建物について初めて所有権の登記をする場合には所有権保存登記、不動産を売買・贈与・相続などによって取得する場合には所有権移転登記が行われます。

こうした対象登記について、申請人が所有権の登記名義人となる場合には、その登記申請の申請情報に検索用情報を含めて申し出ることになります。

 

逆に、「所有権に関係する登記なら何でも同時申出の対象」というわけではありません。

例えば、抵当権設定登記や抵当権抹消登記、既に所有権の登記名義人となっている人の住所変更登記などが、それだけで検索用情報同時申出の対象になるわけではありません。

 

所有権の登記を抹消して、以前の所有者が再び名義人になる場合は?

質疑事項集には、さらに実務的な例があります。

検索用情報管理ファイルに記録されていない人が、所有権の登記の抹消によって再び所有権の登記名義人となる場合です。

所有権の登記の抹消は、検索用情報同時申出の対象となる登記ではありません。

そのため、この人について検索用情報管理ファイルへの記録を受けるには、登記の抹消によって再び所有権の登記名義人となった後、検索用情報単独申出をすることになります。

この例からも、「所有者になる登記なら何でも同時申出」という制度ではないことが分かります。

 

所有者になる人でも「申請人」でなければ同時申出できない

ここは実務上かなり重要です。

373号通達では、同時申出について、

所有権の登記名義人となる者が、その登記の申請人である場合

に限るとしています。

つまり、新たに所有権の登記名義人になる人なら、誰についてでも検索用情報を同時に申し出られるわけではありません。

 

ある人が登記申請をした結果、その登記申請の申請人ではない別の人も所有権の登記名義人となる場合があります。

373号通達は、その例として代位による登記申請等を挙げています。

このような場合、申請人ではない新しい所有権の登記名義人について、その登記申請に検索用情報を含めて同時申出をすることはできません。

ただし、その人が検索用情報を申し出られなくなるわけではありません。

所有権の登記が完了し、その人が現在の所有権の登記名義人となった後に「検索用情報単独申出」をすることができます。

ここは、

「所有者になるか」だけではなく、「その人自身が登記申請人か」

まで確認する必要があります。

 

相続登記でも注意が必要

相続による所有権移転登記も、同時申出の対象となり得ます。

ただし、相続人が複数いる場合などには、所有権の登記名義人となる人と、実際の登記申請人が一致しないことがあります。

例えば、ある相続人が申請した相続登記によって、その申請人ではない別の相続人も所有権の登記名義人となる場合です。

このような場合には、申請人ではない相続人について、その登記申請と同時に検索用情報を申し出ることはできません。

その相続人は、所有権の登記が完了した後に単独申出をすることができます。

したがって、「相続登記をすれば、新しく所有者になった相続人全員について検索用情報も当然に申し出られる」と考えるのは正確ではありません。

 

既に所有権の登記名義人なら「単独申出」ができる

では、以前から不動産を持っている人はどうすればよいのでしょうか。

例えば、20年前から自宅を所有しており、令和7年4月21日の検索用情報制度開始後に、新たな所有権取得の登記をしていない人です。

このような人は、検索用情報を申し出るためだけに、新たな所有権移転登記などが発生するのを待つ必要はありません。

登記申請とは別に、検索用情報だけを申し出る「検索用情報単独申出」をすることができます。

 

令和8年9月現在の制度では、国内に住所を有する現在の所有権の登記名義人が単独申出をすることができます。

ここで重要なのは「現在の所有権の登記名義人」という点です。

「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問22では、仮登記の登記名義人、所有権以外の登記名義人、表題部所有者、担保権の登記における債務者、信託の登記における委託者・受託者等は、検索用情報単独申出の対象ではないとされています。

つまり、不動産の登記記録に名前が載っている人なら誰でも単独申出ができるわけではありません。

あくまで「現在の所有権の登記名義人」を対象とする制度です。

なお、他人から依頼を受けて、業として検索用情報単独申出の手続を代理することができる者について、質疑事項集問23では、弁護士または司法書士に限られることも確認されています。

 

一度申し出た人でも、また同時申出が必要になる

「一度検索用情報を法務局へ申し出れば、その後はもう申し出なくてよいのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

質疑事項集の問9・問10は、この点を明確にしています。

 

別の不動産を新しく取得した場合

例えば、自宅について既に検索用情報を申し出ている人が、その後、別のマンションを購入して所有権移転登記を申請したとします。

この場合でも、新たに取得するマンションについて改めて検索用情報同時申出をする必要があります。

「以前、別の不動産について申出済みだから今回は不要」にはなりません。

 

同じ不動産の共有持分を追加取得した場合も必要

さらに興味深いのが、同じ不動産の場合です。

例えば、AさんとBさんがある不動産を2分の1ずつ共有しているとします。

Aさんは、既にその不動産について検索用情報を申し出ていました。

その後、AさんがBさんの2分の1の持分を買い取り、Aさんの単独所有にするため所有権移転登記を申請するとします。

この場合も、Aさんは今回の持分移転登記に際して改めて検索用情報同時申出をする必要があります。

したがって、

「同じ不動産について一度申出をしたから、その不動産については今後一切不要」

という仕組みではありません。

なお、なぜこのような場合にも再度同時申出が必要なのかについて、質疑事項集は結論を明示していますが、その理由までは示していません。

そのため、本記事でも理由を推測せず、過去に申出済みの場合でも、これらの場合には改めて同時申出が必要であるという実務上の取扱いを押さえておきます。

 

検索用情報を申し出なかったら所有権移転登記は却下される?

ここが今回の重要なポイントです。

不動産登記規則第158条の39第1項では、一定の所有権の登記を申請する場合について、検索用情報を

「申し出るものとする」

と規定しています。

では、検索用情報を申し出ずに所有権移転登記を申請したら、その所有権移転登記自体が却下されてしまうのでしょうか。

そのような取扱いにはなっていません。

質疑事項集の問11では、検索用情報同時申出をすべきケースで申出がなかった場合、まず申請人または代理人に対して、検索用情報を申し出るよう促すとされています。

そして、その促しに応じない場合には、

申請書の余白にその旨を記載した上で、本体となる登記を実行する

という取扱いが示されています。

さらに、申請情報の内容などから、

「検索用情報の申出はしない」

という意思が明らかな場合には、申出を促すことなく登記を実行して差し支えないとされています。

したがって、

検索用情報を申し出なかったことだけを理由として、所有権移転登記等まで却下されるわけではありません。

 

だからといって「完全に任意」というわけでもない

ここは少し微妙なところです。

「申し出なくても登記が実行されるのであれば、検索用情報は任意なのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、これも正確ではありません。

規則第158条の39第1項は、同時申出について「申し出るものとする」と定めています。

さらに質疑事項集問11では、検索用情報の申出を、住所等変更登記の未了への対応に「必要不可欠の手続」とした上で、まず申出を促す取扱いを示しています。

したがって、制度を正確に表現するなら、

制度上は、検索用情報を同時に申し出るものとされている。
ただし、その申出がなかったことだけを理由として、同時に申請した所有権移転登記等まで却下する取扱いではない。

ということになります。

「申出は完全に自由です」と説明するのも、「申出をしなければ登記できません」と説明するのも、どちらも正確ではありません。

なお、検索用情報を申し出ていない所有者の氏名や住所にその後変更があった場合には、その所有者自身で住所等変更登記を申請する必要があります。

検索用情報を申し出なくても今回の所有権移転登記等が却下されないことと、将来の住所等変更登記について職権変更登記の仕組みを利用できるかどうかは、別の問題です。

 

検索用情報同時申出だけを独立して却下する仕組みでもない

さらに、質疑事項集の問18には、少し専門的ですが興味深い説明があります。

検索用情報同時申出については、申出だけを独立して却下することを前提とした定めにはなっていません。

質疑事項集は、その理由として、申出情報に不備があっても、基本的には登記申請で提出される住所証明情報と兼ねることのできる「出生の年月日等を証する情報」によって正しい検索用情報が明らかになること、また、申出に対する応答には行政処分性がないと考えられることを挙げています。

 

例えば、登記申請の住所証明情報として、出生年月日の記載がない古い戸籍の附票が提出された場合には、必要な情報について補正を求める取扱いが示されています。

そして、登記官が定めた相当の期間内に補正されない場合には、申請書の余白にその旨を記載した上で、検索用情報の申出がされなかった場合と同様に本体の登記を実行するとされています。

 

一方、本体となる登記申請そのものが却下された場合には、その登記申請と一緒にされた検索用情報同時申出も併せて却下されたことになります。

つまり、同時申出は登記申請と密接に結び付いた手続ですが、検索用情報の申出に不備があることと、本体の登記申請を却下することは同じ問題ではないということです。

 

オンライン申請では申出漏れを防ぐ仕組みもある

オンライン申請では、同時申出の対象となる登記の申請様式に、

  • 氏名の振り仮名またはローマ字氏名
  • 出生年月日
  • 電子メールアドレス

の入力欄と、「検索用情報の申出の対象外である」というチェック欄が設けられています。

そして、この「対象外」の欄にチェックを入れない限り、氏名の振り仮名またはローマ字氏名、あるいは出生年月日を入力せずに申請しようとするとエラーになる仕様とされています。

なお、電子メールアドレスについても入力欄は設けられていますが、質疑事項集がこのエラー仕様の対象として明示しているのは、氏名の振り仮名またはローマ字氏名と出生年月日です。

このように、オンライン申請でも検索用情報の申出漏れを防ぐ仕組みが設けられています。

 

同時申出を司法書士に依頼した場合、専用の委任状は必要?

不動産登記を司法書士に依頼する場合、

「登記申請の委任状とは別に、検索用情報同時申出専用の委任状も必要なのか」

という問題があります。

質疑事項集の問12では、検索用情報同時申出と一緒に行う登記申請が委任による代理申請である場合、

委任状で登記申請について委任されていれば足り、検索用情報同時申出について独立した委任がされている必要はない

とされています。

したがって、「検索用情報同時申出専用の委任状」を必ず別に作成しなければならないわけではありません。

 

ただし、ここには重要な前提があります。

質疑事項集は、電子メールアドレス等の検索用情報について、申請人から代理人に確実に伝達されていることが前提としています。

したがって、代理人が申請人から確実な伝達を受けないまま、独自に申出内容を決めてよいという意味ではありません。

なお、ここで説明しているのは、登記申請と一緒に行う「同時申出」についての委任です。

登記申請とは独立して行う「単独申出」を代理人が行う場合には、別途、代理人の権限を証する情報が必要になります。

 

別の不動産まで同じ登記申請で一緒に申し出られる?

例えば、Aさんが甲不動産の所有権移転登記を申請し、その際に甲不動産について検索用情報同時申出をするとします。

Aさんが既に乙不動産も所有している場合、

「せっかくなので、乙不動産についても同じ申請書で検索用情報を申し出てしまおう」

と考えるかもしれません。

しかし、これはできません。

質疑事項集問28では、検索用情報同時申出の対象となる登記申請の対象ではない不動産を、その申請情報に追加して一緒に申し出ることは認められないとされています。

乙不動産について検索用情報を申し出るのであれば、甲不動産の所有権移転登記とは別に、乙不動産について検索用情報単独申出をする必要があります。

また、検索用情報同時申出の対象ではない登記の申請と、検索用情報単独申出とを1件の申請書・申出書にまとめることもできません。

つまり、

「同時申出」と「単独申出」は、単に法務局へ出すタイミングが違うだけの制度ではなく、手続として明確に区別されています。

 

登記申請を取り下げたら同時申出はどうなる?

同時申出が登記申請とセットになっていることがよく分かる取扱いが、もう一つあります。

質疑事項集問20では、検索用情報同時申出を伴う登記申請が取り下げられた場合、

検索用情報同時申出も取り下げられたものとみなされる

とされています。

本体の登記申請だけを取り下げて、検索用情報同時申出だけをそのまま残す仕組みではありません。

 

また、先ほど確認したとおり、本体の登記申請が却下された場合には、検索用情報同時申出も併せて却下されたことになります。

この点からも、「同時申出」という名称どおり、登記申請との結び付きが強い手続であることが分かります。

 

検索用情報の申出自体には登録免許税はかからない

検索用情報同時申出・単独申出のいずれについても、検索用情報の申出自体には登録免許税は課されません。

質疑事項集の問1でも明確に確認されています。

ただし、同時申出と一緒に行う所有権移転登記や所有権保存登記などについて、本来必要となる登録免許税まで不要になるわけではありません。

あくまで登録免許税がかからないのは、検索用情報の申出そのものです。

 

まとめ―「同時」と「単独」は単なる申出時期の違いではない

検索用情報には、一定の所有権の登記の申請と一緒に行う「同時申出」と、現在の所有権の登記名義人が登記申請とは別に行う「単独申出」があります。

同時申出の対象となる登記は限定されており、さらに、新たに所有権の登記名義人となる者がその登記の申請人であることが重要です。

申請人ではない人が所有権の登記名義人となる場合には、その人について同時申出をすることはできませんが、所有権の登記が完了した後に単独申出をすることができます。

また、一度検索用情報を申し出ていても、別の不動産を取得した場合だけでなく、同じ不動産の他の共有者の持分を取得した場合にも、改めて同時申出をする必要があります。

そして特に重要なのが、

「検索用情報を申し出なければ所有権移転登記ができない」という制度ではない

という点です。

規則上は同時申出を「申し出るものとする」とされていますが、申出がなければまず申出を促し、それでも応じない場合には本体の登記を実行する取扱いが示されています。

そのため、「申出をしなければ登記は却下される」とするのも、「検索用情報は完全な任意だから申し出なくてもよい」とするのも、どちらも正確ではありません。

さらに、登記申請について司法書士へ委任している場合には、同時申出だけのために独立した委任をする必要はありませんが、検索用情報自体は本人から代理人へ確実に伝えられている必要があります。

検索用情報の申出自体には登録免許税もかかりません。

では、既に所有している不動産について単独申出をしようとしたところ、登記簿には10年前の住所が載ったままだったらどうなるのでしょうか。

現在の住所と登記簿上の住所が一致していなくても、検索用情報を申し出ることができる場合があります。

その鍵になるのが、住基ネットによって、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを確認できるかという問題です。

次回は、「登記簿の住所が古いままでも検索用情報を申し出られる?」をテーマに、検索用情報単独申出と戸籍の附票等が必要になるケースを、通達と質疑事項集の具体例から詳しく確認します。

----------------------------------------------------------------------
中野司法書士事務所
東京都杉並区高円寺南4-28-10
高円寺リリエンハイム407
電話番号 : 03-6272-4260


杉並区で選ばれる不動産登記・名義変更業務

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。