住所変更登記の義務化とは?相続登記との違い・期限・スマート変更登記を司法書士が解説
2026/07/17
不動産を購入した後に引っ越したものの、登記簿の住所変更まではしていない。
結婚や離婚で氏名が変わったものの、不動産登記簿は以前の氏名のままになっている。
このような方は少なくありません。
住民票の住所を変更しても、これまでは不動産登記簿の住所まで自動的に変わる仕組みではありませんでした。売却や住宅ローンの借換えなど、登記を直す必要が生じた段階で、住所変更登記をするケースが多かったのです。
しかし、令和8年4月1日から、不動産の所有者の住所・氏名等に変更があった場合の変更登記が義務化されました。
正式には「住所等変更登記」といいます。個人の住所・氏名だけでなく、法人の本店所在地や名称の変更も対象です。
この記事では、住所変更登記義務化の内容、2年以内という期限、義務化前の住所変更、5万円以下の過料、スマート変更登記と検索用情報の関係について、司法書士の視点から解説します。
不動産の所有者が亡くなった場合の手続については、「相続登記の義務化とは?相続税がかからなくても不動産の名義変更が必要です」もあわせてご覧ください。
目次
- 住所変更登記は令和8年4月1日から義務化されました
- 住民票を移しても登記簿の住所は自動で変わらない
- なぜ住所等変更登記が義務化されたのか
- 住所等変更登記の期限は変更日から2年以内
- 義務化前の住所変更も対象です
- 相続登記義務化との違い
- 住所変更登記をしないと5万円の過料になるのか
- スマート変更登記とは
- スマート変更登記と検索用情報の関係
- 売却や融資を急ぐ場合は通常の変更登記が必要
- 自分で住所変更登記をする場合の注意点
- 法人の本店移転・名称変更も義務化の対象
- 司法書士へ相談した方がよいケース
- FAQ
- まとめ
住所変更登記は令和8年4月1日から義務化されました
令和8年4月1日から、不動産の所有権登記名義人は、住所や氏名等に変更があった日から2年以内に変更登記を申請することが義務付けられました。
正当な理由なく義務を怠った場合には、5万円以下の過料が科される可能性があります。
対象になるのは、次のような変更です。
個人が不動産を所有している場合
- 引っ越しによる住所変更
- 結婚や離婚などによる氏名変更
法人が不動産を所有している場合
- 本店または主たる事務所の移転
- 商号・名称の変更
一般には「住所変更登記の義務化」と呼ばれることが多いですが、正式な対象は住所だけではありません。
そのため、制度全体を指す場合には「住所等変更登記」という名称が使われています。
なお、この義務を負うのは、不動産の所有権登記名義人です。土地や建物を所有している個人・法人が対象になります。
住民票を移しても登記簿の住所は自動で変わらない
住所変更登記について最も誤解されやすいのが、住民票との関係です。
市区町村へ転居届や転入届を提出しても、従来は法務局の不動産登記簿まで自動的に変更されるわけではありませんでした。
たとえば、自宅を購入した後に2回引っ越している場合でも、住所変更登記をしていなければ、登記簿には購入当時の住所が残っています。
運転免許証、マイナンバーカード、郵便物の届出を変更していても、不動産登記簿は別の手続です。
そのため、次のような場面で初めて登記簿の住所が古いことに気付くことがあります。
- 不動産を売却するとき
- 住宅ローンを借り換えるとき
- 新たに抵当権を設定するとき
- 贈与や財産分与で名義を変更するとき
- 所有者が亡くなり、相続登記をするとき
住所変更登記の義務化後は、「売却するときに直せばよい」という考え方ではなく、住所等の変更から2年以内に対応することが原則になります。
なぜ住所等変更登記が義務化されたのか
住所等変更登記が義務化された背景には、所有者不明土地の問題があります。
不動産登記簿に記録されている住所が古いままだと、登記簿を確認しても現在の所有者へ連絡できないことがあります。
法務省は、所有者不明土地問題の原因の約3分の1を、住所変更登記がされていないことが占めると説明しています。
所有者の所在が分からない土地が増えると、次のような問題が生じます。
- 不動産の売買や管理が進まない
- 隣地との境界確認ができない
- 空き地や空き家の管理が難しくなる
- 公共事業や災害復旧の妨げになる
- 将来の相続手続が複雑になる
所有者が亡くなったのに相続登記をしない。
所有者が引っ越したのに住所変更登記をしない。
どちらも、登記簿を見ただけでは現在の所有者や連絡先を確認できなくなる原因です。
この問題を減らすため、相続登記に続いて住所等変更登記も義務化されました。
住所等変更登記の期限は変更日から2年以内
令和8年4月1日以降に住所や氏名等が変わった場合は、変更日から2年以内に変更登記をする必要があります。
たとえば、令和8年7月1日に引っ越した場合には、原則として令和10年7月1日までに住所変更登記をすることになります。
結婚などにより氏名が変わった場合も同じです。
不動産を複数所有している場合は、それぞれの不動産について、登記簿上の住所や氏名を確認する必要があります。
自宅だけでなく、次のような不動産も対象になり得ます。
- 投資用マンション
- 賃貸物件
- 共有持分
- 私道持分
- 相続した土地
- 地方にある山林や農地
- 法人名義の土地・建物
義務化前の住所変更も対象です
令和8年4月1日より前に住所や氏名等が変わっており、変更登記をしていない場合も、義務化の対象です。
この場合の期限は、令和10年3月31日です。
したがって、次のような方も確認が必要です。
- 10年前に自宅を購入し、その後に引っ越している
- 転勤を繰り返し、登記簿が以前の住所のままになっている
- 結婚後も不動産登記簿が旧姓のままになっている
- 離婚後に氏名が変わったが、変更登記をしていない
- 会社の本店を移転したが、会社所有不動産の登記を確認していない
「義務化後に引っ越した人だけが対象」という制度ではありません。
過去の住所変更についても、登記がされていなければ対応が必要です。
相続登記義務化との違い
相続登記と住所等変更登記は、いずれも所有者不明土地問題への対応として義務化されました。
ただし、期限や過料の上限は異なります。
| 項目 | 相続登記 | 住所等変更登記 |
|---|---|---|
| 義務化開始 | 令和6年4月1日 | 令和8年4月1日 |
| 主な原因 | 所有者が亡くなった | 所有者の住所・氏名等が変わった |
| 原則的な期限 | 取得を知った日から3年以内 | 変更日から2年以内 |
| 義務化前の案件 | 最も早い期限は令和9年3月31日 | 令和10年3月31日まで |
| 過料の上限 | 10万円以下 | 5万円以下 |
| 負担軽減制度 | 相続人申告登記 | スマート変更登記 |
相続登記は、不動産の所有者自体が変わる手続です。
住所等変更登記は、所有者は同じままで、その人の住所や氏名等を現在の情報へ変更する手続です。
住所変更登記をしないと5万円の過料になるのか
正当な理由なく住所等変更登記の義務を怠った場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、期限を過ぎた瞬間に、自動的に5万円の支払を求められる仕組みではありません。
法務省が示している流れは、おおむね次のとおりです。
- 登記官が義務違反を把握する
- 登記官が変更登記をするよう催告する
- 催告期限内にも登記や必要な申出がされない
- 正当な理由も認められない場合、裁判所へ通知する
- 裁判所が過料を科すかどうかと金額を判断する
過料は5万円以下の範囲で裁判所が決定します。
また、過料は刑事罰ではありません。刑罰である「科料」とは別の行政上のペナルティです。
もっとも、「直ちに過料にならないなら放置してよい」ということではありません。
催告を受けても対応しなければ、裁判所への通知に進む可能性があります。
期限を過ぎていることに気付いた場合は、その時点から変更登記またはスマート変更登記のための申出を検討する必要があります。
スマート変更登記とは
住所等変更登記の義務化とあわせて、所有者の負担を軽減するために設けられたのが「スマート変更登記」です。
一定の情報をあらかじめ法務局へ申し出ておくことで、住所や氏名等の変更があった場合に、法務局が職権で変更登記をする仕組みです。
個人の場合のおおまかな流れは、次のとおりです。
- 所有者が検索用情報を法務局へ申し出る
- 法務局が少なくとも2年に1回、住民基本台帳ネットワークを確認する
- 住所・氏名の変更が確認される
- 法務局が本人へ変更登記をしてよいか確認する
- 本人が了解する
- 法務局が職権で住所等変更登記をする
検索用情報の申出や、法務局が行う職権登記には、登録免許税等の費用はかかりません。
ただし、住民票を移した瞬間に、不動産登記簿も即時に変更される制度ではありません。
法務局による確認と、所有者本人の了解を経て、順次変更登記が行われます。
スマート変更登記と検索用情報の関係
個人がスマート変更登記を利用するためには、「検索用情報の申出」が必要です。
検索用情報には、次のような情報が含まれます。
- 氏名
- 住所
- 氏名の振り仮名
- 生年月日
- メールアドレス
これらは、法務局が登記簿上の所有者と、住民基本台帳ネットワーク上の本人を正確に結び付けるために使われます。
氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレスは、通常の登記事項証明書には表示されません。
令和7年4月21日以降、新たに所有権の保存登記や移転登記等を受ける個人については、登記申請とあわせて検索用情報を申し出る仕組みが始まっています。
すでに不動産の所有者になっている人も、検索用情報のみを申し出ることができます。
検索用情報の詳しい内容については、「不動産売買で、なぜ買主のメールアドレスを聞くのか?」で解説しています。
また、法務局から届くメールや認証キーについては、「不動産登記で登録したメールアドレス。法務局からのメールを消すとどうなる?」をご覧ください。
法務局からの確認を放置してよいわけではありません
検索用情報を申し出た後、法務局が住所等の変更を確認すると、職権で変更登記をしてよいか、本人へメールまたは書面で確認します。
メールを一度見落としたからといって、直ちに過料が科されるわけではありません。
しかし、法務局からの意思確認に回答せず、変更登記も行わない状態が続くと、登記官による催告の端緒になる可能性があります。
スマート変更登記を利用する場合も、法務局からの連絡は確認する必要があります。
売却や融資を急ぐ場合は通常の変更登記が必要
スマート変更登記は便利な制度ですが、すぐに登記簿を現在の住所へ変更しなければならない場面には向きません。
たとえば、次のような場合です。
- 不動産の売買契約が決まっている
- 売買決済日が迫っている
- 住宅ローンを借り換える
- 新たな抵当権を設定する
- 贈与や財産分与による名義変更をする
このような場面では、法務局の職権登記を待つのではなく、従来どおり住所等変更登記を申請する必要があります。
法務局も、速やかに登記簿を変更する必要がある場合には、通常の変更登記を申請するよう案内しています。
スマート変更登記は、売却直前の変更登記を代替する制度ではありません。
将来の住所変更登記を放置しないための負担軽減制度と考えるのが適切です。
自分で住所変更登記をする場合の注意点
住所変更登記は、ご自身で申請することもできます。
ただし、登記簿上の住所と現在の住所が簡単につながらない場合があります。
何度も引っ越している場合
登記簿上の住所から現在住所までの変遷を証明する必要があります。
現在の住民票だけでは以前の住所が確認できない場合、住民票の除票や戸籍の附票などが必要になることがあります。
古い住所の記録が保存されていない場合
住所変更から長期間が経過していると、住民票除票や戸籍の附票が保存期間の経過により取得できないことがあります。
この場合は、登記済証や固定資産税関係資料など、別の資料を組み合わせて登記名義人との同一性を確認することがあります。
土地と建物の一方だけを見落とす場合
一戸建てでは土地と建物が別々の不動産です。
マンションでも、敷地権化されていない土地持分や、別の私道持分を所有している場合があります。
住所変更登記をする際は、所有している不動産を漏れなく確認する必要があります。
売却と同時に申請する場合
売却の前提として住所変更登記をする場合は、売買による所有権移転登記との順番や必要書類を整理する必要があります。
登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が違う状態では、住所変更登記を先に申請するのが通常です。
法人の本店移転・名称変更も義務化の対象
住所等変更登記義務化は、個人だけの制度ではありません。
会社などの法人が不動産を所有している場合、本店移転や商号・名称変更も対象になります。
法人の場合、不動産登記簿に会社法人等番号が記録されていれば、商業・法人登記システムの情報に基づいて、法務局が職権で不動産登記上の本店や名称を変更するスマート変更登記の対象になります。
法人のスマート変更登記は、令和8年5月15日以降、順次行われています。
ただし、会社法人等番号が不動産登記簿に記録されていない法人は、そのままでは対象になりません。
会社の本店移転登記をしたからといって、すべての会社所有不動産の表示が直ちに変更されているとは限らないため、会社所有不動産がある場合は登記内容を確認した方がよいでしょう。
なお、合併による所有権の承継など、単なる名称変更ではない手続は、法人のスマート変更登記の対象外になる場合があります。
司法書士へ相談した方がよいケース
次のような場合には、司法書士へ相談すると手続を整理しやすくなります。
- 登記簿の住所が何代も前の住所になっている
- 住所の変遷を証明する書類が集まらない
- 結婚や離婚で氏名も変わっている
- 複数の不動産を所有している
- 私道持分や共有持分があるか分からない
- 不動産の売却や融資が迫っている
- 相続登記と住所変更登記の両方が必要
- 法人の本店移転後、会社所有不動産を確認していない
- 検索用情報の申出が済んでいるか分からない
- スマート変更登記を待つべきか、通常の登記をすべきか迷っている
相談時には、次の資料があると確認がしやすくなります。
- 登記事項証明書
- 権利証または登記識別情報
- 現在の住民票
- 戸籍の附票
- 固定資産税の納税通知書
- 売却予定がある場合は売買契約書や不動産会社の資料
- 法人の場合は会社の登記事項証明書
すべての資料がそろっていなくても、現在の登記簿を確認し、必要な手続と書類を整理できます。
FAQ
Q1 住民票を移せば、登記簿の住所も自動的に変わりますか?
従来は自動的には変わりませんでした。
スマート変更登記を利用するための検索用情報を申し出ている場合は、法務局が住基ネットで変更を確認し、本人の了解を得たうえで職権登記をする仕組みがあります。
ただし、住民票を移した直後に即時変更される制度ではありません。
Q2 何年も前に引っ越しました。今回の義務化の対象ですか?
対象です。
令和8年4月1日より前の住所・氏名等の変更についても、変更登記をしていない場合は令和10年3月31日までに対応する必要があります。
Q3 期限を過ぎたら、すぐに5万円の過料になりますか?
期限経過と同時に、自動的に5万円の過料が科されるわけではありません。
登記官による催告を経て、それでも対応がなく、正当な理由も認められない場合に裁判所へ通知されます。
過料を科すかどうかと金額は、裁判所が判断します。
Q4 スマート変更登記を利用すれば、もう何もしなくてよいですか?
検索用情報の申出後、法務局から職権登記についての確認が来た場合には、内容を確認して回答する必要があります。
また、不動産の売却や融資を急ぐ場合は、スマート変更登記を待たず、通常の変更登記が必要です。
Q5 メールアドレスを持っていない場合は利用できませんか?
メールアドレスがない場合でも検索用情報の申出は可能です。
将来、法務局が職権登記の意思確認を行う場合には、書面による通知が予定されています。
Q6 海外へ転居した場合もスマート変更登記を利用できますか?
海外居住者については、法務局が住基ネットで住所変更を確認できないため、スマート変更登記による職権登記は利用できません。
住所や氏名に変更があった場合は、通常の変更登記を申請する必要があります。
Q7 会社の本店移転登記をすれば、不動産登記も自動で変わりますか?
不動産登記簿に会社法人等番号が記録されていれば、法人のスマート変更登記の対象になります。
ただし、職権登記が完了するまでには一定の期間がかかります。
会社法人等番号が記録されていない場合や、売却等で変更を急ぐ場合は、別途対応が必要です。
まとめ
令和8年4月1日から、不動産の所有者の住所・氏名等の変更登記が義務化されました。
令和8年4月1日以降に変更があった場合は、変更日から2年以内に登記する必要があります。
義務化前に住所や氏名等が変わっており、変更登記をしていない場合の期限は令和10年3月31日です。
正当な理由なく義務を怠った場合には、5万円以下の過料が科される可能性があります。
一方で、所有者の負担を軽減するため、スマート変更登記も用意されています。
個人は検索用情報を申し出ることで、法務局が住基ネットを確認し、本人の了解を得たうえで職権登記を行う仕組みを利用できます。
ただし、スマート変更登記は、住民票を移した直後に登記簿が自動で変わる制度ではありません。
売却や融資の予定が迫っている場合には、従来どおり住所等変更登記を申請する必要があります。
中野司法書士事務所では、個人の住所・氏名変更登記、法人の本店・名称変更に伴う不動産登記、相続登記、不動産売買に伴う登記手続についてご相談をお受けしています。
登記簿の住所が古い場合、住所の変遷を証明する資料がそろわない場合、スマート変更登記を待つべきか通常の登記を申請すべきか分からない場合も、状況を確認しながら進め方を整理します。
手続の進め方や必要書類が分からない場合は、中野司法書士事務所へお問い合わせください。
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