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不動産売買で、なぜ買主のメールアドレスを聞くのか?

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不動産売買で、なぜ買主のメールアドレスを聞くのか?

不動産売買で、なぜ買主のメールアドレスを聞くのか?

2026/06/23

登記簿には載らない「検索用情報」とスマート変更登記

 

不動産売買の決済準備をしていたとき、不動産会社の営業担当者から、こんな質問を受けました。

 

「最近、司法書士の先生が買主さんにメールアドレスを聞いていますが、何のためですか。何をするんですか?」

 

不動産取引に日常的に関わる営業担当者でも、知らなければ当然にそう思います。

買主様から見ても、「不動産登記のためにメールアドレスまで出すのですか」「メールアドレスまで登記簿に載るのですか」と感じるかもしれません。

私もその場では、まずこう答えました。

 

「登記が終わると、法務局からメールアドレス宛てに通知が来ます。」

 

これは間違いではありません。
ただし、説明としては少し足りませんでした。

メールアドレスを確認する本当の目的は、将来、買主様が引越しや氏名変更をしたときに、法務局が住所等変更登記を進めやすくするためです。

 

買主様に追加で確認する「検索用情報」とは

現在、不動産売買により新たに所有者となる方については、通常の氏名・住所に加え、次の情報を法務局へ申し出る必要があります。

 

  • 氏名のフリガナ
  • 生年月日
  • メールアドレス

 

これらは、法務局が将来、住民基本台帳ネットワークの情報を利用して、登記簿上の所有者と住民票上の本人を正確に結び付けるための「検索用情報」です。

 

例えば、氏名だけでは同姓同名の別人と取り違えるおそれがあります。

 

そこで、氏名、フリガナ、住所、生年月日を組み合わせて、登記簿上の所有者と住民票上の本人を正確に特定できるようにします。

 

メールアドレスや生年月日は、登記簿には載りません

ここは誤解されやすい点です。

買主様の氏名と住所は、従来どおり登記簿に記録されます。
しかし、氏名のフリガナ、生年月日、メールアドレスは、登記事項証明書には表示されません

第三者が登記事項証明書を取得しても、生年月日やメールアドレスまで見える制度ではありません。

これらの情報は、登記簿とは別の「検索用情報管理ファイル」に記録され、将来の住所・氏名変更の確認に使われます。

 

生年月日は住民票で確認できる。実務上、難しいのはメールアドレスです

生年月日は、通常、登記申請で提出する住民票の写し等から確認できます。

氏名のフリガナも、買主様に口頭で確認すれば足ります。

ところが、メールアドレスは少し違います。

手書きでメールアドレスを書いていただくと、後で事務所に戻って申請書を作成する際に、読めないことがあります。

 

「0」なのか「O」なのか。
「1」なのか「l(小文字のエル)」なのか。
ハイフンなのか、アンダーバーなのか。
大文字なのか、小文字なのか。

 

メールアドレスは短い情報ですが、読み違えると、法務局からの通知が本人に届きません。

そのため私は、メールアドレスを口頭でも確認し、手書きの横に鉛筆で読み方を書いておくようにしています。

たとえば、「ゼロ」「オー」「小文字のエル」「アンダーバー」など、後で迷いそうな部分だけでも補っておくと安心です。

新しい制度の中で、決済現場の司法書士が一番注意しているのは、意外にもこういう部分かもしれません。

 

メールアドレスは、誰のものでもよいわけではありません

検索用情報として申し出るメールアドレスは、買主様本人だけが利用しているものが原則です。

不動産会社の担当者、司法書士、家族などのメールアドレスを代わりに登録する制度ではありません。

 

将来、法務局が住所や氏名の変更を確認した場合、その所有者本人に「職権で住所等変更登記をしてよいですか」と確認するための連絡先だからです。

 

メールアドレスを持っていない方は、「なし」として申し出ることができます。その場合は、将来、法務局から書面で確認が届くことになります。

 

「登記完了メール」が来る、という説明は半分正しい

検索用情報が法務局に登録されると、申出手続が完了した旨のメールが送られます。

そのため、「登記が終わったらメールが来ます」という説明は、完全な誤りではありません。

ただし、正確には、通常の登記完了通知とは少し違います。

 

買主様に届くのは、検索用情報の申出手続が完了した旨のメールです。このメールには、後にメールアドレスを変更する際に必要となる認証キーも記載されます。

メールを削除せず、しばらく保管しておくと安心です。

 

引越したら、法務局がすぐ住所を書き換えてくれるのか?

ここが、この制度の一番大事なところです。

メールアドレスを申し出たからといって、引越しをした瞬間に、登記簿上の住所まで自動的に書き換わるわけではありません。

おおまかな流れは、次のとおりです。

 

  1. 不動産を取得する際に、検索用情報を申し出る
  2. 所有者が引越しや氏名変更をする
  3. 法務局が住民基本台帳ネットワークの情報を定期的に確認する
  4. 住所又は氏名の変更を確認した場合、法務局が本人へ意思確認の連絡をする
  5. 本人の了解を得た上で、法務局が職権で住所等変更登記をする

 

これが「スマート変更登記」と呼ばれる仕組みです。

つまり、所有者が毎回自分で住所変更登記を申請しなくても、一定の条件の下で、法務局が職権で変更登記をしてくれる制度です。

 

ただし、売却や融資が近いときは待てません

スマート変更登記は便利ですが、売買決済や融資の予定が迫っている場面で利用する制度ではありません。

例えば、登記簿上の住所と現在の住民票住所が違う状態で、不動産を売却する場合があります。

このとき、「そのうち法務局が職権で変更してくれるはずです」と待っているわけにはいきません。

売買、抵当権設定、住宅ローン借換えなどで、すぐに現在住所への変更が必要な場合には、従来どおり住所変更登記を申請する必要があります。

スマート変更登記は、将来の住所変更登記を完全になくす制度ではありません。住所変更登記を放置しないための、新しい補助的な仕組みと考えるのが正確です。

 

不動産会社の営業担当者が20秒で説明するなら

買主様から質問されたときは、次のように説明すると分かりやすいと思います。

 

メールアドレスは登記簿に載せるために聞いているわけではありません。
将来、引越しなどで住所が変わったときに、法務局が本人へ確認した上で住所変更登記を進めるための連絡先です。
フリガナと生年月日は、同姓同名の別人と取り違えず、登記簿上の所有者本人を正確に確認するために使われます。

 

まとめ

不動産売買の際に買主様へメールアドレスを確認するのは、営業目的でも、登記簿にメールアドレスを載せるためでもありません。

将来、所有者の住所や氏名が変わった場合に、法務局が本人を正確に確認し、住所等変更登記を進めやすくするためです。

決済の場面では小さな追加項目に見えます。

しかし、そのメールアドレス、フリガナ、生年月日は、今後の不動産登記を「取得時点の記録」だけで終わらせず、所有者の変更後の状況にも対応しやすくするための入口になっています。

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