株式会社と合同会社、どちらで設立する?共同経営で後悔しないための選び方
2026/03/10
会社を設立したいと考えたとき、多くの方が迷うのが「株式会社にするか、合同会社にするか」です。
合同会社は、株式会社より設立費用を抑えやすく、定款認証も不要です。そのため、「事業を始めるだけなら合同会社でよいのではないか」と考える方も少なくありません。
実際、一人で始める会社、家族だけで運営する会社、親会社が100%出資する子会社などでは、合同会社が合理的な選択になることがあります。
ただし、共同経営者がいる場合や、出資額に差がある場合は、設立費用だけで決めない方がよい場面があります。
会社を作る際に本当に考えるべきなのは、「誰がいくら出すか」だけではありません。
誰が日常の経営判断をするのか。
重要な方針を誰が決めるのか。
共同経営者が辞めたらどうするのか。
将来、新しい出資者を入れる可能性があるのか。
こうした点を整理しないまま会社を作ると、事業が順調に進んだ後に、定款変更、役員変更、株式譲渡、組織変更などが必要になることがあります。
会社設立は、登記を申請して終わる手続ではありません。会社の運営ルールを最初に作る作業でもあります。
目次
- 株式会社と合同会社の違いは、費用よりも「誰が決める会社か」
- 合同会社が向いているケース
- 共同経営なら株式会社を起点に考えたい理由
- 設立費用だけで決めると、後から負担が増えることがある
- 合同会社から株式会社へ組織変更する場合
- 合同会社を選ぶなら、定款設計まで考える
- 会社設立前に司法書士へ相談した方がよいタイミング
- よくある質問
- まとめ
株式会社と合同会社の違いは、費用よりも「誰が決める会社か」
株式会社と合同会社は、どちらも法人です。出資者は原則として出資額の範囲で責任を負う点も共通しています。
違いが大きく出るのは、会社の運営や意思決定の仕組みです。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者の呼び方 | 株主 | 社員 |
| 経営を担う人 | 取締役 | 業務執行社員 |
| 代表者 | 代表取締役 | 代表社員 |
| 意思決定の基本 | 原則として株式数に応じた議決権 |
定款に別段の定めがなければ、 業務執行社員の頭数による決定 |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 設立登記の登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 決算公告 | 必要 | 原則不要 |
株式会社では、原則として一株につき一議決権です。出資割合がそのまま議決権に反映されやすいため、「お金を多く出す人が会社の意思決定に強く関わる」という形を作りやすい仕組みです。
一方、合同会社では、定款に特別な定めを置かなければ、社員全員が業務を執行します。複数の業務執行社員がいる場合、会社の業務に関する決定は、出資額ではなく、原則として人数の過半数で決まります。
合同会社が劣っているという話ではありません。合同会社は定款の自由度が高く、実情に合わせて設計できる会社形態です。
ただ、設計をしないまま複数人で始めると、「出資額」と「会社を決める力」が一致しないことがあります。
合同会社が向いているケース
合同会社は、次のようなケースでは使いやすい会社形態です。
一人で事業を始める場合
出資者、経営者、代表者が同じ一人であれば、意思決定が対立する場面は通常ありません。
設立費用を抑えながら法人化したい場合、合同会社は有力な選択肢になります。
家族だけで運営する会社
夫婦や親子など、経営に関わる人が限られており、出資者間の役割分担が明確な場合も、合同会社は使いやすいことがあります。
もっとも、家族だから問題が起きないとは限りません。相続、離婚、退職、事業承継まで考える必要がある場合は、最初から持分や意思決定のルールを整理しておく方が安心です。
子会社・資産管理会社として使う場合
親会社が100%出資する子会社や、一人の経営者が不動産・資産管理を行うための会社などでは、合同会社の簡潔な仕組みが合うことがあります。
外部の投資家を受け入れる予定がなく、社員の入れ替わりも予定していないなら、株式会社にする必要性が高くない場合もあります。
共同経営なら株式会社を起点に考えたい理由
共同経営では、仲が良いことと、会社の仕組みが安全であることは別です。
相談時によくあるのは、「友人と二人で会社を始める」「知人が資金を出してくれる」「自分が事業を行い、別の人が出資する」というケースです。
このとき、合同会社を選ぶなら、出資割合だけでなく、社員・業務執行社員・代表社員を誰にするかまで考える必要があります。
出資額が多い人の意見が、自動的に強くなるわけではありません
例えば、Aさんが80%、BさんとCさんがそれぞれ10%ずつ出資する場合を考えます。
3人全員が業務執行社員で、定款にも特別な定めがなければ、会社の業務に関する決定は、人数の過半数で行う仕組みになります。
BさんとCさんが同じ意見であれば、Aさんは出資額が80%でも、日常的な業務決定で意見が通らない場面があり得ます。
もちろん、合同会社でも定款によって業務執行社員を限定したり、意思決定の方法を定めたりすることはできます。
問題は、合同会社を選んだことではありません。
「出資額が多いから、当然に自分が主導権を持てる」と考えたまま、ひな形の定款で会社を作ってしまうことです。
株式会社でも、50対50は安心ではありません
共同経営なら株式会社が向いている場合が多いとしても、株式会社なら必ず安全というわけではありません。
二人が株式を50%ずつ持つ会社では、意見が対立したときに、株主総会でも取締役の選任でも結論が出せなくなることがあります。
共同経営では、会社形態に加え、次のような点を決めておく必要があります。
- 株式や持分を何%ずつ持つか
- 代表者を誰にするか
- 日常の経営判断を誰に任せるか
- 重要な事項をどのように決めるか
- 退職・死亡・関係悪化が起きた場合に、株式や持分をどうするか
- 第三者に株式や持分を譲渡できるようにするか
共同経営者との関係が良好なうちに、ここを決めて書面に残しておくことが大切です。
設立費用だけで決めると、後から負担が増えることがある
合同会社は、株式会社よりも設立時の法定費用を抑えやすい会社形態です。
株式会社は定款認証が必要で、設立登記の登録免許税も最低15万円です。
合同会社は定款認証が不要で、登録免許税の最低額は6万円です。
この差額は小さくありません。
一人会社や小規模な事業であれば、設立時の費用を抑えるという判断には十分な合理性があります。
ただし、設立費用だけを理由に合同会社を選び、後から株式会社へ変更することになれば、改めて時間と費用がかかります。
会社形態の選択は、「今、いくらで設立できるか」だけでなく、「三年後、五年後にどのような会社にしたいか」も見ながら決める方が無理がありません。
合同会社から株式会社へ組織変更する場合
合同会社を株式会社へ変えることはできます。
ただし、商号を変えるだけの手続ではありません。
会社法上は「組織変更」という手続を行います。
組織変更では、複数の書類と手続が必要になります
一般的には、次のような準備が必要です。
- 組織変更計画書の作成
- 組織変更後の株式会社の定款作成
- 総社員の同意
- 株式会社の取締役・代表取締役の就任関係書類
- 債権者保護手続
- 組織変更による株式会社の設立登記
- 組織変更による合同会社の解散登記
登記申請も一件ではありません。
組織変更による株式会社の設立登記と、組織変更前の合同会社の解散登記を、同時に申請する必要があります。
官報公告などの債権者保護手続が必要になる
合同会社から株式会社への組織変更では、債権者保護手続が必要になります。
官報公告を行い、債権者が異議を述べるための期間を設けなければなりません。手続の内容は会社の公告方法や債権者の状況によって異なりますが、思い立って数日後に株式会社へ変えられるような手続ではありません。
効力発生日から逆算して、少なくとも一か月程度の余裕を見て進める必要があります。
登録免許税だけでも最低6万円がかかります
合同会社から株式会社への組織変更では、株式会社の設立登記と合同会社の解散登記の双方に登録免許税がかかります。
一般的な小規模会社であれば、登録免許税だけでも最低額の合計は6万円です。
このほかに、官報公告費用、必要書類の作成、会社の事情に応じた確認作業などが必要になります。
組織変更では、株式会社を新たに設立する場合のような定款認証は通常不要です。
それでも、共同経営者が複数いる会社、海外居住の社員がいる会社、出資割合と割当株式数を整理する必要がある会社では、書類の確認がかなり増えることがあります。
合同会社から株式会社へ変えること自体は失敗ではありません。事業が成長し、共同経営や外部出資を受け入れる段階になれば、株式会社化が合理的になることもあります。
ただ、「後で変えればよい」と軽く考えるより、設立時に一度立ち止まって考えた方が、後の負担を小さくできる場合があります。
合同会社を選ぶなら、定款設計まで考える
合同会社を選ぶ場合でも、共同経営が悪いわけではありません。
むしろ、合同会社は定款の自由度を生かして、実情に合った会社にできる余地があります。
そのためには、インターネット上のひな形をそのまま使うのではなく、少なくとも次の点を確認したいところです。
誰が業務執行社員になるのか
出資をする人全員が、日常の経営判断に関わる必要があるとは限りません。
出資のみを行う人と、実際に事業を運営する人がいる場合には、その役割を明確にしておく必要があります。
誰が代表社員になるのか
代表社員は、会社を対外的に代表する人です。
契約、銀行取引、登記申請などで会社を代表する立場になるため、肩書きだけで決めるのではなく、実際に誰が責任を持って動くのかを考える必要があります。
会社の業務をどう決めるのか
出資額、貢献度、担当分野が異なる共同経営では、全員を同じ権限にすることが必ずしも公平とは限りません。
日常の業務は代表社員に任せるのか。一定額以上の借入や新規事業は全員で決めるのか。重要事項だけは特別な決議を必要とするのか。
こうした点を、会社の規模に合わせて決めておくことが大切です。
共同経営者が辞めたときにどうするのか
会社が順調なときには、退職や関係悪化を具体的に考えにくいものです。
しかし、社員や株主が会社を離れる場面では、持分や株式の扱いが問題になります。
退職した人が持分や株式を持ち続けるのか。会社や他の共同経営者が買い取るのか。価格はどう決めるのか。
会社設立時にすべてを決め切る必要はありませんが、少なくとも「後で問題になり得る」という認識は持っておくべきです。
会社設立前に司法書士へ相談した方がよいタイミング
司法書士への相談は、会社名や本店所在地が確定してからでも遅くありません。
ただ、共同経営や出資を伴う会社では、次の前に相談する方が整理しやすくなります。
- 出資金を振り込む前
- 株式や持分の割合を決める前
- 共同経営者と口約束をする前
- 投資家や第三者に出資の話をする前
- 許認可、融資、事業用不動産の契約を進める前
会社設立では、定款、出資割合、役員構成、事業目的、公告方法などをまとめて決めます。
後から変更できる事項もありますが、変更には決議、書類、登記、場合によっては費用が必要になります。
「とりあえず会社を作る」前に、現在のメンバー、出資の内容、事業計画を確認しておくことが、後の会社運営を楽にします。
FAQ
Q1.一人で会社を作るなら、合同会社で問題ありませんか?
一人で出資し、一人で経営する予定であれば、合同会社は合理的な選択肢です。
ただし、将来、共同経営者や投資家を入れる可能性が高い場合は、株式会社で始める方が整理しやすいことがあります。
Q2.共同経営なら、必ず株式会社にするべきですか?
必ず株式会社でなければならないわけではありません。
合同会社でも、定款によって業務執行社員、代表社員、意思決定の方法を設計できます。
ただし、出資割合と経営権限を連動させたい場合や、将来の株式譲渡・資金調達を見据える場合は、株式会社の方が分かりやすいことがあります。
Q3.合同会社は、すべてのことを全員一致で決めるのですか?
そうとは限りません。
通常の業務に関する決定は、定款に別段の定めがなければ、業務執行社員の過半数で決まります。
一方で、定款変更など、会社法上、全員の同意が必要になる事項もあります。具体的な判断は、定款の内容や会社の状況によって変わります。
Q4.合同会社でも、出資額に応じて権限を変えることはできますか?
定款の設計によって、業務執行社員や意思決定方法を調整できる場合があります。
ただし、一般的なひな形を使うだけでは、希望する運営方法にならないことがあります。共同経営の場合は、設立前に確認した方が安心です。
Q5.株式会社なら、出資割合を50対50にしても大丈夫ですか?
50対50は公平に見えますが、意見が対立すると会社の意思決定が止まるおそれがあります。
代表取締役の権限、取締役の構成、重要事項の決め方、株式の買戻しなどを合わせて考える必要があります。
Q6.合同会社から株式会社に変更できますか?
できます。
ただし、組織変更計画、総社員の同意、債権者保護手続、役員関係書類、設立登記と解散登記などが必要になります。
Q7.合同会社から株式会社への変更には、どのくらい時間がかかりますか?
債権者保護手続として官報公告等を行うため、少なくとも一か月程度は見込む必要があります。
会社の社員数、債権者の有無、役員構成、必要書類の準備状況によって、全体の期間は変わります。
Q8.会社設立の相談では、何を準備すればよいですか?
決まっている範囲で構いません。
会社名、本店所在地、事業内容、出資者、出資額、役員候補、共同経営者との役割分担、将来の事業計画などをお聞きします。
すべてが確定していなくても、考えるべき点を整理するところからご相談いただけます。
まとめ
株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、設立費用だけで決める問題ではありません。
一人で始める会社や、家族だけで運営する会社では、合同会社が使いやすいことがあります。
一方で、共同経営、出資額の差、将来の資金調達、第三者への承継や株式譲渡を考える場合には、株式会社を起点に考えた方が整理しやすいことがあります。
合同会社を選ぶ場合でも、定款を工夫することで、会社の実情に合った運営ルールを作れる場合があります。
会社を作る前に、誰が出資し、誰が経営し、何を誰が決めるのかを確認しておくことが、後のトラブルや余計な変更手続を減らすことにつながります。
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