「会社設立登記が無料」って、本当に大丈夫ですか?
2026/06/07
会社を作るとき、最近は「会社設立を格安でサポートします」「設立登記も実質無料です」「電子定款で4万円お得です」という広告をよく見かけます。
しかし、ここで一度、冷静に考えていただきたいことがあります。
その人は、司法書士ですか?
会社設立には、定款作成、定款認証、税務署への届出、社会保険関係の届出など、さまざまな手続があります。行政書士には行政書士の業務があり、税理士には税理士の業務があります。
しかし、会社設立「登記」は別です。
会社設立登記の申請書類を作成し、登記手続について相談に応じ、法務局への申請や補正対応まで行うことは、司法書士の中心業務です。
「本人申請だから大丈夫です」
「代理していないので問題ありません」
「申請者本人の名前で出すだけです」
このような説明を見かけることがあります。
しかし、名義が本人になっていれば何でも許されるわけではありません。
実質として、専門家らしき者が登記申請書類を作成し、登記内容を判断し、必要書類を指示し、補正が出たときに対応方法を教えているのであれば、それは単なる「入力補助」ではありません。登記業務そのものです。
司法書士は、依頼者から委任状を受け、登記申請代理人として正面から登記申請をします。補正があれば、代理人として法務局に対応します。
一方で、司法書士でない者は、会社設立登記の代理人にはなれません。
では、補正が出たらどうするのでしょうか。
本来であれば、申請人本人が法務局とやり取りし、本人が補正するしかありません。
ところが、現実には「会社印を作るサービス」まで提供し、会社実印を手元に置いたまま、補正対応まで事業者側で行っている例もあるようです。
それは、もはや「本人申請サポート」といえるのでしょうか。
本人申請の外形を借りて、実質的には非司法書士が登記業務を行っているだけではないでしょうか。
会社設立登記は、ただ申請書を作って出せばよいというものではありません。
商号、本店、事業目的、資本金、株式の内容、役員構成、取締役会の有無、代表取締役の選定方法、将来の役員変更、本店移転、目的変更、増資、株式譲渡、許認可との整合性。
これらは、設立後の会社運営に直結します。
特に、不動産業、建設業、介護事業、古物営業、飲食業、民泊、派遣業など、許認可が絡む会社では、設立時の事業目的の書き方が後で問題になることがあります。
会社を作るということは、登記簿を一枚作ることではありません。
これから事業を行うための法的な器を作ることです。
その入口を、「安いから」「無料だから」「税理士顧問を契約すれば設立登記はサービスだから」という理由だけで選んでよいのでしょうか。
税理士には、税務の専門家としての見せ場がいくらでもあります。税制は毎年のように変わります。会計、節税、資金繰り、決算、申告、税務調査対応。会社経営において税理士が必要になる場面は山ほどあります。
行政書士にも、許認可という大きな専門分野があります。建設業、宅建業、産廃、風営、古物、入管など、本来の専門分野で力を発揮すべき場面は多いはずです。
それなのに、なぜ会社設立登記を「無料」や「格安」の餌にするのでしょうか。
登記は司法書士の専門業務です。
税理士は税務で勝負すればよい。
行政書士は許認可で勝負すればよい。
司法書士は登記と会社法務で勝負します。
それぞれの専門家が、それぞれの業務範囲で正面から仕事をすればよいだけです。
司法書士に会社設立を依頼するメリットは、設立登記だけではありません。
設立後も、役員変更、本店移転、目的変更、増資、支店設置、株式譲渡、解散・清算など、会社にはさまざまな登記が発生します。
また、株主総会議事録、取締役決定書、定款変更、株式の譲渡制限、代表取締役の変更、役員任期の管理など、会社法務の相談も出てきます。
会社を設立する段階で司法書士とつながっておくことは、将来の会社運営にとって大きな意味があります。
安い設立サービスには、安い理由があります。
もちろん、すべての低価格サービスが直ちに問題だというつもりはありません。本人が自分で内容を理解し、自分で申請し、自分で責任を負うのであれば、本人申請自体は可能です。
しかし、専門家らしき者が裏で登記書類を作り、登記相談に応じ、補正対応までしているのであれば、話はまったく別です。
それは「親切なサポート」ではなく、司法書士法上の問題を生じる行為です。
会社設立は、最初が大事です。
会社の入口を、安さだけで選ばないでください。
会社設立登記は、司法書士に依頼してください。
そして、設立後の会社運営、変更登記、会社法務まで相談できる専門家を、最初から味方につけてください。
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