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社長なのに役員報酬ゼロ? 取締役の報酬ゼロと、代表取締役の報酬ゼロは少し意味が違います

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社長なのに役員報酬ゼロ? 取締役の報酬ゼロと、代表取締役の報酬ゼロは少し意味が違います

社長なのに役員報酬ゼロ? 取締役の報酬ゼロと、代表取締役の報酬ゼロは少し意味が違います

2026/06/05

会社の登記を見ていると、時々、不思議に感じることがあります。

それは、取締役なのに役員報酬をもらっていない人です。

取締役に就任している。
登記簿にも名前が載っている。
会社の役員であることは間違いない。

それなのに、役員報酬はゼロ。

これを聞くと、「それでいいの?」と思う人もいるかもしれません。

 

結論からいうと、平取締役の役員報酬ゼロは、それ自体はおかしなことではありません。

たとえば、従業員として会社で働きながら、取締役にも就任している人がいます。
いわゆる使用人兼務取締役です。

営業部長として毎月給与をもらっている。
その一方で、取締役としての役員報酬はもらっていない。

このような形は、実務上あり得ます。

取締役になったからといって、必ず役員報酬を支払わなければならないわけではありません。
取締役としての報酬はゼロ。
従業員としての給与は支払う。

平取締役であれば、この整理は比較的わかりやすいです。

 

しかし、これが代表取締役になると、話が少し変わります。

代表取締役は、会社を代表する立場です。
会社の契約、銀行取引、従業員対応、税務、社会保険、取引先との関係など、会社の顔として外部から見られます。

つまり、単なる「役員の一人」ではありません。
会社そのものを代表する人です。

この代表取締役が、役員報酬ゼロ。

もちろん、これも直ちに違法というわけではありません。

会社を設立したばかりで資金がない。
しばらくは無報酬で頑張る。
赤字なので、役員報酬を取らない。
親族会社で、生活費は別の収入で賄っている。
非常勤の代表者として形式上就任している。

このような事情で、代表取締役の役員報酬をゼロにすること自体はあり得ます。

 

ただし、ここで注意が必要です。

代表取締役は、税務上、原則として「使用人兼務役員」にはなれません。
つまり、平取締役のように「従業員として給与をもらい、取締役としての報酬はゼロです」という整理が、そのまま代表取締役には使いにくいのです。

 

ここが非常に重要です。

 

平取締役の場合は、

「従業員給与あり、役員報酬ゼロ」

という整理が成り立つことがあります。

 

しかし、代表取締役の場合は、

「代表取締役だけど、役員報酬はゼロ。代わりに給与をもらっています」

という説明は、かなり違和感があります。

 

代表取締役は会社を代表する人です。
その人に対して毎月お金を支払っているのであれば、通常は給与ではなく、役員報酬・役員給与として整理すべき場面が多いはずです。

 

もちろん、労働法上の問題はまた別です。

形式上は代表取締役でも、実態としては会社の指示で働かされていただけで、経営判断もしていない、会社印も通帳も管理していない、実質的には従業員だった、というケースはあります。

 

最近も、会社の指示で関連会社の代表取締役にされた元社員が、その後、役職を外され、賃金の支払いを止められたとして、労働契約上の地位確認や未払賃金を求めて提訴したという報道がありました。

このようなケースでは、形式上は代表取締役でも、実態として労働者だったのではないか、という問題が生じます。

 

つまり、代表取締役という肩書は重いのです。

会社側から見ると、代表取締役にしたことで「もう従業員ではない」「給与ではなく役員報酬だ」「雇用契約は終了した」と主張したくなる場面があります。

 

本人側から見ると、実態は社員のまま働いていたのに、ある日突然、「あなたは役員だから労働者ではありません」と言われる危険があります。

 

そして、税務上はまた別の問題として、代表取締役なのに給与名目で支払っている、役員報酬をゼロにしている、生活費を別名目で会社から出している、という処理があると、問題になり得ます。

 

たとえば、

代表取締役の役員報酬はゼロ。
しかし、毎月「給与」として支払っている。
会社の経費で私的な支出をしている。
役員貸付金や仮払金で生活費を出している。
別会社から給与を出しているが、実際にはこの会社の代表者として働いている。

 

このような場合は、「本当にその処理でよいのか」という疑問が出ます。

 

役員報酬ゼロだから節税になる。

このように単純に考えるのは危険です。

 

役員報酬を出さなければ、会社側には損金が発生しません。
その意味では、会社の利益はむしろ残りやすくなります。

 

一方で、代表者個人の生活費をどうしているのか、会社から別名目でお金を出していないか、経費処理に無理がないか、という問題が出ます。

 

つまり、代表取締役の役員報酬ゼロは、必ずしも節税になるとは限りません。
むしろ、不自然な処理をしていると、税務上も労務上も会社法務上も、後から説明に困ることがあります。

 

司法書士業務の場面でも、役員変更登記や会社設立登記の際に、この点は意識しておいた方がよいと思います。

取締役に就任する人がいる。
代表取締役に就任する人がいる。

 

しかし、その人は会社で実際に何をするのか。

報酬はどうなるのか。

従業員としての給与は残るのか。
役員報酬は支払われるのか。
雇用契約は終了するのか。
名目だけの代表者ではないのか。

 

ここを確認しないまま登記だけ進めると、後で問題になることがあります。

 

特に注意したいのは、次のようなケースです。

 

代表取締役なのに役員報酬ゼロ。
代表取締役なのに給与名目で支払っている。
代表取締役なのに会社の事業内容を説明できない。
代表取締役なのに会社印や通帳を管理していない。
代表取締役なのに実際の経営判断を別人がしている。
代表取締役なのに「名前だけでいい」と言われている。
従業員を関連会社の代表取締役にしている。
役員就任後も、従前と同じ社員業務しかしていない。

 

このような場合、単なる登記手続ではなく、実態をよく見る必要があります。

 

平取締役の役員報酬ゼロは、そこまで珍しい話ではありません。
使用人兼務取締役であれば、従業員給与だけを受け取り、取締役報酬はゼロということもあります。

 

しかし、代表取締役の役員報酬ゼロは、同じ感覚で見てはいけません。

代表取締役は、会社の代表者です。
使用人兼務役員として整理できない場面が多く、給与名目での支払いにも注意が必要です。

 

もちろん、代表取締役の役員報酬ゼロがすべて不正というわけではありません。
創業直後、赤字会社、休眠に近い会社、資金繰りの事情、親族会社など、合理的な理由がある場合もあります。

 

大事なのは、理由と実態です。

なぜ役員報酬ゼロなのか。
代表取締役は実際に何をしているのか。
生活費はどこから出ているのか。
給与名目の支払いはないのか。
会社経費と個人支出が混ざっていないか。
本当の経営者は別にいないか。

 

ここを説明できるかどうかです。

「社長なのに役員報酬ゼロ」

この言葉だけで直ちに違法とはいえません。

 

しかし、司法書士としては、かなり気になるサインです。

取締役の報酬ゼロと、代表取締役の報酬ゼロは、同じようで意味が違います。

平取締役なら、従業員給与との併存で説明できることがあります。
代表取締役なら、その説明はかなり慎重に考える必要があります。

役員報酬ゼロ。

それは単なる節税なのか。
資金繰り上のやむを得ない判断なのか。
それとも、実態と名目がずれた危ない処理なのか。

会社の登記を扱う司法書士としても、ここは見落としたくないポイントです。

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