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株式会社の解散登記後の手続|財産目録・貸借対照表と株主総会承認

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株式会社の解散登記後に必要な手続とは?――財産目録・貸借対照表と株主総会の承認

株式会社の解散登記後に必要な手続とは?――財産目録・貸借対照表と株主総会の承認

2026/10/13

株式会社を解散する際、司法書士が担当する登記は、主に「解散・清算人の登記」と「清算結了の登記」です。

しかし、この2つの登記に必要な書類をそろえれば、会社法上の手続もすべて完了するわけではありません。

 

その代表的な例が、解散時の財産目録・貸借対照表の作成と株主総会の承認です。

会社法492条は、清算人に対し、これらの書類の作成と株主総会の承認を義務付けています。

 

ところが、その承認を証する株主総会議事録は、通常、解散登記にも清算結了登記にも添付しません。

登記には必要ないのに、会社法上は必要な手続があるのです。

株式会社が解散した後に清算人が行うべき仕事の全体像を確認したうえで、特に見落としてはいけない会社法492条の手続について説明します。

 

1.解散登記をしても会社はなくならない

株式会社は、株主総会で解散を決議しても、その時点で消滅するわけではありません。

会社法476条は、解散した株式会社が、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまで存続することを定めています。

この段階の会社を「清算株式会社」といいます。

 

会社を解散したからといって、売掛金や借入金、未払金などが自動的になくなるわけではありません。

残っている財産を整理し、債権を回収し、債務を弁済したうえで、残余財産があれば株主に分配する必要があります。

 

清算人の仕事は大きく3つある

会社法481条は、清算人の職務として次の3つを定めています。

 

1.現務の結了

2.債権の取立て及び債務の弁済

3.残余財産の分配

 

現務の結了とは、会社が解散した時点で残っている取引や業務を終了させることです。継続中の契約の整理や、未完成の取引の処理などが考えられます。

 

また、会社に売掛金が残っていれば回収し、銀行借入金や買掛金などの債務があれば、法律上の手続に従って弁済します。

 

そして、債務の整理を終えて財産が残った場合には、株主に残余財産を分配します。

 

解散から清算結了までの基本的な流れ

株主総会の決議によって解散し、通常清算を行う株式会社では、一般に次のような手続を進めます。

 

手続 主な内容
解散・清算人の登記  解散決議、清算人の就任、登記申請
解散時の財産調査 財産目録・貸借対照表の作成、株主総会承認
債権者保護手続 官報公告、知れている債権者への個別催告
清算事務 現務の結了、債権回収、債務弁済、資産の換価 
残余財産の分配 債務を処理した後、残った財産を株主に分配
決算報告の承認 清算事務終了後、株主総会で決算報告を承認
清算結了登記 決算報告の承認後に登記申請

 

実際には、財産調査と債権者保護手続などを並行して進めることがあります。

また、会社の財産や債務の状況によって、清算に必要な期間や手続は異なります。

ここで注目したいのが、解散時の財産調査です。

 

2.解散後に作成する財産目録・貸借対照表

会社法492条1項は、清算人に対し、就任後遅滞なく会社財産の現況を調査し、解散した日における財産目録及び貸借対照表を作成することを義務付けています。

重要なのは、解散登記を申請した日の財産状態ではなく、会社が解散した日の財産状態を明らかにするという点です。

 

清算人は、解散後に残った財産を把握するだけでなく、会社法の定めに従って、財産目録と貸借対照表という2つの書類を作成しなければなりません。

 

財産目録には何を記載するのか

財産目録は、会社にどのような財産や債務が残っているのか、その内容と価額を明らかにするための書類です。

会社法施行規則144条3項は、財産目録を「資産」「負債」「正味資産」に区分して表示することを定めています。

 

例えば、資産には現金・預金、売掛金、貸付金、商品・在庫、土地・建物、機械・備品などがあります。

負債には銀行借入金、役員からの借入金、買掛金、未払金などが考えられます。

 

こうした財産や債務を調査することで、清算人は会社の財産状態を把握します。

財産目録は、単なる書類ではありません。

その後の債権回収や債務弁済を適切に進めるための出発点となるものです。

 

解散時の財産は、原則として「処分価格」で評価する

通常の決算書との違いとして、重要なのが財産の評価方法です。

会社法施行規則144条2項は、財産目録に計上する財産について、処分価格を付すことが困難な場合を除き、原則として解散時の処分価格を付すことを求めています。

 

例えば、ある会社が機械を所有しているとします。

その機械の帳簿価額が500万円であっても、解散時点で売却した場合に100万円程度でしか売れないとすれば、帳簿価額と処分価格には大きな差があります。

この場合、清算開始時の財産目録に当然に500万円と記載できるわけではありません。

原則として、解散時の処分価格を基準に評価する必要があります。

会社が今後も事業を続けることを前提とした評価と、会社を清算するための評価では、財産の価額が大きく異なることがあるのです。

 

さらに、会社法施行規則144条2項は、清算株式会社の会計帳簿について、財産目録に付された価格を取得価額とみなすことも定めています。

 

処分価格による評価は、単に参考として財産の価額を記載するだけのものではなく、清算株式会社の会計にも関係する規定です。

 

なお、処分価格を付すことが困難な資産については例外が認められています。この場合、会社法施行規則145条4項により、貸借対照表にその資産の評価方針を注記しなければなりません。

 

貸借対照表は財産目録に基づいて作成する

財産目録に加えて、貸借対照表も作成しなければなりません。

会社法施行規則145条2項は、清算開始時の貸借対照表を財産目録に基づいて作成することを定めています。

 

また、同条3項は、貸借対照表を「資産」「負債」「純資産」に区分して表示するものとしています。

 

財産目録では「正味資産」、貸借対照表では「純資産」という用語が使われていることも、両書類の規定上の違いです。

 

従前の決算期に作成した貸借対照表を、そのまま使えばよいとは限りません。

解散時点の会社財産を調査し、財産目録を作成したうえで、その内容に基づいて貸借対照表を作成する必要があります。

 

会社が解散した時点で、どのような財産があり、どれだけの債務が残っているのか。

清算人は、その状況を明らかにしなければならないのです。

 

3.登記では提出しないのに株主総会承認が必要

ここが今回、特に重要な部分です。

会社法492条3項は、清算人が作成した財産目録・貸借対照表について、株主総会に提出または提供し、その承認を受けなければならないと定めています。

清算人が書類を作成するだけでは足りません。

 

財産目録・貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受けるところまでが、会社法上の義務です。

清算人会設置会社の場合には、株主総会の承認に先立って清算人会の承認も必要です(会社法492条2項)。

 

解散決議とは別の承認手続

株式会社を株主総会の決議によって解散する場合、通常は解散を決議した株主総会の議事録を作成します。

 

しかし、その解散決議と、会社法492条による財産目録・貸借対照表の承認は、別の事項です。

後者は、解散時点の財産調査と書類作成を前提とする手続だからです。

 

また、清算事務が終了した際には、会社法507条によって決算報告の作成と株主総会の承認も必要になります。

 

このように、通常清算では、主に次の3つの場面で株主総会の決議・承認が問題になります。

 

株主総会の場面 決議・承認事項
解散時 解散決議、必要に応じた清算人選任 
解散後 財産目録・貸借対照表の承認
清算事務終了後  決算報告の承認

 

ただし、必ず3回の株主総会を別々の日に開催しなければならないという意味ではありません。

 

会社法319条には、株主総会の決議を省略する制度があります。

株主総会の目的事項について提案があり、その事項につき議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録によって同意した場合には、株主総会の決議があったものとみなされます。

 

株主が1名だけの会社であっても492条の承認義務がなくなるわけではありませんが、このような制度を利用して、適法かつ簡潔に手続を進めることは可能です。

なお、決議を省略した場合にも、議事録の作成や同意書面等の備置きなど、所定の手続が必要です。

 

株主総会議事録と財産目録等の保存義務

株主総会を開催した場合には、会社法318条に基づいて議事録を作成します。

同条2項は、株主総会議事録を株主総会の日から10年間、本店に備え置くことを定めています。

 

これに対して、会社法492条4項は、解散時の財産目録・貸借対照表について、作成した時から、本店所在地における清算結了登記の時まで保存することを義務付けています。

 

つまり、株主総会議事録の10年間の備置義務と、492条の財産目録・貸借対照表の保存義務は、根拠条文も期間も異なります。

 

また、清算結了登記後の帳簿資料については、会社法508条に別の保存義務が定められています。この点は連載の最終回で取り上げます。

 

それでも登記の添付書類にはならない

商業登記実務では、ここに興味深い違いがあります。

 

解散登記では、解散を決議した株主総会議事録などが添付書類となります。

 

また、清算結了登記では、会社法507条3項による決算報告の承認があったことを証する書面が必要です(商業登記法75条)。

 

ところが、会社法492条の財産目録・貸借対照表の承認議事録は、通常、解散登記にも清算結了登記にも添付しません。

 

法務局への提出が求められないことと、会社法上の手続を省略できることは、別の問題です。

登記申請の添付書類だけを確認していると、会社内部で必要な手続が見えにくくなります。

だからこそ、株式会社の解散・清算では、登記申請の準備と、会社法上の清算事務を区別して考える必要があります。

 

4.税務申告用の貸借対照表との違い

株式会社が解散すると、法人税などの税務申告も必要になります。

税務申告用の貸借対照表が作成されるため、会社法492条の財産目録・貸借対照表についても、それで足りるのではないかと考えるかもしれません。

 

しかし、税務申告用の貸借対照表と、会社法492条に基づく清算開始時の貸借対照表は、目的や評価方法が異なる場合があります。

この違いを理解するうえで参考になるのが、国税不服審判所の平成30年5月31日裁決です。

 

帳簿価額約5億6,100万円の設備が、清算用の財産目録では0円と評価された事案

この事案では、解散した会社の法人税確定申告書に添付された貸借対照表に、建物附属設備として約5億5,000万円、工具器具備品として約1,100万円が計上されていました。

合計すると約5億6,100万円です。

 

ところが、その後の特別清算開始申立書に添付された財産目録・貸借対照表では、これらの設備の時価がいずれも0円と記載されていました。

 

税務当局は、このような評価額の違いなどを根拠として、会社が債務超過を装っていたと主張しました。

 

しかし、国税不服審判所は、両者の評価方法が異なることに注目しました。

会社法492条に基づく財産目録・貸借対照表には、原則として解散時の処分価格を付す必要があります。

これに対し、法人税の確定申告書に添付する貸借対照表には帳簿価格が記載されるため、両者の固定資産の価額が異なること自体は不自然ではないと判断しました。

 

さらに、この事案では、問題となった設備はレストラン経営に使用されていたものですが、そのレストランは平成12年頃に閉鎖され、設備は長年使用されないまま残されていました。

国税不服審判所は、設備が解散時にはほぼ無価値となっていた事情も踏まえ、0円と評価したことをもって債務超過を装ったとは認められないと判断しています。

 

なお、この裁決の本来の争点は、関連会社の債務引受け・債権放棄に伴う税務申告について、重加算税の要件である事実の隠蔽・仮装が認められるかどうかでした。

会社法492条の株主総会承認義務を直接判断したものではありません。

 

しかし、解散時の財産目録・貸借対照表と、税務申告用の貸借対照表では、同じ財産でも評価額が異なり得ることを、具体的に示しています。

参考:国税不服審判所・平成30年5月31日裁決(裁決書・抄)

 

税務申告が済んでいても、株主総会の承認とは別問題

もう一つ重要なのは、書類の作成と株主総会の承認が別の手続であることです。

 

仮に税務申告用の貸借対照表が会社法492条の要件を満たしていたとしても、それだけで株主総会の承認があったことにはなりません。

会社法492条は、財産目録・貸借対照表の作成に加えて、株主総会による承認を要求しています。

税務署に確定申告書を提出する手続と、会社内部で株主総会の承認を受ける手続は、法律上、別のものです。

 

したがって、税理士が解散に伴う税務申告を担当している場合でも、会社法492条の書類作成と株主総会承認については、実施状況を確認する必要があります。

これは税理士の業務が不足しているという話ではありません。

税務申告上の義務と会社法上の義務は異なるため、どの手続を誰が担当するのかを明確にしておく必要があるということです。

 

5.清算が長期化した場合の計算書類と株主総会

解散直後の財産目録・貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受ければ、それ以後は清算結了まで計算書類を作成する必要がないのでしょうか。

清算が長期化した場合には、清算事務年度ごとの計算関係書類の作成などが必要になります。

 

清算事務年度は、従前の事業年度とは異なる

会社法494条1項は、清算株式会社に対して、各清算事務年度に係る貸借対照表、事務報告及びそれらの附属明細書を作成することを義務付けています。

 

「清算事務年度」とは、会社が解散した日の翌日から始まる1年間を単位とし、その後も1年ごとに区切られる期間です。

 

例えば、10月1日に解散した株式会社の場合、最初の清算事務年度は10月2日から翌年10月1日までとなります。

会社の従前の決算期が3月末であっても、清算事務年度はそれとは別に考えます。

ただし、清算が最初の清算事務年度の途中で結了した場合まで、必ず1年分の定時株主総会を行うという意味ではありません。

 

清算中でも定時株主総会が必要になる

清算が長引いて清算事務年度が終了した場合には、その年度に係る計算関係書類を作成し、会社法497条に基づく定時株主総会での手続を行います。

会社法497条では、貸借対照表及び事務報告を定時株主総会に提出または提供し、貸借対照表について承認を受けること、事務報告について内容を報告することが定められています。

 

監査役設置会社や清算人会設置会社では、会社法495条に基づく監査や清算人会の承認も必要となる場合があります。

 

また、清算事務年度に係る貸借対照表等には、会社法494条・496条による保存・備置義務もあります。

 

つまり、株式会社が解散して通常の事業活動を終了させても、計算関係書類の作成義務や株主総会の手続がすべてなくなるわけではありません。

清算が短期間で終了する場合と、長期化する場合とでは、必要となる手続にも違いが生じます。

 

6.登記に必要な書類と会社法上必要な手続は異なる

株式会社の解散・清算では、登記の添付書類にならない法定手続があります。

 

今回取り上げた会社法492条の財産目録・貸借対照表の作成と株主総会承認は、その代表例です。

 

財産目録・貸借対照表を作成することで、清算開始時の会社の財産と債務を明らかにし、株主総会の承認を受ける仕組みになっています。

この手続は、解散登記や清算結了登記の添付書類をそろえるだけでは完了しません。

 

また、税務申告が済んでいても、会社法上の作成・承認義務を果たしたことになるとは限りません。

会社を閉じる際には、登記申請だけでなく、清算人が会社法上の義務を履行しているかどうかを確認することが大切です。

 

そして、解散後の清算手続には、もう一つ、登記の添付書類からは分かりにくい重要な義務があります。

それが、債権者に対する官報公告です。

会社に借金がなく、債権者がいないと考えられる場合でも、会社法499条による官報公告は必要です。

次回は、「債権者がいないのに、なぜ官報公告が必要なのか」を中心に、債権者保護手続と、公告を省略した場合の法的な問題を取り上げます。

 


主な参考法令・資料

• 会社法318条・319条・476条・481条・491条・492条・494条~497条・507条・508条

• 会社法施行規則144条・145条

• 商業登記法75条

• 東京地方裁判所「清算人の職務の内容等」

• 東京地方裁判所「清算事務の終了等」

• 国税不服審判所平成30年5月31日裁決(裁決書・抄)

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