【住所変更登記義務化・第12回】令和8年10月5日から検索用情報に「国籍等」が追加―海外居住者も申出の対象に
2026/09/08
令和8年4月1日から、所有権登記名義人の住所・氏名変更登記が義務化されました。
この連載では、住所等変更登記の義務化から、過料・催告、検索用情報、住基ネット、本人への意思確認、そしてスマート変更登記の実際の流れまで順に取り上げてきました。
今回は最終回として、令和8年10月5日から施行される検索用情報制度の改正を取り上げます。
大きな変更点は二つあります。
一つは、検索用情報に「国籍等」が追加されること。
もう一つは、これまで国内に住所を有する人を前提としていた検索用情報の申出が、海外に住所を有する人にも広がることです。
ただし、ここには大切な注意点があります。
海外居住者も検索用情報を申し出られるようになることと、海外居住者にも国内居住者と同じスマート変更登記が行われることは、同じ意味ではありません。
この違いを中心に見ていきます。
令和8年10月5日から何が変わる?
まず、改正前後を大きく整理すると次のようになります。
| 項目 | 令和8年10月4日まで | 令和8年10月5日から |
|---|---|---|
| 検索用情報の申出 |
国内に住所を有する自然人 を対象とする仕組み |
海外居住者にも対象が拡大 |
| 申し出る検索用情報 |
氏名、振り仮名等、住所、 生年月日、メールアドレス |
左記に「国籍等」を追加 |
| 海外居住者の単独申出 | できない | できる |
|
海外居住者の スマート変更登記 |
国内居住者と同じ仕組み では利用できない |
検索用情報を申し出られるようになっても、 国内居住者と同じ仕組みになるわけではない |
つまり、10月5日から制度全体が海外居住者向けに同じ形で開放されるのではありません。
検索用情報の「申出」の対象が海外居住者にも広がるというのが、まず押さえるべき改正です。
新しく加わる「国籍等」とは?
令和8年10月5日以後、不動産登記規則158条の38に定める検索用情報管理ファイルには、新たに「国籍等」が記録されます。
ここで規則上使われているのは、単なる「国籍」という言葉ではなく「国籍等」です。
規則では、
国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法第2条第5号ロに規定する地域
と定義されています。
したがって、この記事でも原則として「国籍等」と表記します。
10月5日以後の検索用情報は、原則として、
氏名、氏名の振り仮名またはローマ字氏名、住所、出生の年月日、電子メールアドレス、国籍等
という構成になります。
なお、この「国籍等」は、海外居住者や外国人だけに関係する項目ではありません。
改正後は、外国人だけでなく日本人についても、国籍等を把握する仕組みとなります。
なぜ「国籍等」を把握するのか?
今回の改正について、法務省はその目的を明らかにしています。
一つは、国土の適切な利用・管理の観点から、外国人による不動産保有の実態を把握するためです。
もう一つは、相続登記をより適正かつ円滑に実施するためです。
不動産の所有権登記名義人が死亡した場合、相続に適用される準拠法を判断する上で、その人の国籍が重要になる場合があります。
そこで法務省は、所有権登記名義人の国籍等を登記所で把握するため、既に存在する検索用情報の申出・管理の仕組みを利用することとしました。
この点は重要です。
これまで検索用情報は、住基ネットを利用して住所・氏名の変更を確認し、スマート変更登記につなげる仕組みとして説明してきました。
しかし、10月5日から追加される「国籍等」は、住基ネットで住所変更を検索するための情報として追加されるわけではありません。
検索用情報の仕組みに、新たに「国籍等を把握・管理する」という役割が加わることになります。
「国籍等」が追加されても登記簿に国籍が載るわけではない
ここは誤解しやすいところです。
「検索用情報に国籍等が追加される」と聞くと、
外国人が不動産を所有すると、登記簿に国籍が表示されるようになるのか
と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
国籍等が記録されるのは、検索用情報管理ファイルです。
これは、通常の登記事項証明書に表示される登記事項そのものとは別の情報です。
法務省も、今回把握する国籍情報について、個人情報であることから非公開情報として取り扱うとしています。
したがって、今回の改正は、
令和8年10月5日から所有権登記名義人の国籍が登記簿に公開される
という制度ではありません。
検索用情報管理ファイルと、一般に公開される登記記録は区別して考える必要があります。
海外居住者も検索用情報を申し出られるようになる
現在の不動産登記規則では、検索用情報の同時申出・単独申出について、国内に住所を有する自然人を対象とする仕組みになっています。
これが、令和8年10月5日から変わります。
改正後の規則158条の39では、所有権保存登記や所有権移転登記などを申請して新たに所有権登記名義人となる場合について、現在ある「国内に住所を有する」という限定がなくなります。
また、既に所有権登記名義人となっている人が検索用情報を後から申し出る「単独申出」についても、改正後158条の40では国内住所の限定がなくなります。
これによって、例えば海外に住んでいる日本人や、海外に住所を有する外国人も検索用情報を申し出ることができるようになります。
ここで注意したいのは、
「外国人」と「海外居住者」は同じではない
ということです。
日本に住所を有する外国人もいれば、海外に住所を有する日本人もいます。
今回の改正による申出対象の拡大は、国籍ではなく、これまで設けられていた国内住所の限定が外れることによるものです。
同時申出では「国籍等」も申し出る
令和8年10月5日以後、所有権保存登記や所有権移転登記などと同時に検索用情報を申し出る場合には、新たに「国籍等」も申請情報の内容となります。
これまでの、
氏名、振り仮名またはローマ字氏名、住所、出生の年月日、電子メールアドレス
に、
国籍等
が加わる形です。
また、単に本人が「私は○○国籍です」と申告すれば常に足りるというわけではありません。
改正後の規則では、氏名の振り仮名等、出生の年月日、国籍等について、原則として市町村長その他の公務員が職務上作成した情報など、その内容を証する情報を提供する仕組みが設けられています。
ただし、国籍等については、申請情報の内容から、その国籍等が本人のものであることを登記官が確認できる場合には、国籍等を証する情報の提供を要しない場合も規定されています。
具体的にどのような書類が国籍等を証する情報となるのか、重国籍の場合や国籍変更があった場合をどう扱うのかなど、運用の詳細については、法務省が今後通達等によって明らかにする予定としています。
単独申出も海外居住者ができるようになる
既に不動産を所有している人が、後から検索用情報だけを申し出る「検索用情報単独申出」についても、10月5日から海外居住者が対象となります。
改正前の規則158条の40は、
国内に住所を有する所有権の登記名義人
としています。
改正後は、この「国内に住所を有する」という限定がなくなります。
したがって、既に日本国内の不動産を所有している海外居住者も、10月5日以後は検索用情報の単独申出ができることになります。
単独申出では、申出人本人であることを確認する情報のほか、原則として電子メールアドレスを除く検索用情報の内容を証する情報を提供する仕組みになっています。
なお、オンラインで単独申出をする場合に、一定の電子証明書によって添付情報の一部を代えることができる規定がありますが、国籍等を証する情報は、その電子証明書による代替の対象から除かれています。
この点も、10月5日以後の実務では注意が必要です。
すでに検索用情報を申し出ている人は、もう一度申し出る必要がある?
既に検索用情報を申し出ている場合、10月5日から「国籍等」が追加されるため、
もう一度検索用情報を申し出て、国籍等を追加しなければならないのか
という疑問が生じます。
少なくとも、改正後の規則に、既に検索用情報を申し出た人全員について、10月5日以後に改めて再申出をすることを義務付ける規定はありません。
また、改正後の規則158条の40第18項には、検索用情報単独申出がされた場合以外でも、登記官が所有権登記名義人の国籍等を確認したときは、その国籍等と登記記録を特定するために必要な事項を検索用情報管理ファイルに記録する仕組みが設けられています。
ただし、既に検索用情報を申し出ている人の国籍等が、実務上どのような場面で、どのような方法によって補完されていくのかについては、現時点で公表されている資料だけでは全て明らかになっていません。
この点も、今後の通達等を確認する必要があります。
最大の注意点―海外居住者も国内と同じスマート変更登記になるわけではない
今回の改正で最も注意したいのがここです。
10月5日から海外居住者も検索用情報を申し出られるようになります。
しかし、
海外居住者についても、国内居住者と同じように法務局が住所変更を把握して職権で変更登記をしてくれる
という制度になるわけではありません。
前回の記事で説明したとおり、国内居住者についてのスマート変更登記は、法務局が住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットから情報の提供を受け、住所や氏名の変更を確認する仕組みが前提となっています。
ところが、海外の住所変更について、日本の住基ネットを利用して国内居住者と同じようにその異動を確認することはできません。
そして、令和8年10月5日施行後の不動産登記規則でも、職権による氏名等変更登記に関する規定では、自然人の所有権登記名義人について、
「検索用情報管理ファイルに記録されている者であって、国内に住所を有するもの」
という限定が置かれています。
つまり、
検索用情報を申し出られる人の範囲は海外居住者へ広がる。
しかし、
住基ネットを利用して住所等の変更を把握し、本人の申出を経て職権変更登記につなげる仕組みまで、そのまま海外居住者へ広がるわけではない。
この二つは分けて理解する必要があります。
海外居住者が海外で引っ越した場合は?
では、海外居住者が検索用情報を申し出た後、海外で住所を変更した場合はどうなるのでしょうか。
現在、法務省は海外居住者について、
法務局では住所等の変更の事実を確認することができないため、住所等に変更があった場合には、自ら変更登記を申請する必要がある
と案内しています。
今回の10月5日改正によって海外居住者も検索用情報を申し出られるようになりますが、改正後の規則を見ても、国内居住者と同じ住基ネット型のスマート変更登記が海外居住者にそのまま広がる仕組みにはなっていません。
したがって、
海外で住所を変更しても、検索用情報を出しておけば法務局が自動的に変更登記をしてくれる
と考えることはできません。
海外居住者への検索用情報制度の拡大と、海外居住者の住所等変更登記義務への対応は別問題
として理解する必要があります。
海外居住者にも検索用情報を広げるのはなぜ?
ここまで読むと、
国内居住者のように住基ネット型のスマート変更登記を利用できないのであれば、なぜ海外居住者にも検索用情報の申出を広げるのか
という疑問が生じます。
今回の改正では、検索用情報の仕組みが、所有権登記名義人の国籍等を把握・管理するためにも利用されることになります。
法務省は、所有権の登記名義人となる者について、国内に居住しているかどうかを問わず国籍を把握する方針を示しています。
そのため、海外居住者についても「国内に住所を有する」という従来の制限を外し、国籍等を含む検索用情報を申し出ることができる制度に改められます。
つまり、
海外居住者への申出対象の拡大は、海外居住者にも住基ネット型スマート変更登記を広げるための改正というより、国内外を問わず所有権登記名義人の国籍等を把握する今回の改正と結び付いたもの
と理解すると、制度の構造が分かりやすくなります。
10月5日から「変わること」と「変わらないこと」
今回の改正を整理すると、次のようになります。
変わること
- 検索用情報に「国籍等」が追加される
- 検索用情報の同時申出について国内住所の限定が外れる
- 検索用情報の単独申出についても国内住所の限定が外れる
- 海外居住者も検索用情報を申し出られるようになる
- 外国人だけでなく日本人についても国籍等を把握する仕組みとなる
- 国籍等について、原則としてその内容を証する情報を提供する仕組みが設けられる
変わると誤解してはいけないこと
- 国籍等が登記簿に公開されるわけではない
- 海外居住者も国内居住者と同じ住基ネット型スマート変更登記になるわけではない
- 検索用情報を申し出れば、海外で住所変更をしても何もしなくてよくなるわけではない
- 既に検索用情報を申し出た人全員について、10月5日に一律に再申出をする義務が規定されているわけではない
今回の改正は、検索用情報制度の対象と役割を広げる改正と見ると理解しやすいでしょう。
全12回―住所等変更登記義務化の連載を振り返って
この連載は、
「令和8年4月1日から住所・氏名変更登記が義務化された」
というところから始まりました。
しかし、制度を詳しく見ていくと、単に「2年以内に登記してください」というだけではありません。
住所等変更登記の義務化があり、義務違反を把握した場合の催告や過料の仕組みがあり、その負担を軽減するために検索用情報の申出が設けられています。
そして、国内居住者については、
検索用情報
↓
住基ネットによる確認
↓
本人への意思確認
↓
本人の申出
↓
職権による住所等変更登記
というスマート変更登記の仕組みにつながっています。
さらに令和8年10月5日からは、検索用情報に「国籍等」が追加され、海外居住者にも検索用情報の申出制度が広がります。
住所等変更登記の義務化、検索用情報、スマート変更登記は、それぞれ別々に存在する制度ではなく、互いに関係した一つの制度体系として見ると理解しやすくなります。
今回で、「住所・氏名変更登記義務化/検索用情報/スマート変更登記」についての連載は、いったん完結します。
ただし、法務省は、重国籍者の取扱い、国籍変更があった場合の取扱い、国籍等を証する情報の具体例など、運用の詳細については今後通達等によって明らかにする予定としています。
そのような新たな通達やQ&A等が公表された場合には、必要に応じてこれまでの記事を更新し、または追補の記事として改めて取り上げたいと思います。
※本記事は令和8年9月現在、公表されている法令・法務省資料等に基づいています。令和8年10月5日の施行に向けて新たな通達・Q&A等が公表された場合には、必要に応じて内容を更新します。
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