検索用情報の単独申出には何を用意する?―本人確認書類・郵送・オンライン・司法書士代理
2026/09/05
前回までは、登記簿上の住所が古い場合に検索用情報をどのように申し出るのか、そして、住基ネットで過去の住所や氏名の変更をどこまで確認できるのかを見てきました。
では、実際に検索用情報の単独申出をしようとしたら、何を用意し、どこの法務局へ、どのような方法で申し出ればよいのでしょうか。
単独申出には、大きく分けて、
オンラインによる「電子申出」
と、
申出書を提出する「書面申出」
があります。
書面申出は法務局の窓口へ持参するだけでなく、郵送ですることもできます。
また、本人確認書類として運転免許証やマイナンバーカードなどを利用できますが、原本を法務局へ預けるのではなく、その写しを提出するという特徴があります。
さらに、複数の法務局の管轄に不動産を持っている場合でも、一定の条件を満たせば、一つの法務局へまとめて単独申出をすることができます。
今回は、令和7年3月3日付法務省民二第373号通達と「検索用情報の申出に関する質疑事項集」を中心に、検索用情報単独申出の具体的な方法を整理します。
※本記事は令和8年9月現在の制度を中心に説明しています。現行制度では、国内に住所を有する現在の所有権登記名義人である自然人が検索用情報単独申出の対象です。令和8年10月5日から海外居住者への制度拡大や「国籍等」の追加を含む改正が施行されますので、その内容は別記事で取り上げます。
検索用情報単独申出には「オンライン」と「書面」がある
不動産登記規則第158条の40第6項と373号通達では、検索用情報単独申出について、次の2つの方法を定めています。
①電子情報処理組織を使用する「電子申出」
②検索用情報申出書を提出する「書面申出」
一般の方の利用方法に置き換えると、
- オンラインで申し出る
- 法務局の窓口へ申出書を持参する
- 申出書を法務局へ郵送する
という方法があります。
令和8年9月現在、オンライン申出には、法務省の「かんたん登記・供託申請」を利用できます。
大まかな違いを整理すると、次のようになります。
| オンライン申出 | 書面申出 | |
|---|---|---|
| 主な方法 | かんたん登記・供託申請等 | 法務局窓口又は郵送 |
| 本人の申出情報への電子署名・押印 | 通常は電子署名不要 | 押印不要 |
| 本人確認書類 | PDF等又は別送 | コピー |
| 紙の添付書類 | 別送できる場合あり | 申出書と一緒に提出可能 |
| 司法書士代理 | 電子署名・電子証明書が必要 | 職印が必要 |
オンライン申出だからといって、本人が必ずマイナンバーカードを使って電子署名をしなければならないわけではありません。
現在の「かんたん登記・供託申請」の公式案内でも、「検索用情報の申出(スマート変更登記用)」は電子署名不要。ただし司法書士が申出を行う場合を除くとされています。
どこの法務局に申し出る?
検索用情報単独申出は、全国どこの法務局へでも自由に提出できるわけではありません。
原則は、
申出の対象となる不動産の所在地を管轄する登記所
です。
ただし、異なる登記所の管轄にある2つ以上の不動産をまとめて申し出る場合には、便利な特例があります。
その場合には、対象となる不動産のうち、いずれか一つを管轄する登記所へまとめて申し出ることができます。
管轄が違う不動産を一つの法務局にまとめられる
質疑事項集問26には、具体例があります。
ある人が、
A登記所管轄の不動産a
と、
B登記所管轄の不動産b
を所有しているとします。
この場合には、
A登記所にa・bをまとめて申し出る
ことも、
B登記所にa・bをまとめて申し出る
こともできます。
ところが、
aだけをB登記所に申し出る
ことはできません。
同様に、
bだけをA登記所に申し出る
こともできません。
つまり、
「複数の管轄をまとめられる」ことと、「好きな法務局を自由に選べる」ことは違います。
少なくとも、まとめて申し出る不動産の一つを管轄する登記所である必要があります。
例えば東京、神奈川、千葉に不動産を持っているからといって、必ず3か所の法務局へ別々に単独申出をしなければならないとは限らないということです。
不動産番号を使って不動産を特定できる
検索用情報単独申出では、
「どの不動産について検索用情報の申出をするのか」
を特定する必要があります。
その方法として、不動産番号を利用することができます。
373号通達では、不動産番号を申出情報の内容とした場合には、一定の不動産所在事項の記載を省略できるとされています。
また、申出先とは別の登記所が管轄する不動産を含める場合には、不動産番号に続けて、
「○○法務局管轄」
のように管轄登記所を明らかにする取扱いも定められています。
もっとも、一般の方が申出をする場合には、法務省の様式やオンライン画面に従って入力すればよく、ここでは細かな記載方法までは立ち入りません。
本人確認書類は「原本」ではなく「写し」を提出する
単独申出では、
本当にその所有者本人が申し出ているのか
を確認するための本人確認資料が必要です。
ここで重要なのは、運転免許証やマイナンバーカードそのものを法務局へ提出するわけではないということです。
373号通達は、これらの身分証明書について、性質上その原本を登記所で保管するのは相当ではないとして、
身分証明書の「写し」を提供する
という取扱いを明記しています。
質疑事項集問29も、
電子申出の場合
→ 身分証明書をスキャンしてPDF化したものを送信する、又はコピーを別送する
書面申出の場合
→ 身分証明書のコピーを提出する
という取扱いを確認しています。
したがって、運転免許証やマイナンバーカードの原本を法務局へ郵送する必要はありません。
どんな本人確認書類が使える?
373号通達は、本人確認のために利用することのできる書類を具体的に挙げています。
一般の方に身近なものでは、
- 運転免許証
- 個人番号カード(マイナンバーカード)
- 旅券等
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 運転経歴証明書
- 各種医療保険の資格確認書
- 介護保険被保険者証
- 基礎年金番号通知書
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
などがあります。
ただし、すべての書類について同じ条件で利用できるわけではありません。
例えば資格確認書などについては、書面によって作成されたもので、申出人の氏名・住所・出生年月日の記載があるものという条件があります。
そのため、
「資格確認書を持っていれば、それだけで必ず使える」
というわけではありません。
実際に記載されている内容を確認する必要があります。
また、この手続を一般的な「顔写真付きなら1点、顔写真なしなら2点」という本人確認制度として説明するのも正確ではありません。
検索用情報単独申出では、373号通達が列挙する本人確認資料とその要件に従って判断します。
マイナンバーカードは「表面だけ」
マイナンバーカードを本人確認書類として使う場合には、特に注意が必要です。
373号通達は、
個人番号カードの写しを提出するときは「裏面を除く」
と明記しています。
マイナンバーカードの裏面には個人番号(マイナンバー)が記載されています。
したがって、検索用情報単独申出の本人確認資料として提出するのは、
表面の写しだけ
です。
裏面までコピーして提出する必要はありません。
資格確認書は「番号部分」にも注意
資格確認書を利用する場合にも注意点があります。
373号通達では、資格確認書の写しについて、
保険者番号や被保険者等記号・番号等が記載された部分を除いて提供する
としています。
同様に、基礎年金番号通知書については、基礎年金番号が記載された部分を除くこととされています。
本人確認のためだからといって、そこに記載された番号情報まで法務局へ提供するわけではありません。
簡単に整理すると、次のようになります。
| 本人確認書類 | コピーを提出するときの主な注意 |
|---|---|
| マイナンバーカード | 表面のみ。裏面は提出しない |
| 資格確認書 | 保険者番号・被保険者等記号・番号等の部分を除く |
| 基礎年金番号通知書 | 基礎年金番号の部分を除く |
昔の健康保険証は現在どうなる?
ここは資料を読む際に注意が必要です。
「検索用情報の申出に関する質疑事項集」の問31には、従来の健康保険証について、法改正後も効力を有している期間中は本人確認資料として認められるという経過的な取扱いが記載されています。
しかし、この質疑事項集は令和7年4月21日時点の制度を前提にしたものです。
従来の健康保険証は、令和7年12月1日をもって全て有効期限が終了しています。
したがって、令和8年9月現在の記事として、
「従来の健康保険証も本人確認資料として使える」
と案内するのは適切ではありません。
現在は、要件を満たす資格確認書などを確認することになります。
本人が書面で申し出る場合、押印はいらない
紙の申出書を法務局へ提出すると聞くと、
「実印が必要なのでは?」
「認印くらいは押すのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、検索用情報単独申出の書面申出では、本人による申出書への押印は不要です。
また、本人確認書類の写しについても、電子申出の場合の電子署名や、書面申出の場合の記名押印・署名は不要とされています。
つまり、本人による通常の書面申出について、
申出書に実印や認印を押す必要はありません。
ただし、後で説明する司法書士代理の場合は別です。
郵送でも単独申出ができる
検索用情報単独申出の申出書は、法務局の窓口へ持参するだけでなく、郵送することもできます。
ただし、373号通達では、郵送する場合について、
書留郵便
又は、
引受け・配達の記録が行われる信書便
によるものとされています。
さらに、封筒の表面には、
「検索用情報申出書在中」
又は、
「検索用情報申出添付書面在中」
など、検索用情報関係の書類が入っていることを明記するものとされています。
したがって、通常の案内としては、
普通郵便ではなく、配達記録が残る方法で送る
ことになります。
普通郵便で送ったら「無効」になる?
ここには、少し興味深い実務上の取扱いがあります。
質疑事項集問36では、
- 普通郵便で送られてきた
- 封筒に「検索用情報申出書在中」等の表示がなかった
という場合でも、そのことだけを理由に申出を却下したり、補正を求めたりする必要はないとされています。
したがって、
「普通郵便で送ったら申出は無効になる」
というわけではありません。
もっとも、これは「普通郵便で送って構わない」という意味でもありません。
制度上の送付方法はあくまで書留郵便等とされていますので、最初からその方法に従うのが正しい手続です。
オンラインなら「かんたん登記・供託申請」
令和8年9月現在、検索用情報単独申出は、法務省の「かんたん登記・供託申請」を使ってWebブラウザ上から行うことができます。
専用ソフトをインストールせず、Webブラウザから手続できる点が特徴です。
本人による通常の申出なら電子署名は不要
オンラインで不動産登記の手続をすると聞くと、
「マイナンバーカードを使った電子署名が必要なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、現在の「かんたん登記・供託申請」の公式案内では、
検索用情報の申出(スマート変更登記用)は電子署名不要
とされています。
ただし、司法書士が申出を行う場合は除くという注意があります。
したがって、本人が通常の単独申出をするのであれば、申出情報そのものについて電子署名をする必要はありません。
本人確認書類はPDFでも送れる
オンライン申出の場合、運転免許証などの本人確認書類については、
スキャンしてPDF化したものを送信する
ことができます。
本人確認書類のコピーを紙で別送する方法もあります。
質疑事項集問29がこの取扱いを明確にしています。
なお、運転免許証などの本人確認書類の写しそのものには電子署名は不要です。
一方、戸籍の附票等のような別の添付情報を電子情報として送信する場合には、その添付情報の種類によって作成者の電子署名・電子証明書が必要となる場合があります。
373号通達も、申出情報そのものには電子署名を要しない一方、一定の検索用情報申出添付情報には作成者による電子署名が必要となる場合を定めています。
したがって、
「オンライン申出では電子署名が一切関係ない」
と理解するのも正確ではありません。
オンラインで申出し、紙の添付書類だけ提出することもできる
オンライン申出をする場合でも、すべての資料を電子データで送らなければならないわけではありません。
373号通達では、
申出情報はオンラインで送信し、添付書面だけを登記所へ提出する「別送方式」
も認められています。
ただし、この場合には、
検索用情報単独申出の立件の日から2日以内
に添付書面を提出するものとされています。
また、どのオンライン申出の添付書類なのかを特定するため、所定の用紙を添付する必要があります。
オンラインで申し出てから、必要になった紙の資料をいつでも自由に後から提出できるわけではない点には注意が必要です。
検索用情報単独申出は司法書士に依頼できる
検索用情報単独申出を自分でするのが難しい場合、司法書士に代理を依頼することもできます。
質疑事項集問23では、
他人の依頼を受け、業として検索用情報単独申出に関する手続を代理することができる者は、弁護士又は司法書士に限られる
と確認されています。
「同時申出」と違い、単独申出には具体的な委任が必要
ここは司法書士実務上重要です。
以前の記事で説明した検索用情報同時申出では、所有権移転登記等を司法書士へ委任している場合、登記申請の委任があれば、検索用情報同時申出について別個に独立した委任をする必要はないとされています。
しかし、単独申出は違います。
373号通達では、代理人によって検索用情報単独申出を行う場合、
検索用情報単独申出についての具体的な委任事項
が代理権限を証する情報の内容になっている必要があるとされています。
したがって、
「以前の所有権移転登記で司法書士に登記を委任したから、その委任状だけで後から検索用情報単独申出までできる」
というわけではありません。
同時申出と単独申出では、委任の扱いが異なります。
司法書士代理では電子署名・職印が必要
本人による単独申出では、電子申出の電子署名や書面申出の押印は原則不要です。
しかし、司法書士が代理人として申し出る場合は別です。
質疑事項集問35では、
電子申出
→ 司法書士の電子署名+電子証明書
書面申出
→ 司法書士の職印
が必要と確認されています。
「検索用情報単独申出は押印・電子署名不要」という説明だけを読むと誤解しやすいところです。
本人申出のルールと司法書士代理のルールは分けて考える必要があります。
添付書類の原本還付はできる?
検索用情報単独申出で提出する添付書面についても、一定の場合には原本還付を請求することができます。
原本還付を求める場合には、
「原本と相違ない」旨を記載した謄本
を提出します。
ただし、
その申出のためにのみ作成された委任状その他の書面
は原本還付の対象になりません。
なお、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類は、そもそも原本ではなく写しを提出する書類です。
そのため、本人確認書類のコピーについて「原本還付を受ける」という問題にはなりません。
書類に不備があったらそのまま返される?
最後に、少し実務的な補足です。
質疑事項集問37では、提出された申出書類に不備がある場合でも、所定の手続を省略して、単にそのまま申出人や代理人へ返戻するという取扱いはしないとされています。
また、申出を却下するものとされている場合でも、登記官が相当と認めるときには、事前に申出人又は代理人へ知らせて、申出を取り下げる機会を設けることができるとされています。
もちろん、不備があっても必ず認められるという意味ではありません。
検索用情報単独申出については却下事由も定められており、補正できる不備については登記官が定めた相当の期間内に補正するという仕組みになっています。
まとめ―単独申出は利用しやすいが、細かなルールがある
検索用情報単独申出には、オンラインによる電子申出と、窓口・郵送による書面申出があります。
申出先は原則として対象不動産の所在地を管轄する登記所ですが、複数の登記所管轄に不動産がある場合には、そのうち一つを管轄する登記所へまとめて申し出ることができます。
本人確認書類については、運転免許証やマイナンバーカード、要件を満たす資格確認書などを利用できますが、提出するのは原本ではなく写しです。
特に、
マイナンバーカードは表面だけ
資格確認書は保険者番号・被保険者等記号・番号等の部分を除く
本人による書面申出には押印不要
という点は、実際に手続をするときに注意したいところです。
郵送も可能ですが、制度上は書留郵便等の配達記録が残る方法によるものとされています。
オンラインでは現在の「かんたん登記・供託申請」を利用でき、本人による通常の検索用情報申出については、申出情報への電子署名も不要です。
一方、司法書士が代理する場合には、
単独申出についての具体的な委任が必要
であり、
オンラインなら司法書士の電子署名・電子証明書
書面なら司法書士の職印
が必要になります。
このように、検索用情報単独申出は利用しやすい仕組みになっていますが、本人確認資料のコピー方法や、郵送、代理、電子署名などには細かなルールがあります。
では、検索用情報を申し出た後、メールアドレスを変更したらどうなるのでしょうか。
検索用情報管理ファイルへの記録が完了すると、メールアドレスを申し出た人には申出手続が完了した旨のメールが送られ、その中には「認証キー」も記載されます。
では、
メールアドレスを変更したい場合は?
メールアドレスを削除したい場合は?
新たにメールアドレスを登録したい場合は?
認証キーをなくしたら?
そもそもメールが届かなかったら?
次回は、「検索用情報のメールアドレスを変更・削除したい―認証キーをなくした場合は?」をテーマに、検索用情報管理ファイルに記録されたメールアドレスの変更・削除・新規登録と認証キーについて詳しく確認します。
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