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外国人は生活保護を受けられるのか?最高裁が示した受給権と行政措置の違い

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外国人は生活保護を受けられるのか?――最高裁が示した「受給権」と「行政措置」の違い【外国人の生活保護・1回】

外国人は生活保護を受けられるのか?――最高裁が示した「受給権」と「行政措置」の違い【外国人の生活保護・1回】

2026/10/19

「外国人は日本で生活保護を受けられるのか」

 

この問題について調べると、「外国人には生活保護を受ける権利がない」という説明がある一方で、「実際には外国人も生活保護を受けている」という話も出てきます。

 

一見すると矛盾しているように思えますが、法律上はこの二つは両立します。

ポイントは、「生活保護法に基づく受給権」があることと、「行政措置」として生活保護法に準じた保護を受けることは別であるという点です。

 

平成26年7月18日の最高裁判決は、この違いを明確にしました。

今回から全3回で、外国人と生活保護をめぐる裁判について見ていきます。第1回では、まず現在の基本的な法的構造を整理します。

 

外国人は日本で生活保護を受けられるのか

最初に結論を整理すると、単純に「受けられる」「受けられない」と答えるのは正確ではありません。

 

平成26年最高裁判決によれば、外国人には生活保護法に基づく受給権はありません。

 

しかしその一方で、外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置によって、事実上の保護の対象となることがあります。

 

つまり、

実際に生活保護に準じた保護を受けることがあることと、生活保護法上の受給権を持っていることとは、法律上は別の問題です。

これが、外国人の生活保護を考えるうえでの出発点です。

平成26年最高裁も、外国人は行政措置により事実上の保護対象となり得る一方、生活保護法に基づく受給権は有しないと明確に判示しています。

 

生活保護法の「国民」に外国人は含まれない

生活保護法1条は、国が「生活に困窮するすべての国民」に対して必要な保護を行い、最低限度の生活を保障すると定めています。

2条も、「すべて国民は」、法律の定める要件を満たす限り、生活保護法による保護を無差別平等に受けることができるとしています。

 

では、ここでいう「国民」に外国人も含まれるのでしょうか。

 

この点について、最高裁は平成26年7月18日判決で明確な判断を示しました。

事件の当事者は、永住者の在留資格を有する外国人でした。

 

最高裁は、旧生活保護法がその適用対象について「国民」であるかどうかを区別していなかったのに対し、現行の生活保護法は1条・2条で対象を「国民」と定めていることを指摘しました。

そのうえで、生活保護法1条・2条の「国民」とは日本国民を意味し、外国人は含まれないと判断しています。

 

さらに、現行生活保護法の制定後、一定範囲の外国人まで法律の適用対象を拡大する法改正は行われておらず、生活保護法上の保護に関する規定を外国人に準用すると定める法令も存在しないとして、現行法令上、生活保護法が外国人に適用・準用されると解する根拠はないとしました。

 

したがって、現在の最高裁判例を前提とすれば、外国人には生活保護法そのものに基づく受給権は認められていません。

 

それでも外国人に生活保護に準じた保護が行われている理由

では、なぜ現実には外国人が生活保護に準じた保護を受けることがあるのでしょうか。

 

その基本となっているのが、昭和29年5月8日に厚生省社会局長から各都道府県知事に出された、

「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」
(昭和29年社発第382号)

という通知です。

 

この通知は、外国人は生活保護法の適用対象にならないという前提に立ちながら、

「当分の間」

生活に困窮する外国人について、一般国民に対する生活保護の決定・実施の取扱いに準じて、必要と認める保護を行うこととしました。

最高裁も平成26年判決の中で、昭和29年通知について、外国人には生活保護法が適用されないことを前提に、それとは別の「事実上の保護を行う行政措置」として必要な保護を行うものだと整理しています。

 

昭和29年は1954年です。

「当分の間」として始まった仕組みが、2026年現在まで70年以上続いていることになります。

 

ただし、ここで重要なのは、外国人に生活保護法そのものを適用しているわけではないということです。

 

生活保護法とは別の行政措置として、同法による保護の決定・実施の取扱いに準じた保護が行われているのです。

なお、どの範囲の外国人を行政措置の対象とするかについては、その後の行政運用による整理があります。これは第1回の中心ではないため、在留資格ごとの詳細には立ち入りません。

 

「生活保護法を準用する」という言葉には注意が必要

外国人への生活保護について調べていると、

「外国人にも生活保護法を準用している」

という表現を目にすることがあります。

 

ここは少し注意が必要です。

 

平成26年最高裁が認めなかった「準用」は、生活保護法の規定を、法的な根拠に基づいて外国人にも準用するという意味での準用です。

最高裁は、生活保護法の規定を一定範囲の外国人に準用すると定めた法令は存在しない、と明確に判断しています。

 

一方、昭和29年通知の本文は、「一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて」必要な保護を行うとしています。

また、この通知に関する問答では、「法の準用による保護」「法を準用した措置」という表現も使われていますが、同時に、外国人への保護は法律上の権利として保障されたものではなく、一方的な行政措置によるものだと説明されています。 

 

したがって、

生活保護法が外国人にも法律上適用・準用されることと、行政措置として生活保護法の取扱いに準じた保護を行うことは区別する必要があります。

この区別が、「外国人には生活保護法上の受給権がない」という説明と、「外国人も実際には生活保護に準じた保護を受けることがある」という説明が両立する理由です。

 

福岡高裁は一定の外国人に法的に保護された地位を認めた

平成26年の最高裁判決に至るまでには、重要な高裁判決がありました。

平成23年11月15日の福岡高裁判決です。

 

この事件でも、当事者は永住者の在留資格を有する外国人でした。

福岡高裁は、昭和29年通知に基づいて外国人への保護が行われてきたことや、日本が難民条約に加入した際の国会審議、その後の行政運用などを踏まえました。

そして、一定範囲の外国人について、日本国民に準じた生活保護法上の待遇を受ける地位が法的に保護されるようになったと判断しました。

さらに、永住的外国人は生活保護法の準用による法的保護の対象になるとして、その生活保護申請を却下する行為についても行政処分としての性質を認めました。

 

判例タイムズは、この福岡高裁判決について、

「準用された生活保護法に基づく処分という新しい枠組み」

を提示した判断として紹介しています。

 

つまり福岡高裁は、外国人に対する保護を単なる事実上の行政措置として終わらせず、一定の外国人については法的に保護された地位があると考えたことになります。

 

最高裁は福岡高裁の考え方を否定した

しかし、最高裁は平成26年7月18日、福岡高裁のこの考え方を認めませんでした。

最高裁が問題にしたのは、外国人に生活保護法を適用・準用する法的根拠が存在するのかという点です。

 

昭和29年通知に基づく行政措置として一定範囲の外国人に保護が事実上行われてきたとしても、生活保護法1条・2条の改正などの立法措置を経ることなく、それによって生活保護法が外国人にも適用・準用されるようになることはない、と最高裁は判断しました。

日本が難民条約に加入した際の経緯を考慮しても、結論は変わらないとしています。

 

つまり、

行政措置が長期間続いていることと、生活保護法上の受給権が成立することとは別である

ということです。

 

最高裁は最終的に、外国人は行政庁の通達等に基づく行政措置によって事実上の保護対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象ではなく、同法に基づく受給権を有しないと判断しました。

 

現在の外国人への生活保護を理解するうえでは、この平成26年最高裁判決が重要な出発点になります。

 

ただし、ここでも一つ注意が必要です。

この平成26年判決から、

「外国人を生活保護法の対象から除外すること自体について、最高裁が憲法上問題ないと判断した」

とまでいうことはできません。

 

平成26年最高裁判決が直接判断したのは、生活保護法1条・2条の「国民」の意味と、外国人に生活保護法が法律上適用・準用されるかどうかです。

 

外国人を生活保護法上の受給権者から除外していること自体の憲法上の問題は、後に改めて最高裁まで争われることになります。

この点は、第3回で詳しく取り上げます。

 

「実際に保護を受けること」と「法律上の権利があること」は別

第1回で押さえておきたいのは、この一点です。

 

「外国人は生活保護を受けられない」

とだけ説明するのは正確ではありません。

 

一方で、

「外国人にも日本人と同じ生活保護法上の受給権がある」

という説明も正確ではありません。

 

平成26年最高裁判決を前提とすれば、外国人には生活保護法に基づく受給権はありません。

 

しかし、行政措置として、生活保護法による取扱いに準じた事実上の保護の対象となることがあります。

 

この二つを分けて考える必要があります。

 

そして、この違いが再び大きな問題となったのが、令和8年に最高裁まで争われたガーナ人男性の生活保護訴訟です。

この男性は、療養のための「特定活動」の在留資格で日本に在留し、その指定された活動からは、収入を伴う事業や報酬を受ける活動が除かれていました。

このような外国人が生活に困窮して生活保護を申請した場合、行政措置としての保護の対象になるのでしょうか。

 

第2回では、このガーナ人男性の事件について、千葉地裁・東京高裁がなぜ保護を認めなかったのかを見ていきます。

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