中野司法書士事務所

相続登記がすぐできないときの相続人申告登記とは?相続登記との違いを司法書士が解説

お問い合わせはこちら

相続登記がすぐできないときの相続人申告登記とは?相続登記との違いを司法書士が解説

相続登記がすぐできないときの相続人申告登記とは?相続登記との違いを司法書士が解説

2026/07/08

相続登記が義務化されたことは知っていても、実際にはすぐに登記できないことがあります。

たとえば、相続人同士の話し合いがまとまらない。
相続人が多く、戸籍の収集に時間がかかる。
誰が不動産を取得するか決まっていない。
昔の相続が放置され、相続関係が複雑になっている。

このような場合に検討される制度が、相続人申告登記です。

もっとも、相続人申告登記は、相続登記の代わりになる手続ではありません。
不動産の名義を相続人に変更する登記ではなく、相続登記の申請義務を期限内に履行したものとみなすための制度です。

この記事では、相続人申告登記とは何か、相続登記と何が違うのか、どのような場合に利用を検討すべきかを、司法書士の視点から分かりやすく解説します。

 

目次

  1. 相続登記は令和6年4月1日から義務化されました
  2. 相続登記がすぐできないケースは少なくありません
  3. 相続人申告登記とは
  4. 相続人申告登記と相続登記の違い
  5. 相続人申告登記を利用するメリット
  6. 相続人申告登記の注意点
  7. 相続人申告登記を検討した方がよいケース
  8. 最初から相続登記をした方がよいケース
  9. 相続人申告登記の手続の流れ
  10. 司法書士に相談するタイミング
  11. FAQ
  12. まとめ

 

相続登記は令和6年4月1日から義務化されました

相続登記とは、亡くなった方名義の不動産を、相続人名義に変更する登記です。

令和6年4月1日から、相続登記は義務化されました。

相続により不動産の所有権を取得した相続人は、原則として、次の時点から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

 

  • 自分のために相続が開始したことを知った日
  • その不動産の所有権を相続により取得したことを知った日

 

この両方を知った日から3年以内、という考え方になります。

正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、令和6年4月1日より前に発生した相続についても、相続登記義務化の対象になります。すでに相続の発生と不動産取得を知っていた場合には、令和9年3月31日までが一つの期限になります。

昔の相続だから関係ない、というわけではありません。

 

相続登記がすぐできないケースは少なくありません

相続登記が義務化されたといっても、すべての相続で、すぐに相続登記ができるわけではありません。

実務では、次のような事情で手続が止まることがあります。

 

  • 遺産分割協議がまとまっていない
  • 誰が不動産を取得するか決まっていない
  • 相続人の一部と連絡が取れない
  • 相続人が多数いる
  • 戸籍の収集に時間がかかる
  • 数十年前の相続が放置され、数次相続になっている
  • 登記上の住所と最後の住所がつながらない
  • 遺言書の有効性や遺産の範囲について争いがある

 

特に、古い相続では、亡くなった方の登記上の住所と、戸籍や住民票上の住所がつながらないことがあります。

不動産登記では、単に戸籍上の人物が亡くなっていることだけでは足りません。
登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを、住民票の除票、戸籍の附票、その他の資料で確認する必要があります。

この確認に時間がかかることもあります。

 

相続人申告登記とは

相続人申告登記とは、簡単にいうと、

「登記名義人について相続が開始したこと」と「自分がその相続人であること」を法務局に申し出る制度

です。

申出を受けた登記官は、所定の審査をしたうえで、申出をした相続人の氏名・住所などを、職権で登記に付記します。

相続人申告登記は、相続登記の申請義務化に伴い、期限内に相続登記をすることが難しい場合でも、比較的簡易に義務を履行できるように設けられた制度です。

相続登記をする場合、本来は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人の範囲や法定相続分を確認する必要があります。

一方、相続人申告登記では、原則として、申出をする人が登記名義人の相続人であることを確認できれば足ります。

この点が、相続登記との大きな違いです。

 

相続人申告登記と相続登記の違い

相続人申告登記について、一番誤解しやすいのは、相続登記との違いです。

相続人申告登記は、不動産の名義変更ではありません。

相続登記と相続人申告登記を比べると、次のようになります。

 

項目 相続登記 相続人申告登記
目的 不動産の名義を相続人へ変更する 相続人であることを申告し、義務を履行した扱いにする  
権利関係の公示 誰が不動産を取得したかを公示する   権利移転を公示するものではない
売却・担保設定 相続登記後であれば可能 これだけでは売却・担保設定はできない
遺産分割協議 必要になることが多い 未了でも利用できる
法定相続人全員の確定   原則として必要 申出人が相続人であることの確認で足りる
登録免許税 原則としてかかる かからない
位置づけ 最終的な名義変更 暫定的な期限対策

 

相続人申告登記をしても、登記名義人が相続人に変わるわけではありません。

亡くなった方名義の登記に、申出をした相続人の氏名・住所などが付記されるにとどまります。

そのため、不動産を売却したい場合や、金融機関の担保に入れたい場合には、別途、相続登記が必要です。

 

相続人申告登記を利用するメリット

相続人申告登記には、次のようなメリットがあります。

 

  • 遺産分割協議がまとまっていなくても利用できる
  • 相続人全員の協力がなくても、自分の分だけ申出できる
  • 法定相続人全員の範囲や法定相続分まで確定しなくてよい
  • 通常の相続登記より必要書類が少なくなることがある
  • 登録免許税がかからない
  • 相続登記の期限が迫っている場合の対応策になる

 

特に大きいのは、遺産分割協議がまとまっていなくても利用できる点です。

相続登記では、誰が不動産を取得するのかを決める必要があります。
ところが、相続人同士の話し合いが長引くこともあります。

そのような場合でも、相続人申告登記を利用することで、申出をした相続人については、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。

ただし、あくまで期限対策としての制度です。
不動産の名義を確定させる手続ではありません。

 

相続人申告登記の注意点

相続人申告登記は便利な制度ですが、使い方を誤ると、相続登記を終えたものと勘違いしてしまうおそれがあります。

注意点を整理します。

 

相続人申告登記は名義変更ではない

相続人申告登記をしても、不動産の所有者が相続人に変更されるわけではありません。

登記上は、亡くなった方の所有権登記に、申出をした相続人の情報が付記される形になります。

したがって、相続人申告登記だけでは、不動産を売却することはできません。
売却するには、誰が不動産を取得したのかを確定し、その内容に基づく相続登記をする必要があります。

 

申出をした人だけが義務を履行した扱いになる

相続人申告登記は、申出をした相続人について、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度です。

たとえば、相続人が長男、長女、次男の3人いる場合に、長男だけが相続人申告登記をしたとします。

この場合、長男については義務を履行した扱いになります。
しかし、長女や次男まで当然に義務を履行した扱いになるわけではありません。

相続人全員について対応したい場合は、全員が申出をするか、代理人による申出などを検討する必要があります。

 

遺産分割が成立したら、あらためて相続登記が必要になる

相続人申告登記をした後に、遺産分割協議がまとまることがあります。

その結果、不動産を取得する相続人が決まった場合には、遺産分割の日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請する必要があります。

ここは非常に誤解されやすい部分です。

相続人申告登記で対応できるのは、相続登記義務のうち、相続開始後の基本的な義務です。
遺産分割が成立した後の追加的な登記義務まで消えるわけではありません。

つまり、次のような流れになります。

 

  1. 相続が発生した
  2. 遺産分割協議がまとまらない
  3. 期限対策として相続人申告登記をする
  4. その後、遺産分割協議が成立する
  5. 不動産を取得した相続人が、遺産分割の日から3年以内相続登記をする

 

相続人申告登記は、相続登記までの時間を確保する制度と考えると分かりやすいです。

 

簡易な制度でも、戸籍や住所の確認は必要

相続人申告登記は、通常の相続登記より簡易な制度です。

しかし、戸籍がまったく不要になるわけではありません。

申出をする人が、登記名義人の相続人であることを確認できる戸籍等は必要です。

また、登記名義人と亡くなった方が同一人物であることの確認も必要になります。

たとえば、登記上の住所と戸籍に記載された本籍地が異なる場合には、住民票の除票や戸籍の附票などで、登記名義人と被相続人のつながりを確認することがあります。

古い相続では、この住所のつながりが問題になることがあります。

 

数次相続では相続人申告登記でも複雑になることがある

数次相続とは、相続登記をしないまま次の相続が発生している状態です。

たとえば、祖父名義の不動産について相続登記をしないまま、父も亡くなっているようなケースです。

このような場合、相続人申告登記であっても、誰が誰の相続人なのか、中間の相続関係を確認する必要があります。

「相続人申告登記は簡単」と言われることがありますが、相続関係が複雑な場合には、必ずしも簡単に終わるとは限りません。

 

相続人申告登記を検討した方がよいケース

相続人申告登記は、次のような場合に検討する価値があります。

 

  • 相続登記の期限が迫っている
  • 遺産分割協議がまとまっていない
  • 相続人の一部と連絡が取れない
  • 相続人が多く、戸籍収集に時間がかかる
  • 誰が不動産を取得するか決まっていない
  • すぐに売却予定がない
  • とりあえず義務違反の状態を避けたい

 

相続人申告登記は、最終解決の手続ではありません。

ただ、相続登記がすぐにできない場合に、期限内に何もしないまま放置することを避ける制度としては有効です。

特に、令和6年4月1日より前に発生した相続については、期限を意識する必要があります。
古い相続を放置している場合は、相続人申告登記で足りるのか、相続登記まで進めるべきかを早めに確認した方がよいでしょう。

 

最初から相続登記をした方がよいケース

一方で、相続人申告登記ではなく、最初から相続登記まで進めた方がよいケースもあります。

 

  • 不動産を売却したい
  • 不動産会社や買主との話が進んでいる
  • 金融機関の担保に入れたい
  • 誰が不動産を取得するか決まっている
  • 遺産分割協議書を作れる状態にある
  • 相続人全員と連絡が取れている
  • 将来のトラブルを防ぐため、名義を確定させたい

 

売却予定がある場合、相続人申告登記で止めても、結局は相続登記が必要になります。

不動産の取得者が決まっているのであれば、最初から相続登記を進めた方が二度手間になりにくいです。

相続人申告登記を使うべきか、相続登記まで進めるべきかは、相続人の状況、不動産の利用予定、売却予定の有無によって変わります。

 

相続人申告登記の手続の流れ

相続人申告登記の一般的な流れは、次のとおりです。

 

  1. 対象不動産を確認する
  2. 登記名義人が誰か確認する
  3. 登記名義人について相続が開始していることを確認する
  4. 申出人が登記名義人の相続人であることを確認する
  5. 必要な戸籍や住所証明情報を集める
  6. 申出書を作成する
  7. 不動産を管轄する法務局へ申出をする
  8. 登記官が審査し、職権で付記登記をする

 

必要書類は事案によって異なりますが、基本的には次のような書類を確認します。

 

  • 申出書
  • 申出人が登記名義人の相続人であることが分かる戸籍等
  • 申出人の住所を証する情報
  • 代理人が手続する場合の委任状
  • 登記名義人と被相続人の同一性を確認する資料

 

親子相続なのか、配偶者相続なのか、兄弟姉妹相続なのかによって、必要となる戸籍の範囲は変わります。

兄弟姉妹が相続人になる場合や、相続放棄がある場合、数次相続がある場合には、確認事項が増えます。

 

過料が心配な場合の考え方

相続登記を期限内にしなかった場合でも、直ちに自動的に10万円の過料が科されるわけではありません。

登記官が義務違反を職務上知った場合には、一定の期間を定めて登記申請を促す催告がされる仕組みになっています。
それでも申請がされず、正当な理由も認められない場合に、過料手続へ進む可能性があります。

ただし、「すぐ過料にならないなら放置してよい」という意味ではありません。

期限が迫っている場合には、次のどちらで対応するのかを判断する必要があります。

 

  • 相続登記まで進める
  • 期限対策として相続人申告登記をする

 

何もしないままにしておくと、相続関係がさらに複雑になることがあります。

 

司法書士に相談するタイミング

相続人申告登記は、制度だけを見ると簡易に見えます。

しかし、実際には次のような判断が必要になります。

 

  • 自分は相続登記義務化の対象なのか
  • 期限はいつまでなのか
  • 相続人申告登記で足りるのか
  • 相続登記まで進めた方がよいのか
  • 戸籍はどこまで必要なのか
  • 登記名義人と被相続人の住所がつながるか
  • 遺産分割協議を先に進めるべきか
  • 売却予定がある場合、どの順番で進めるべきか

 

相談時には、次の資料があると状況を整理しやすくなります。

 

  • 固定資産税の納税通知書
  • 権利証または登記識別情報
  • 不動産の登記事項証明書
  • 亡くなった方の戸籍や住民票除票
  • 相続人の戸籍
  • 遺言書がある場合は遺言書
  • 遺産分割協議書案がある場合はその書類

 

すべてそろっていなくても、相談は可能です。

むしろ、何を集めればよいか分からない段階で相談した方が、無駄な書類取得を避けられることがあります。

 

FAQ

Q1. 相続人申告登記をすれば、相続登記は不要になりますか?

いいえ。不要にはなりません。

相続人申告登記は、相続登記の申請義務を履行したものとみなすための制度です。
不動産の名義を相続人に変更する手続ではありません。

不動産を売却する場合や、誰が取得するかを確定させる場合には、別途、相続登記が必要です。

 

Q2. 遺産分割協議がまとまっていなくても相続人申告登記はできますか?

できます。

相続人申告登記は、誰が不動産を取得するかが決まっていない場合でも利用できます。

ただし、後日、遺産分割協議が成立して不動産を取得する人が決まった場合には、その内容に基づく相続登記が必要になります。

 

Q3. 相続人のうち1人だけでも申出できますか?

できます。

相続人申告登記は、相続人のうち1人からでも申出できます。

ただし、その場合、義務を履行した扱いになるのは、原則として申出をした相続人です。
他の相続人についても対応する必要がある場合は、別途確認が必要です。

 

Q4. 相続人申告登記に登録免許税はかかりますか?

相続人申告登記には、登録免許税はかかりません。

一方、通常の相続登記には、原則として登録免許税がかかります。

 

Q5. 相続人申告登記をすれば不動産を売却できますか?

相続人申告登記だけでは売却できません。

売却するには、不動産を取得する相続人を確定し、その相続人名義に相続登記をする必要があります。
売却予定がある場合は、相続人申告登記ではなく、最初から相続登記まで進めた方がよいことがあります。

 

Q6. 期限を過ぎたら必ず10万円の過料になりますか?

必ず10万円の過料になるわけではありません。

ただし、正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

期限が迫っている場合や、期限を過ぎている可能性がある場合には、早めに状況を確認した方がよいでしょう。

 

Q7. 古い相続でも相続人申告登記を利用できますか?

利用を検討できる場合があります。

令和6年4月1日より前に発生した相続についても、相続登記義務化の対象になります。
相続登記がすぐにできない事情がある場合には、相続人申告登記を利用するか、相続登記まで進めるかを検討することになります。

 

Q8. 自分で相続人申告登記をすることはできますか?

制度上は、ご自身で申出することも可能です。

ただし、戸籍の読み取り、相続人の確認、登記名義人と被相続人の同一性確認、数次相続の整理などで迷うことがあります。

自分で進める場合でも、必要書類や期限に不安があるときは、事前に司法書士へ相談すると安心です。

 

まとめ

相続人申告登記は、相続登記がすぐにできない場合に利用できる制度です。

遺産分割協議がまとまっていない場合や、相続人が多く戸籍収集に時間がかかる場合などに、期限内の義務違反を避けるための手続として検討できます。

ただし、相続人申告登記は、相続登記の代わりではありません。

不動産の名義を相続人に変更するものではなく、売却や担保設定をするには、別途、相続登記が必要です。

また、相続人申告登記をした後に遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割の日から3年以内に、その内容に基づく相続登記をする必要があります。

相続人申告登記は、相続登記までの時間を確保する制度です。
最終的に名義を整理するには、相続登記まで進める必要があります。

 

相続登記をすぐに進めるべきか、相続人申告登記でいったん対応すべきかは、相続人の人数、遺産分割の状況、不動産の売却予定などによって変わります。

中野司法書士事務所では、相続登記、相続手続き、不動産登記に関するご相談をお受けしています。

手続の進め方や必要書類が分からない場合は、ご相談いただけます。
同じようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。

----------------------------------------------------------------------
中野司法書士事務所
東京都杉並区高円寺南4-28-10
高円寺リリエンハイム407
電話番号 : 03-6272-4260


杉並区で選ばれる不動産登記・名義変更業務

杉並区でわかりやすい相続手続き・相続登記

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。