増資登記で必要になる「払込みがあったことを証する書面」と通帳コピーについて
2026/05/22
株式会社が増資をする場合、登記申請の際に、増資分の払込みが実際に行われたことを証明する書類を添付します。
この書類を、登記実務では一般に、「払込みがあったことを証する書面」といいます。
名前だけ聞くと少し分かりにくいですが、実際には、会社代表者が作成する払込証明書に、会社名義口座の通帳コピーや取引明細を付けて提出する形が一般的です。
増資では「会社の口座に入金されたこと」が重要です
増資は、株式を引き受ける方が会社にお金を払い込む手続です。
たとえば、代表者個人が会社の株式を引き受ける場合には、代表者個人から会社名義の銀行口座へ払込みを行います。
このとき、登記申請では、単に「お金を払いました」と説明するだけでは足りません。
実際に会社の口座へ入金されたことが分かる資料を添付する必要があります。
そのため、会社名義の通帳コピーや、インターネットバンキングの取引明細などを準備します。
通帳コピーはどの部分が必要か
紙の通帳がある場合、通常は次の3種類のコピーを準備していただきます。
1 通帳の表紙のコピー
会社名義の通帳であることが分かる部分です。
表紙に会社名が表示されていない場合もありますが、通帳全体の資料として、表紙コピーを付けることがあります。
2 通帳を開いた最初のページのコピー
銀行名、支店名、口座番号、口座名義が分かる部分です。
登記手続では、どの銀行の、どの口座に払い込まれたのかを確認する必要があります。
そのため、会社名義の口座であること、銀行名、支店名、口座番号が分かるページが必要になります。
3 増資金額の入金が分かるページのコピー
実際に増資分のお金が入金されたページです。
確認するポイントは、主に次の3つです。
- 入金日
- 入金額
- 入金内容
たとえば、500万円ずつ2回に分けて払い込まれている場合には、2回分の入金が分かるページをコピーします。
2回の入金が同じページに記載されていれば、そのページのコピーで足ります。
別々のページに記載されている場合には、それぞれのページをコピーします。
「払込みがあったことを証する書面」の後ろに通帳コピーを付けます
当事務所で増資登記の書類を作成する場合、通常は「払込みがあったことを証する書面」をこちらで作成します。
お客様には、その書面の後ろに、上記の通帳コピーを順番に重ねて、ホッチキスで止めていただきます。
順番は、たとえば次のようになります。
- 払込みがあったことを証する書面
- 通帳の表紙コピー
- 通帳を開いた最初のページのコピー
- 入金が分かるページのコピー
専門的には「合綴」という言い方をすることもありますが、分かりやすくいえば、書類の後ろに通帳コピーを重ねてホッチキス止めするということです。
押印や割印は必ず必要なのか
ここは、少し注意が必要です。
現在の商業登記実務では、「払込みがあったことを証する書面」について、会社実印の押印や、通帳コピーとの割印が、法令上常に必要とされているわけではありません。
つまり、法務局へ提出する形式だけを見れば、払込証明書と通帳コピーをホッチキス止めするだけで足りる場面があります。
しかし、当事務所では、紙の書類でご準備いただく場合、書類の一体性を明らかにするため、会社実印で割印をお願いすることがあります。
理由は、次のような点にあります。
- 払込証明書と通帳コピーが一体の書類であることが分かりやすい
- 後から通帳コピーだけ差し替えられることを防ぎやすい
- 会社として、この通帳コピーを払込資料として確認したことが分かりやすい
- 後日、会社内部や税理士、金融機関などが確認する場合にも資料のまとまりがよい
押印や割印が法令上必須ではないとしても、増資は会社の資本金を増加させる重要な手続です。
そのため、後から見ても分かりやすく、資料の一体性が確認できる形で残しておくことには意味があります。
割印をする場合の方法
割印をする場合は、「払込みがあったことを証する書面」と通帳コピーのつなぎ目に、会社実印を押します。
通帳コピーが複数枚になる場合には、各ページのつなぎ目にも同じように会社実印で割印をします。
たとえば、次のように重ねます。
- 払込みがあったことを証する書面
- 通帳の表紙コピー
- 通帳を開いた最初のページのコピー
- 入金が分かるページのコピー
この状態でホッチキス止めし、各ページのつなぎ目に会社実印で割印をします。
なお、法令上必ず必要という意味ではありません。
あくまで、当事務所では、書類の一体性を分かりやすくするため、実務上お願いすることがあるという位置づけです。
通帳の原本は提出しません
登記申請で提出するのは、通常、通帳のコピーです。
通帳の原本を法務局に提出するわけではありません。
通帳原本をお預かりする場合も、コピーを取るため、または内容を確認するためです。
個人の資産証明は通常不要です
増資の払込みについて、株式を引き受ける方の個人口座の残高証明書や資産証明書が必要かと聞かれることがあります。
通常の現金出資による増資登記では、重要なのは、会社名義の口座に増資金額が払い込まれたことです。
そのため、通常は、引受人個人の預金残高証明書や資産証明書までは必要ありません。
会社名義口座への入金が分かる通帳コピーや取引明細を添付して、払込みがあったことを証明します。
振込と預け入れの違い
増資の払込みは、銀行振込で行うと、通帳や取引明細に振込人の名前が表示されるため、誰が払い込んだのかが分かりやすくなります。
一方、現金で会社口座に預け入れる方法でも、増資の払込みとして処理できる場合があります。
ただし、預け入れの場合、通帳には「預入」と表示されるだけで、誰が入金したのかまでは表示されないことがあります。
そのため、証拠として分かりやすいのは、引受人名義の口座から会社名義口座への振込です。
もっとも、会社の状況、株主構成、引受人、入金経緯などによって判断が変わることもありますので、具体的な方法は事前に確認するのが安全です。
インターネットバンキングの場合
紙の通帳がない場合は、インターネットバンキングの取引明細を使用することがあります。
その場合も、次の内容が分かる資料を印刷します。
- 会社名義の口座であること
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- 入金日
- 入金額
単に入金部分だけを印刷すればよいわけではありません。
どの会社の、どの銀行口座に、いつ、いくら入金されたのかが分かる資料が必要です。
インターネットバンキングの場合も、資料が複数枚になるときは、払込証明書の後ろに順番に付けておくと分かりやすくなります。
押印不要と、押印しない方がよい、は別です
近年、商業登記の分野でも押印不要となる書類が増えています。
これは、法務局の審査上、押印がなくても登記手続を進められる場面が増えたという意味です。
しかし、押印が不要であることと、押印しない方がよいことは同じではありません。
特に増資登記のように、会社の資本金を増加させる重要な手続では、会社内部の記録として、後から見ても分かりやすい資料を残しておくことが大切です。
そのため、当事務所では、必要に応じて、押印不要とされる書類についても、会社実印による押印や割印をお願いすることがあります。
これは、法務局提出上の必要性というより、資料の一体性、差替防止、後日の確認のしやすさを重視するためです。
まとめ
増資登記では、「払込みがあったことを証する書面」に、会社名義口座への入金が分かる資料を付けて提出します。
紙の通帳がある場合には、基本的に次の3つをコピーします。
- 通帳の表紙
- 通帳を開いた最初のページ
- 増資金額の入金が分かるページ
そのうえで、払込証明書の後ろに通帳コピーを重ねてホッチキス止めします。
現在の実務では、「払込みがあったことを証する書面」や通帳コピーとのつなぎ目について、会社実印の押印や割印が法令上常に必要とされるわけではありません。
もっとも、増資は会社の資本金を増やす重要な手続です。
そのため、当事務所では、書類の一体性を明らかにし、後日の確認をしやすくするため、会社実印による割印をお願いすることがあります。
登記手続では、入金日、入金額、口座名義などの確認が重要です。
増資を予定されている場合は、払込みを行う前、または払込み後すぐに、司法書士へ通帳や取引明細の内容を確認してもらうことをおすすめします。
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